すとーりあ らびりんす 〜時の迷宮〜


ボクは受け取った・・・かつて あのひとが使っていた力・・・時空操作・・・。

あのひとはボクを守ってくれた・・・。ボクを守って・・・息絶えた・・・。

ボクは受け取った・・・あのひとの力を・・・。ボクの命と引き換えに・・・

・・・・・ボクのベッドのそばには目覚し時計・・・。後数分でボクを起こすべき時間を迎える・・・

静かな朝・・・。そして。その静寂の時間が破られる・・・。

チッチッチッ・・・・・・カチッ。

ジリリリリリッ。いきなりの大音響にボクは目を覚ます・・・。

そしてまた・・・安らかな寝息を立てる・・・。

とんとんとん・・・誰かが階段を昇ってくる・・・そして・・・。

ボクの部屋の扉が開かれる・・・

「っいいかげん起きんかいっ」

「うきゃぁ」

突然の訪問者に一気に目がさめる。

ボクの目に姉の姿が映る。

「うにゃぁ・・・おねーちゃん。おはよぉ」

「っおはよーじゃないわっ 今何時だと思ってるっ」

・・・・・がばっ。慌ててベッドから飛び起き・・・時間を・・・

「っにゃぁぁっ」

姉は肩をすくめる・・・。そして部屋を出て行く。

時間は8時45分・・・普通だったら完全に遅刻。

取りあえずいつもの日課をこなす。

半分の時間でシャワーを浴び半分の時間であさごはん。

それから制服に着替えて裏庭に出る

そこには一つの魔法陣

ボクは呪文の詠唱

・・・次の瞬間には学校の空き教室にとんで・・・

クラスルームに向かうはず・・・だった・・・





・・・真っ暗な闇。何も見えないし何も聞こえない。

ただ体が宙に舞うような感覚があるだけ・・・デジャブ?・・・

ボクはこの感覚に覚えがある・・・あの人の力をボクの命と引き換えに

受け継いだ時の感覚・・・時の迷宮と呼ばれる異空間。

時空の狭間に存在する死者の転生の場所・・・。

また・・・転生するんだ・・・。

不思議と心が落ち着いていく・・・怖いとかって感じない。逆に安心してる・・・。

転生する時って以前の記憶とか消されちゃうんだけど・・・思い出せちゃうんだね・・・

少しずつ意識がはっきりしてく・・・もうすぐ・・・あの場所・・・。

一瞬の閃光とともにボクは・・・気を失う・・




「やれやれ・・・この娘にはちと重荷かのぅ・・・」

その老人は呟いた。

・・・ここは時空の狭間・・・

通称・・・時の迷宮と呼ばれる場所。

ここには幾人もの時の旅人が迷い込む。

そして・・・別な時代に飛ぶ者もいれば迷宮内をさまよい現世に戻れない者もいる。

・・・とはいえ・・・

さまようことなど大した問題ではない・・・ここには時間が存在しないのだから・・・。

そしてこの迷宮の創造主であり案内人でもあるのがこの老人である・・・。

「さてさて・・・時を操る者としての力は身に付けておるようじゃが・・・

またここにもどってきたという事は・・・」





・・・うーむ・・・。

その老人はなにやら考えこんでいた・・・。

明らかに精神が脆くなっておる・・・。

やはりこの娘には・・・無理だというのじゃろうか・・・。

じゃが・・・これほどの純粋な力をもつ者はめったにおらん・・・。

ただ・・・能力としてひきだせぬだけじゃ・・・。ここはひとつ・・・あやつにまかせてみようかのぉ・・・。

そして。老人は羽織っていた長いローブを翻すと虚空に消えた・・・。

・・・。なるほど。あなたが認めるのならばこの子の潜在能力はたいしたもの・・・ですね。

老人の前には漆黒のローブの若い男がいる。




彼は・・・かつて。氷聖と呼ばれ おそれられた 魔導師でありかつての時の管理者でもある。

・・・が。今はほとんどの力を失い片田舎で静かに暮らす生活をしている。

老人とは師弟関係であり下界に降り立ったいまもこうして足を運んでいるわけだ。

・・・もっとも・・・。

今回はこの老人に呼ばれて来たのだが・・・。

「で・・・。この子を私が預かればよいのですね?

ただ・・・私も大半の力を失った身。

あなたが望むほどの結果が出せるとは・・・。」

「・・・じゃが。やってみねばわからんもんじゃ。

どうじゃな?」

まるで何かを見透かれたように話す老人に彼は首を縦にふるしかなかった。

そしてボクをつれ下界に降り立った。

「静かなる時の中に静かなる願いを込めて。

我。此処(ここ)に求む・・・

永久(とわ)なる時の力を・・・。」

・・・呪文の詠唱。これがボクに与えられた課題だった。

時の迷宮より現世にもどったボクは魔導師である彼の住処で住み込みで特訓することになった。

彼の名前はウィル。

かつて最高の力を持つとされる聖域の住人であった人・・・のはずなんだけど。

ここ数日見てるかぎりはそんな風にみえないんだよねぇ。

普通に暮らしちゃってるもん。それに・・・初めてあった時のような目の鋭さがない・・・。

それどころかどこか抜けてるような・・・

ううん。抜けてるっ。もしかすると天然かも・・・。

もしかして教えるの面倒だから呪文の詠唱なんてさせてるのかも?

