我。此処(ここ)に求む・・・
永久(とわ)なる時の力を・・・。」
・・・呪文の詠唱。これがボクに与えられた課題だった。
時の迷宮より現世にもどったボクは魔導師である彼の住処で住み込みで特訓することになった。
彼の名前はウィル。
かつて最高の力を持つとされる聖域の住人であった人・・・のはずなんだけど。
ここ数日見てるかぎりはそんな風にみえないんだよねぇ。
普通に暮らしちゃってるもん。それに・・・初めてあった時のような目の鋭さがない・・・。
それどころかどこか抜けてるような・・・
ううん。抜けてるっ。もしかすると天然かも・・・。
もしかして教えるの面倒だから呪文の詠唱なんてさせてるのかも?
んんんっ。なんかやな感じだなぁ。
「・・・知恵熱・・・ね・・・。」
一通りの診察を終え彼女は呟いた。
「さてと・・・それじゃ少し眠ってなさい・・・。」
・・・ここはこの村を統括しているジルバード家。
気付いた時にはこの屋敷の医務室ベッドの上にいた。
そして。彼女はボクにむかって何かを呟いている。よく聞こえないけど何かのスペル・・・。
体があったかくってきもちいい・・・。そして。いつの間にかボクは深淵の眠りにおちていった。
・・・別室・・・。彼女はウィルと対峙した。しばしの無言。・・・そして。
その静かな緊張は彼女の溜め息によって打ち砕かれた。
「知恵熱よ。心配しなくても一晩寝ればなおるとおもう。ただ・・・ひどく精神が弱ってたから・・・。
しばらく無理はさせない方がいいかもね。・・・で。
あの様子だとスペルトレーニングのやり方とか教えてないんじゃない?
でなければあんなになるなんてありえないから・・・。」
そう言って彼女はウィルの目をのぞき込む。・・・そのまま また 沈黙・・・。
「あいかわらず。おまえには嘘はつけないな。」
「あたりまえっ。何年付き合ってると思ってるの?」
「ま。それはそうなんだけどさ。」
・・・彼女の名はヒール。
ヒール リースト ジルバード
たぐいまれみない能力で若干二十歳にして この屋敷 の当主となったのだが。
性格的におとなしくするのが苦手だったため。
莫大な財産と時間を手に入
れた今も部屋の数室を医務室として使い。
村の医者として日々にぎやかな毎日を過ごしてる。
もともとといえば彼女もウィルと同じ魔導師なのだが。
本来の力である炎より生命の力の方がたかくなってしまい。
いまではこの力を使ってる方が多いくらいだろう。
「・・・で。本題はなんだ?」
ウィルの考えがヒールに分かるようにヒールの考えてる事もお見通しというわけだ。
彼女はくすりと笑うと本題をきりだした・・・。
・・・うーん。それも一理あるな。
ヒールの話に少し間をおいて答えてみたが。気の迷いが無いわけではない。
・・・時空操作・・・。かつて。その危険性をおそれた魔導師達に封印された力の一つである。
この力を持つ為にはは生まれながらにして得るか。
もしくは全生命力を犠牲にする邪転法とも呼ばれ伝承法を用いる他は無く。
結果。この力を持つ者は僅かとなり。貴重な存在となっているのだ。
そして・・・。今。
隣の部屋で眠っている少女もその力の持ち主なのだから・・・。
・・・ヒールがだした提案・・・。しばらくこの屋敷で預かる。
と。いうものだった。ウィルは一抹の不安を覚えた。
確かに・・・ヒールの屋敷に預けておけば不自由のない生活がおくれるだろう。
しかし・・・ヒールは攻撃型の力を退化させてしまっている・・・。
私の様に外敵から身を護るものがないとなると・・・。
それに・・・この屋敷の警備程度では失われる力を求める者達には通用しそうもない・・・。
奴等も必死なのだ。せめて・・・。
「・・・何を悩んでるの?ウィルもここですめば問題ないでしょ?