んんんっ。なんかやな感じだなぁ。







「・・・知恵熱・・・ね・・・。」

一通りの診察を終え彼女は呟いた。

「さてと・・・それじゃ少し眠ってなさい・・・。」

・・・ここはこの村を統括しているジルバード家。

気付いた時にはこの屋敷の医務室ベッドの上にいた。

そして。彼女はボクにむかって何かを呟いている。よく聞こえないけど何かのスペル・・・。

体があったかくってきもちいい・・・。そして。いつの間にかボクは深淵の眠りにおちていった。

・・・別室・・・。彼女はウィルと対峙した。しばしの無言。・・・そして。

その静かな緊張は彼女の溜め息によって打ち砕かれた。

「知恵熱よ。心配しなくても一晩寝ればなおるとおもう。ただ・・・ひどく精神が弱ってたから・・・。

しばらく無理はさせない方がいいかもね。・・・で。

あの様子だとスペルトレーニングのやり方とか教えてないんじゃない?

でなければあんなになるなんてありえないから・・・。」

そう言って彼女はウィルの目をのぞき込む。・・・そのまま また 沈黙・・・。

「あいかわらず。おまえには嘘はつけないな。」

「あたりまえっ。何年付き合ってると思ってるの?」

「ま。それはそうなんだけどさ。」

・・・彼女の名はヒール。

ヒール リースト ジルバード

たぐいまれみない能力で若干二十歳にして この屋敷 の当主となったのだが。

性格的におとなしくするのが苦手だったため。

莫大な財産と時間を手に入 れた今も部屋の数室を医務室として使い。

村の医者として日々にぎやかな毎日を過ごしてる。

もともとといえば彼女もウィルと同じ魔導師なのだが。

本来の力である炎より生命の力の方がたかくなってしまい。

いまではこの力を使ってる方が多いくらいだろう。

「・・・で。本題はなんだ?」

ウィルの考えがヒールに分かるようにヒールの考えてる事もお見通しというわけだ。

彼女はくすりと笑うと本題をきりだした・・・。





・・・うーん。それも一理あるな。

ヒールの話に少し間をおいて答えてみたが。気の迷いが無いわけではない。

・・・時空操作・・・。かつて。その危険性をおそれた魔導師達に封印された力の一つである。

この力を持つ為にはは生まれながらにして得るか。

もしくは全生命力を犠牲にする邪転法とも呼ばれ伝承法を用いる他は無く。

結果。この力を持つ者は僅かとなり。貴重な存在となっているのだ。

そして・・・。今。

隣の部屋で眠っている少女もその力の持ち主なのだから・・・。

・・・ヒールがだした提案・・・。しばらくこの屋敷で預かる。

と。いうものだった。ウィルは一抹の不安を覚えた。





確かに・・・ヒールの屋敷に預けておけば不自由のない生活がおくれるだろう。

しかし・・・ヒールは攻撃型の力を退化させてしまっている・・・。

私の様に外敵から身を護るものがないとなると・・・。

それに・・・この屋敷の警備程度では失われる力を求める者達には通用しそうもない・・・。

奴等も必死なのだ。せめて・・・。

「・・・何を悩んでるの?ウィルもここですめば問題ないでしょ?

部屋はいくらでもあるんだから〜。・・・」

相変わらず分かってたらしい。願ってもない申し出だ。「・・・その言葉に甘えさせてもらおうか。」

こうしてジルバード家での生活がはじまった。






「それじゃ この子の名前決めてあげないとねっ。

いつまでも前の名前というわけにもいけないから・・・。

前の名前は沙駆・・・だったよね。

じゃあ時の羅針盤の数字の数なんてどう?時魔導師らしく。」

「・・・30個・・・サーティ・・・か。・・・でいいか?」

とボクにふってきた。

「うんっ。いーよぉ☆記憶も曖昧に消されちゃってるし。

それに・・・ この体にはぴったりだとおもうからねぇ。」

ひーるはくすっと笑い。

「 ほんっと。趣味まるだしなんだから〜。あの人は。ね〜?」

うぃるもあいづちをうち。ほんと。好きなんだね。と苦笑してる。

うーん。あの人。こーゆう趣味だったんだ。なんだかなぁ。





さーてぃ とらびゅうぉると。12歳。特技 弓 属性 時 付加能力 無効化。

あの人から・・・受け継いだ力は失われないから。そのまま。使えるけど。

体が小さくなった分 腕力とかは下がっちゃって前の様に大剣は使えなくなっちゃった。

だから力のいらない初心者用の弓に無効化の能力を加えて最低限自分の身を守れる様にしてもらった。

でもねぇ・・・。弓は下手だからあたんないんだよねぇ・・・。

この身長さえなんとかしてくれれば何とかなりそうなんだけど・・・。

うみゅ〜 今日は スペルトレーニングだぁ。つかれるんだよねぇ。

なんか体使わない分。精神削られてる感じだもんっ。 あれ。

ここにきてからウィル容赦ないし・・・。「なにしろ病院だからな」・・・ってねぇ。

・・・けど・・・





ここでの生活も最初は辛かったけど。なれちゃった。ひーるおねーちゃんは優しいし。

うぃるも・・・トレーニングの時以外は優しい。・・・ってゆーか。

天然・・・な状態で目の鋭さなんて別人の様になくなっちゃってる。

余計な精神力を使わない為にこうしてるらしいけど。多分・・・嘘。

ボクに付いてくれてるメイドさんが言ってた。

うぃるってすごく能力が高くて そんな事しなくても問題無いって。

・・・風読みの力・・・

熟練度を上げると風だけでなくありとあらゆるものを読み取ってしまう力。

彼女は一族の末裔なんだって。





彼女の名前は。ふぃーる。

ふぃーる えあり しるふぃす

風読みの一族のなかでも高位の家計にあたるらしくて。

結構なお金持ちだったりする。で・・・なんでメイドなんてやってるかってゆーと。

・・・趣味・・・だからなんだって。ん〜かわってるよねぇ。ま。それはさておき。

うぃるのほんとの力。と・・・いうか。かつて持ってたと言う力の事。

あの時・・・大半の力を失ったと言ってたけどほんとはまだ・・・。

と いうのが彼女の考えみたい。

・・・そ〜いえば。

あの人もなんか見透かしてるような・・・感じで話してたっけ・・・。

う〜みゅ。ハテナマークがいっぱいだよぅ。





けど・・・考えてみればボクの悩みは簡単に解消される。すぐに分かる事・・・。

過去の時代に飛んで見てくればいいんだもん。うぃるが力を失った理由を・・・。

けど。できなかった。ボクの力が弱すぎてひーるおねーちゃんの結界を壊せないから・・・。

この町は一部の場所を除いてほとんどの魔法を打ち消しちゃう魔法結界がはられてて。

むやみに使えないようになってる。町の治安を守るためにね。

ただひーるおねーちゃんのより強い魔法は使えちゃうんだよねぇ。

結界張ってるのがおねーちゃんだから〜。

でも。 この町に住んでる人にそんな強いの使う人いないんだよねぇ

だって。氷聖っていわれてた頃のウィルとパーティ組んでたんだよ?

そんなその辺の人達と比べものになるわけないよ〜。
・・・で。

一時はあきらめた。部屋であの本を見つけるまでは・・・。

さーてぃ様のお世話役になって三ヵ月・・・。

時が流れるのは早いものですね・・・今日は雨・・・かぁ。修行はお休みですね・・・。

では。書庫の部屋にお連れしてみましょう・・・。本を読むのがお好きなようですから。

きっと。いい気分転換になるでしょうし・・・お勉強も出来ますし。

その間にクッキーでもやいておけば・・・私のお気に入りの紅茶でお茶できますし・・・。

うん。いい感じねっ。今日はこれでいきましょう。

・・・さて。 そろそろお迎えにまいりますか・・・。

お休みの日でも寝坊は良くないですからね。







 

「わあぁ〜」

思わず叫んじゃった。すごいなんてものじゃないよぉ

ここはじるばーど家の書庫・・・。

ふぃーるが息抜きにってつれてきてくれたんだけど。 なんて広さ。おまけに天井なんて見えないくらいたかくて

棚という棚には本 本 ほん〜〜。 いったい何万・・・ううんっ。何十万冊あるの?

「えっと・・・さーてぃ様?」

はっ・・・

あまりの光景に我を忘れてたみたい。ふぃーるが苦笑しながらひいちゃってるよぉ〜。

「えと。ごめんっ。なんかまいあがっちゃってっ。

あ。でもっ。ここの上の方の本って どうやってよむの?もしかして空飛んでとかとかぁ?・・・」

・・・って。ふぃーるをふりかえると。

彼女はくすっと笑うと静かに重力から開放・・・

つまり・・・空にうかんだ・・・。 「 うぁあっ。なん・・・で・・・。」

こえになんない・・・。

感情が極まると声がだせなくなるって聞いたことはあるけど・・・

これがそうなの?