部屋はいくらでもあるんだから〜。・・・」
相変わらず分かってたらしい。願ってもない申し出だ。「・・・その言葉に甘えさせてもらおうか。」
こうしてジルバード家での生活がはじまった。
「それじゃ この子の名前決めてあげないとねっ。
いつまでも前の名前というわけにもいけないから・・・。
前の名前は沙駆・・・だったよね。
じゃあ時の羅針盤の数字の数なんてどう?時魔導師らしく。」
「・・・30個・・・サーティ・・・か。・・・でいいか?」
とボクにふってきた。
「うんっ。いーよぉ☆記憶も曖昧に消されちゃってるし。
それに・・・ この体にはぴったりだとおもうからねぇ。」
ひーるはくすっと笑い。
「 ほんっと。趣味まるだしなんだから〜。あの人は。ね〜?」
うぃるもあいづちをうち。ほんと。好きなんだね。と苦笑してる。
うーん。あの人。こーゆう趣味だったんだ。なんだかなぁ。
さーてぃ とらびゅうぉると。12歳。特技 弓 属性 時 付加能力 無効化。
あの人から・・・受け継いだ力は失われないから。そのまま。使えるけど。
体が小さくなった分 腕力とかは下がっちゃって前の様に大剣は使えなくなっちゃった。
だから力のいらない初心者用の弓に無効化の能力を加えて最低限自分の身を守れる様にしてもらった。
でもねぇ・・・。弓は下手だからあたんないんだよねぇ・・・。
この身長さえなんとかしてくれれば何とかなりそうなんだけど・・・。
うみゅ〜 今日は スペルトレーニングだぁ。つかれるんだよねぇ。
なんか体使わない分。精神削られてる感じだもんっ。
あれ。
ここにきてからウィル容赦ないし・・・。「なにしろ病院だからな」・・・ってねぇ。
・・・けど・・・
ここでの生活も最初は辛かったけど。なれちゃった。ひーるおねーちゃんは優しいし。
うぃるも・・・トレーニングの時以外は優しい。・・・ってゆーか。
天然・・・な状態で目の鋭さなんて別人の様になくなっちゃってる。
余計な精神力を使わない為にこうしてるらしいけど。多分・・・嘘。
ボクに付いてくれてるメイドさんが言ってた。
うぃるってすごく能力が高くて そんな事しなくても問題無いって。
・・・風読みの力・・・
熟練度を上げると風だけでなくありとあらゆるものを読み取ってしまう力。
彼女は一族の末裔なんだって。
彼女の名前は。ふぃーる。
ふぃーる えあり しるふぃす
風読みの一族のなかでも高位の家計にあたるらしくて。
結構なお金持ちだったりする。で・・・なんでメイドなんてやってるかってゆーと。
・・・趣味・・・だからなんだって。ん〜かわってるよねぇ。ま。それはさておき。
うぃるのほんとの力。と・・・いうか。かつて持ってたと言う力の事。
あの時・・・大半の力を失ったと言ってたけどほんとはまだ・・・。
と いうのが彼女の考えみたい。
・・・そ〜いえば。
あの人もなんか見透かしてるような・・・感じで話してたっけ・・・。
う〜みゅ。ハテナマークがいっぱいだよぅ。
けど・・・考えてみればボクの悩みは簡単に解消される。すぐに分かる事・・・。
過去の時代に飛んで見てくればいいんだもん。うぃるが力を失った理由を・・・。
けど。できなかった。ボクの力が弱すぎてひーるおねーちゃんの結界を壊せないから・・・。
この町は一部の場所を除いてほとんどの魔法を打ち消しちゃう魔法結界がはられてて。
むやみに使えないようになってる。町の治安を守るためにね。
ただひーるおねーちゃんのより強い魔法は使えちゃうんだよねぇ。
結界張ってるのがおねーちゃんだから〜。
でも。
この町に住んでる人にそんな強いの使う人いないんだよねぇ
だって。氷聖っていわれてた頃のウィルとパーティ組んでたんだよ?
そんなその辺の人達と比べものになるわけないよ〜。
・・・で。
一時はあきらめた。部屋であの本を見つけるまでは・・・。