でも。でもっ。人が空飛ぶなんてしんじられないよぉ。

・・・ってボクがひとりで取り乱してるとふぃーるが静かに降りてきた。

そして。

「おどろかれました?」

ってすました顔で話しかけてきた。

・・・で。ボクに一冊の本を手渡すと。

「かつて魔導大戦という大規模な戦いが起きました。

この本はその時の記録・・・みたいなものです。

簡単に物語にしてありますからよんでみてくださいねっ。

少しはお悩みも薄れるものとおもいますので・・・。」

そして。くすっ。と笑った。

「では。わたしは上におりますのでなにかございましたらおよびくださいませ。」

っていうがはやいか。あっと上空たかく舞い上がってみえなくなっちゃった。

む〜。相変わらず見透かされちゃってるし〜。

ま。なにはともあれ読んでみよっとぉ・・・。





「・・・んに?表紙のトコに何か書いてる・・・。えっとぉ・・・この本に触れしものよ・・・

この本を開きし者に試練を与える・・・。覚悟の成らぬ者・・・開く事なかれ・・・」

・・・うみ?開く事なかれ?ん〜。どうゆう事かにゃぁ。開かずに読めるわけないしねぇ・・・。

しばらく考えてたんだけど出た結論。考えたってはじまんないっ。

いきおいよく・・・本を開く・・・途端にボクは光の束につつまれ。

そして 意識をうしなった・・・。


「いったね・・・。」

「ええ・・・いってしまわれましたね・・・。」

はるか上空でさーてぃが光の束に飲み込まれるのを見ていた二人・・・。

「これで・・・良かったんですか・・・ひーる様・・・。」

「うん。史実を語るより実際に体験したほうが分かりやすいから・・・。」

「ごめんね?折角の気持ち利用しちゃって・・・。」

「いえ。お茶はいつだってできますから・・・。」

「今度ちゃんとうめあわせするから。」

「・・・おきになさらないで下さい。ひーる様・・・。」

「・・・うーん。今はいいよ。ここには私達しかいないんだし・・・。いつもの様にひーらーで。」

「そうね・・・じゃ。そうさせてもらうわ。時の御子が戻ってくるまで・・・。」「えっとぉ・・・。」

この感覚・・・体が宙に浮いて飛んでるような。何度か体験したけど・・・。

ただ違うのは闇のなかじゃなくあったかい光の中にいること。

あの本を開いたとき光に包み込まれたとこまでははっきり覚えてるんだけど・・・。

すぅ〜と意識が失われていく。眠りに落ちてく時の様に・・・。

「・・・さーてぃ。さーてぃっ。」

・・・声? だれかの・・・声が聞こえる・・・。

「さーてぃ。よく聞いてっ。今からあなたはこちらの世界の過去の時代へ飛ぶわ。

ちょうど大戦がおこなわれてた頃よ。そこで史実を見てきなさい。

あなたはさーてぃ。時の巫女となるもの。無事に帰る方法は・・・。」

「え・・・。何?帰る方法は?どうすればいいの?」

・・・必死で聞いてみるけど返事はない。どうすればいいんだよぅ・・・。

パチっ。バブルが弾けるような音でボクは目をさます・・・。

「ん・・・うーみゅ・・・ん。」

「気が付いたみたいだね・・・。」

ボクの目に最初に映ったもの・・・

よく見慣れた風景とよく見慣れた人・・・。

「あ。ちょっとまってて。服持ってきてもらうから。」

そう言うと部屋の外に出ていこうと・・・扉に手をかけた。

「うぃる・・・。」

ビクっ。動きが止まった。

「えっと・・・。うぃるでしょ・・・?」

その人は体を翻すとにこりと笑い

「そうだよっ。僕はうぃるふりずないとうぉるなっつ。」

「ま。自己紹介はあとあとっ。いつまでもそんなかっこしたくないだろ?」

パタン

そういって彼は部屋を出てった。

「う〜みゅ。そんな格好ってもねぇ。」

「この時代だと このカッコも駄目なのかにゃぁ・・・。」

ふと・・・手首を見てみる・・・。あれ?包帯・・・?服は・・・着てないとか?

えっとお・・・。この毛布剥がれない・・・固定されてる?

かちゃっ。誰か入ってきた。

あ・・・。今度は女の子だ。あれ・・・?

「くえす?」

「え?オレの事しってんのか。お前。」

「えっと・・・。くえすだよねぇ・・・」

コンコン。

「着替えは終わった?」

「あ。申し訳ありませんすぐにっ。 デスペルっ。」

キンっ。鋭い金属音とともに毛布が軽くなる。

んしょっと。って起き上がろうとするボクを彼女は止めた。

「まだうごける状態じゃねーよ」って。

そういえば。下半身がほとんど動かない・・・。それに包帯ぐるぐる巻き。

「取り合えず下着は我慢してくれな。」って包帯をほどいてく。

わ・・・ボクの体傷だらけ・・・。

彼女はボクの体を一通りチェックして包帯を巻き直した。

「半端じゃない回復力もってんな・・・。」

「え・・・?」

「覚えてないのか・・・。ここに来たとき瀕死状態だったんだぜ?」

「ええぇっ。」

「ま。詳しくはうぃる様達から聞いてくれ。オレはただの見習いだから詳しいことはしらねーんだ。」

「ふーん。で。キミのフルネームってもしかして。くえすしぇるはーてぃとか?」

「・・・いや。似てはいるが・・・くえすぷろーとはーでぃすだ。」

「史実を見てくる様に・・・。」

「ふーん。」

「時の巫女の修行というのは初耳だけどそんなんもあるんだねっ。」

着替え(?)が終わって うぃるとくえすに相談してみた結果がこれ。

「・・・でもさ・・・。」

一息ついたた彼はボクの持つ特別な力について話してくれたんだけど・・・。

「多重能力保持者?」

「うん。普段は一つの能力しか使う事はないけど・・・。

使おうと思えば様々な能力を同時に使いこなす。

いわば僕達より優秀な魔導士なハズなんだけど・・・。」

「・・・だけど?。」

「使いこなすだけの精神力がないみたいだねっ。

僕達より劣ってるみたいだし。」

それに時空移動はよほどま高いレベルの能力者でも他人を自由には飛ばせないみたい・・・。

ボクが戻るためには自分自身とばさなくてはいけないけど使いこなすだけの精神力ない・・・

なぜかというと。いろんな能力を持ちすぎで精神力を維持することが出来ない。

そういう訳だった。

いくつかの能力を封印するか十分な精神力を習得するか・・・。

前者は能力を犠牲にし後者は時間を犠牲にしなくてはならない・・・

どちらにしても これしか方法がないみたい・・・。

で・・・

ボクは後者の方を選んだ。

ここで居候させて貰いながら。

魔力と精神力を高めてく事に・・・。

ちょっち紹介しとくね・・・。

くえすぷろーとはーてぃす。

ブラッディエンジェルの異名を持ら戦士で。

見た目は小さくて可愛いんだけど

一度戦場にでればほんの数瞬であたり一面が血にそまる事から血染めの天使と恐れられてるにゃ。

けどぉ。人付き合いも悪くないし。みんなからも好かれてるにゃ。言葉使いは悪いんだどねぇ。

んで。

うぃるふりずないとうぉるなっつ

時の管理者になる前。氷聖と言われてた頃の姿なのにゃ。

でも大戦が終結する直前暗殺されちゃったんだよねぇ。

で・・・

生前の功績と半端じゃない魔力を買われ時の管理者に選ばれたのにゃ。

その後・・・新しい管理者が選出され任を解かれ転生により再び現世に姿を表したのにゃ。

それがうぃるふりーすうぉると。

ボクの保護者であり先生でもある人なのにゃ。

ただ・・・

魔力と能力の大半は失われてるみたい・・・。

あくまで本人がいうにはだけどねぇ。実はおさえてるだけだって話もあるんだけど・・・。

「御苦労様・・・。」漆黒のマントを翻し彼は報告者に下がるよう申し付けた。

「まさか・・・あの時代にいこうとは・・・。」

彼は焦った。世界を別な物にしてしまえる力・・・。その持ち主が過去

・・・それも自身に深くかかわりのある時代に転移されてしまったのだから・・・。

ヒーラーの事だ・・・何も考えがないわけではないだろうが・・・。

サーティには因果を保つ重要性は教えてないのだ。

もしも。

あの圧倒的な力で勝利をもたらせてしまったら・・・。

・・・魔導対戦での敗北・・・。それが彼の転生に関わる因果となっていた。

敗北しなければ暗殺される事もなくなってしまうだろう。

「とりあえず・・・ヒーラーに相談持ち掛けてみるか・・・。」

「あぁ〜。その事ね。」と彼女はすぐに理解してくれた。

「で・・・何か対策はとってあるのか?」

「ん〜まぁ。それなりに大丈夫だと思うわよ?」

「それなり?」

「これ見て。」

そういって彼女は

小さな水晶玉をさしだした。

・・・魔石水晶・・・。精霊を封じる為に作られた特別な水晶玉。

ただし・・・。

精霊自体が持ち主に対し従順な為。封じ込めるというよりは中でくつろいでるっぽい代物なのだが・・・。

「・・・ふぇにあを?」

彼女はコクっとうなづき。

「これでも・・・心配?」

・・・と。

悪戯っぽい笑みを浮かべた。

フェニア。

伝説の炎の鳥フェニックスの子供でヒーラーの守護精霊。

子供とはいえ。その力は強大で半端な力では全く通用しない

普段は鳥の姿を取る事が多い。

人間形態の時はまるっきり無害で大人しそうな少女になっている。

ただ・・・

怒らせたが最後。

数々の炎魔法で黒焦げにされてしまうだろう。

・・・とまぁ。

見た目とは裏腹にかなりレベルの高い。精霊だと・・・

そういう訳だ。護衛兼見はり役にはちょうどいい・・・。

「いや・・・。彼女が一緒なら大丈夫だろう・・・。」

「人を見かけで判断しちゃだめだよ・・・。」

これが彼女の決め言葉。

この言葉を聞くとき必ずそこにあるもの。

無数の炎呪文をうけ横たわる物体。それが人であるか動物であるか。モンスターであるかの違いはあってもその事実は代わらない。

彼女の名はふぇにあ。

ふぇにあ てぃる。

サーティとともにみつかったのだが。瀕死のサーティとは裏腹にほとんど無傷であったため。

サーティの世話役を申し出た。

実のトコは護衛と回復をする為に近くにいる必要があった為・・・なのだが。

「さてと・・・。」

「これでうまく潜り込めたし・・・。早いとこ巫女の体を回復させなくてはね。」

「とはいったものの・・・。」

彼女は腕にはめこんだリングを見て溜め息をついた。

「思ったより転移の衝撃が大きくて殆どの力をサーティの生命維持につかっちゃったからなぁ・・・。」

レイズリング・・・。

彼女の腕にはまってる輪っかで生命力をためこんでおけるもの・・・。

本来は深紅に光ってるものなのだが。今はほぼ透明になってしまっている。

彼女はもいちど溜め息をつき。「この子を回復させるにもこの状態じゃね・・・。」と頭を抱え込んだ。

レイズリングは使いきりと言う訳ではないけど。

失った生命力を回復するにはあたしの力を必要とする・・・。

けれど。この時代にエリクセルがあるわけないしなぁ・・・。

人工精霊力回復剤エリクセル・・・。

あたしたち精霊の唯一の回復薬だ・・・。

これが出来るまでは魔導水晶の中で休むことによって回復してた・・・

時間がかかる回復方法だったけどこれでもいいほうだったから・・・。

けど。今はそれすら無い状態なのだ。

手に入れようにも精霊がこの時代に存在出来てないのだし到底むりな話だ。

あたし達が人間達と共存をするようになったのは。この時代から百年以上後の話なのだから・・・。

「やっぱ自然回復かぁ。」

・・・約三ヵ月・・・。

自然回復で精霊力を元どおりまで回復させるのに必要な時間・・・。

「巫女自身。瀕死だったとはいえ普通に体力回復できちゃうわ・・・。」

「・・・ん?」

「・・・・・。」

「普通に回復?」

「・・・そっか。」

「その手があったわ。」

「ヒーリングを覚えさせちゃえば短い期間で回復させる事できちゃう・・・。」

「ヒーリングの魔導書?」

「そ!これ。」

「よむだけで覚える事が出来るしろものなのよ。はやく動ける様になりたいでしょ?」

「う〜みゅ。それはそだけどぉ。・・・むずかしそぉ・・・」

「仕方ないの。残念な事に今のあたしには回復能力がないから・・・。自力で回復してもらわないとね・・・。」

えっとぉ・・・。悠久なる時の中に。時の巫女が願う。その流れによりて。我に治癒の力を与えよ。

・・・これだけなの?

ええ。それだけ。

そのスペルを唱えれば回復のスキルを使えるから・・・。ただし。それはあくまで転換魔法と言われる疑似的なものなの。

巫女の能力に依存するから効果はうすいとおもうよ?

・・・しばらく考えていたサーティ・・・。

「転換魔法ねぇ。疑似的に属性意外の魔法が使えるってことだよねぇ。」

「そうよ。そのままだけど。」

「効果がうすいってのは?」

「そうね・・・。分かりやすくいえば・・・。実力不足・・・かな?」「今の巫女の精神力はあたしの100分の1にみたないの・・・」

「え・・・そんなにないのボクの力・・・」

彼女はコクっとうなずくと精神を集中しはじめた。

途端に周りの空気がビリビリとしたものにかわってく・・・。

押し潰されちゃいそうな重圧がのしかかってくる・・・。

「あたしはまだ成体じゃないからこの姿の時はこれくらいが限界ね」

「でも・・・今の巫女の体にはかなり苦しいんじゃない?」

そう言ってボクをみつめる。

「う・・・うん。すごく痛いかも」

彼女は集中を解くと

「修行がんばろね」

・・・と励ましてくれた。

さぁって☆明日から修行開始だぁ。

実力の差あそこまで見せられちゃったから本気でがんばんないとねぇ。

・・・と思えたのは始まるまで。

だって最初の訓練ってのがただじっとしてるだけなんていうんだもん。

でも・・・実のとこ。かなりきつかったんだよねぇ。

動かないでいるって事がこんなに苦痛だなんておもわなかったよぉ。

結局・・・二時間でリタイア。

「まだまだあめぇな」

ってくえすにあきれられちゃった

うみゅ〜。なんて無力なんだろボク・・・。

でも。慣れってのはすごいよねぇ。一週間目には終わりまでいけるようになったもん。

お昼から夕方までずっと。

あ。朝はなにもしないにゃ。好きな事してていーからっていわれてるしねぇ。

だから街に繰り出したり図書館にいたり。誰かとお話してたり。

はじめはやっぱりいろんなとこいったりするのこわかったけど。今はもう慣れちゃった。

それに。ゲートがあるところだったら瞬時に移動出来ちゃうし。時間を有意義に使えちゃう♪

でも・・・ここから消えちゃうんだよねぇ。そのために訓練してるんだもん・・・。

ボクがいきなりいなくなっちゃっていいのかな・・・。

「そうだな・・・。多少なりとも違和感を覚えるだろうな・・・」

いきなり居なくなったりして大丈夫?って くえすに聞いた答え・・・。

「でもな。ここじゃ。それも普通の事さ。」

「さすがにあたしらみたいな有名人となるとちっとばかし騒ぎになるかもだけどよ」

「じゃぁ。ここの人達と関わりが無ければ問題無いんだ?」

「いや。別に意識して関わるまいとすることはねーよ。」

「歴史的な事・・・ようは未来に変化をあたえなきゃいーんだ」

「歴史的な・・・事?」

「あぁ。例えば。この時代にあんたの名前がのこされるとしよう・・・」

「するとだ。未来の何処かであんたの名前を知る者が出てくるわけだ。」

「知ってると何が起きちゃうの?」

「そうだな・・・極端にいや。あんたの存在が危うくなるな・・・」

「詳しい理屈はよくしらねーけどそうなるらしいぜ」

「あぁ・・・そういや。あんた。はじめてオレに会った時。オレの事知ってるみたいだったろ?」

「うん・・・話し方は違うけど見た目はそっくりだったから・・・」

「まぁ。どこでどう間違えたかしらねーけどそれと同じ現象が起きる訳だ」

「ふ〜みゅ。・・・よくわかんないけどわかったよぉ」

「まぁ・・・理解しようとしたところで理解できるほど簡単なはなしでないってことだな」

「さてと。つかれたろ?今日はこれくらいにしとこうぜ」

そういうと彼女はボクの方を見向きもしないままスタスタ家に入ってっちゃった。

う〜みゅ。なんか納得いかないんだよねぇ・・・。一つの炎が一時も消えることなく燃え続いてる・・・その場所に彼女は休んでいた・・・。
あかあかと照らし出された巨木に身を委ね静かに我が身の回復を待ちながら・・・。
「まさか・・・あなたがいたなんてね・・・」
彼女は誰に言うでもなく呟く。・・・
それに呼応するように大木は微かに揺れる。
予想外の展開だった。巫女とこの時代に飛んでから一週間目。
あたしの前に突然現れた少女・・・
「迎えにきたよん☆」とあたしに飛び込んできたと思うとあっと言う間にこの炎の神殿に飛ばして
元の姿である大木となりあたしの止まり木になってくれている。
彼女は精霊を癒すもの。
数千年に渡り・・・世の中を見つめ・・・様々な姿に成り代わりあたしたちに力を与え続けてる。
樹の精霊。人は永きに渡り生き続けるものを神と崇める。
あたしたち精霊にとっても・・・それは同じ。
精霊神の一体。
樹王どりあど。
あたしたちはこう呼んでる。
でも彼女も王とは呼ばれながらも。
まだまだ修行中の身であり。精霊のランクとしてはあたしとおなじだったりする。
だからどりあど〜って呼び捨てに呼んで親しく付き合ってるの。
まぁ・・・さすがにうぃるの守護精霊様はこうはいかないけど。
万物の根源と言われるあの方なのだし・・・。
「それにしてもさ。よくあたしのコト覚えてたよね。」
彼女は少し考えるような仕種をすると。
「さすがに長く生きてるといろんなコトおぼえるからね。」
「ふと。きみに初めて会ったときを思い出したから・・・。」
「意識を過去に飛ばして様子見にね。」
「ふーん。そっか。どりあどにはそう感じちゃうんだ。あたしたちが元からここにいたかのように・・・。」
また少し考える仕種をする。
実のトコこの時彼女は何も考えてはいない。
なんていうか。癖みたいなもので。一時的に思考を停止させて記憶の整理をしてるみたいなの。
彼女は頷くと。「そうみたい。不思議だよね・・・と呟いた。」
どりあどの本体は・・・今あたしの止まり木になってる。
でも。今会話してるのもどりあど。
彼女は様々な姿を見せる。彼女とはよんでるけど彼でもあり。人や精霊とは違う姿を見せる事もある。
あたしたちより遥かに長い時を生き様々な経験を積み重ねて今の姿がある・・・。
「ふぇにあ?」「え・・・あ・・・。そろそろ送り届けてあげるよ。力回復したよね?」
「あ・・・うん。さーてぃ心配するしね。」「わたしはいつも丘の上いるから。なにかあれば・・・ね?」
彼女は軽くバックステップするとまたねってあたしに飛び込んでくる。
その瞬間には彼女は消え去り。あたしは元の場所に帰ってた。
あ・・・。なにかいおうとしてたけど聞き取れなかった・・・。
どりあどは丘の上にいるって言ってたけど。いったい。どこの丘なんだろ・・・。
最後に場所っぽい事言ってたけど。聞き取れてないし・・・
まいったなぁ。大木がある丘ってもこの辺りにはなさそうだし・・・。
ふぇにあ?
あ・・・。さーてぃ・・・もしかして探した?
う・・・ううん〜。全然♪
通りかかって見たことあるコだなって思って声かけただけ〜。
さ。かえろっ。みんな心配してる・・・。
そこで口を噤んではみたけどもう遅かった。
それじゃ大急ぎでかえんなきゃ。あたしの巫女が泣いちゃう前に・・・。
バツの悪そなボクをよそにふぇにあは思いっきり地面を蹴ってはしりだす。
あ〜こらぁ。まってよぉ。
ボクも慌てて追いかける
・・・けど。いつもなら簡単に追いつくハズなのに追いつけなかった。
な・・・なんでぇ?いったいなにがあったんだよぉ〜。
どりあどによって本来の力を取り戻した彼女は。ボクの数倍のスピードで丘をかけてく・・・。
そして数分後。なすすべもなくへたりこんだボクが見たものは深紅の羽根を持つ天使だった・・・
大丈夫?さーてぃ。少し飛ばしすぎたかな・・・。
そう・・・この天使に見える子がふぇにあのホントの姿。
思わずみとれちゃった・・・。
そりゃ。フェニックスの末裔なんだから羽根は不思議でもなんでもないハズなんだけど・・・。
なんていうか。息を飲み込んじゃうくらい迫力あるものだから・・・。
なにみとれてるの?
いつもの声にボクは我にかえる。
はやく帰ろよ?
みんなに心配されちゃうよ?
ふぇにあ・・・。
力戻ったんだ?
彼女はくすっと笑うと。
おかげさまでねっ。
・・・と胸を張って見せた。
ま。詳しい話は帰ってからにしよ?ね?
う・・・うんっ。そだね。帰ろっか。
そして・・・道すがらずっと気になってたあの事を聞いたんだけど・・・。あぁ。レビテートの事かな?
羽根もない人間が空を飛べる魔法。
そう。こちらに来る前にひーるとふぃーるが見せたあの魔法。
でも・・・。あんまり実用性ないかも。
ある程度は浮いてられるけど。浮きながらの行動はかなり遅いものになるし・・・。
あたしみたいに 羽根で加速もできないでしょ?
・・・もっとも。ふぃーるみたいにハイレビテートとかつかえれば・・・。
高位魔法ってやつなの?
うん。風の一族専用っぽいんだけどね。風魔法のスキルがかなり高くないと使えないし。
・・・転換魔法でも?
・・・使いたい?もしかして。
うんっ。
じゃ。もっとがんばんなきゃねっ。しるふぃきびしいから・・・。今の数倍は力ないと会ってもくれないわよ?
そ・・・んなにボクって力ないんだ〜。
そういう事ね。だいたいあたしだって仕方なしに教えてあげたんだからぁ。
う〜みゅ。なんか情けなくなってくるよぉ。
仕方ないでしょ?いままでトレーニングしてなかったんだから。
でも・・・素質が無いわけでも無いんだから。頑張ればあたしより
(・・・ううん。あたしなんか足もとに及ばないくらい大きな力を得ることができるハズ。・・・だってあなたは時を統べる巫女なのだから・・・)
・・・どしたの?いきなり黙って深刻そうな顔しちゃって。
え・・・あ〜。考え事。
・・・昨日の夕御飯なんだったかなって・・・。
一瞬キョトんとしたさーてぃだったけど察してくれたみたい。
舌平目のムニエルだよ〜。もう忘れちゃったのぉ?
あ・・・あはは。そだっけ。もうボケちゃったかな〜。
さーてぃもヤレヤレといった顔で苦笑い。
(あたしなんかこの子の足もとにも及ばない・・・けど。今は・・・今だけは・・・)
さーてぃ・・・。
んもぉ。ほんとどしたの?ずっとそんな顔してさぁ。言いたくなきゃ聞かない。ボクはそういう主義だよ?
でも。つらかったら相談して。ボクなんかじゃたいした力になれないけど・・・
過去の・・・ずっとずっと前の記憶。
それは本人の知らないうちに思い出され・・・性格として表れる。
だから。この子は優しさを持つ・・・。飾られた偽りの物ではない。本当の優しさを・・・。
けれど。時の巫女として。果ては女王として時には厳しさも持たないといけない・・・。
この子にそれができるかどうか・・・あたしなんかがどうこう言える立場ではないけれど・・・。
パタンと日記を閉じる。
そして静かに精神を集中させる。
永遠と燃ゆる輪廻の炎よ・・・我の願いを受け入れよ。我が身が果てる時。リングの力を開放せよ・・・。
我を再びこの地に君臨させよ。キープ・ア・レイズ!!
きぃぃん。
淡く光る水晶から一瞬だけ眩むような強い光りが放たれる。
そして。また。
静かに淡い光をほのめめかす・・・。 あの子・・・キープアレイズを発動させたわね・・・。
時を越えてまでやるべき事が見つかったというわけかしら。
それだけの素質があるんじゃねーか?
木に逆さづりになってるザードが答える。
ふふっ。確かにさーてぃは強い力持ってるものね・・・。
あの方もなかなかの逸材を見つけたものだわ・・・。
ジルバード邸の地下。闘技場でも一人の少女が異変に気付く・・・。
へ〜。ふぇにあがさーてぃの力認めたのか・・・。
これはなかなか。おもしろくなってきたな・・・。
オレもうかうかできね〜ぜ・・・。
見た目とは裏腹に乱暴な言葉づかいの彼女。
・・・彼女もまた。時を越えしもの。
かつての血染めの天使。
オレは・・・うぃる様が暗殺された時。
アサシンにむかって突っ込み・・・相討ちになった。
時の迷宮内で即座に転生を望み・・・
今の時代に降り立ち。
しばらくは修行にあけくれた・・・。
姿形や性格。記憶がかわらなかったのは

時の管理者となった。うぃる様の采配だが。 詫びとして貰った物だ名前も攻撃形態も変えなきゃならなかったけど・・・
うぃる様には感謝している。
さすがに・・・
さーてぃの護衛役にされた時は泣きそうだったが・・・
小娘の護衛などと・・・。
けれど。
洞察能力というものだろうか。
見た瞬間から潜在能力の差を見せ付けられた。
でも今はほとんど無力に等しいのだ。
それに今はオレと無関係ではなくなってしまった。
ひーるも人がわるいよな・・・。
オレ達が転生する数年前に飛ばすなんてよ・・・。
あの平和そのものな場所が戦場になって死んでじまうんだから。
・・・人生何があるかわからねーものだぜ。
しかし。うまくやってくれよ?ふぇにあよぉ・・・。更に。その地下。魔導研究所・・・
ふーん・・・ふぇにあがね〜。
それじゃそろそろ。僕も手を出さないといけないかなっ。
そう呟くと本棚から一冊の本を取り出しいつも中空に漂う泡にむかい投げ付けた。
泡はパチッっと音をたて弾けると同時に少女が表れる。
彼が何かを囁くと少女はコクリとうなずき虚空へと消える。

でぃーね。
それが彼女の名前。水と氷の属性をもつ使い魔だ。
体力は半端でなく低いものの少しでも水分がある限りは自然回復できる為に力尽きることがない。
精神破壊するも寝返りさせるのもお手のものという。結構怖いヤツだったりする
普段は性格もおとなしく従順なのだが・・・
一定の条件が揃ってしまうと。性格が変わってしまうので注意がひつようなのだ・・・。
彼が命じた言葉・・・。

暗殺。

もしもの時の為の保険をかけたのだ・・・。
場所は変わって異界空間と呼ばれる場所・・・
二人の魔人が対峙している。
時の巫女・・・ですか・・・世代交代にはまだ早いハズですが?
それがさぁ。その候補ってやつがすざましくよわっち〜やつでよ〜。
  ふむ・・・それで?
なんか。今から修行とかすんだってさっ。
ほう・・・それで私に何を協力して欲しいと?
それが・・・サキュバスをひとり貸して欲しいらし〜ぜ。
ふむ・・・。分かった。ちょいとヤツの所に出向いてこよう・・・
留守はたのむぞ。
わぁったよ。き〜つけてな〜。
あぁ。若くとも魔界の主とやりあえるヤツだからな・・・。
十分気をつけるさ。
ようこそ。キング。

今日は誰?

ふむ。うぃるに取り次ぎ願いたい。

ん。分かったよ。

・・・そこで口をつむぐ・・・ 異界にいた時の様に。いつもの調子で答えてみたものの。

今日の来訪者はただの人じゃない・・・。

ち・・・ちょっと聞いてきますねっ。

あわてて廊下を駆け出すその姿を見送りながら呟く

・・・べりあす・・・か。かなり優秀なやつだが。あれさえなければな・・・。 数分後。

お待たせしました。どうぞ。

地下へと続く廊下をすすむなか・・・。べりあすは不意に尋ねる・・・

まだ・・・怒こってますか?

・・・あぁ。こいつは忘れようにも忘れれんからな。

・・・あの時は申し訳ありませんでした。

・・・気にすることはない。おまえはおまえらしく自由に生きよ。

せめてもの罪滅ぼしというわけですね・・・。

・・・まぁそう言う事だ。

こいつは昔からそうだった・・・。過去の罪をいつまでも引きずってしまう。

しかも。それを認めてやらんと無茶をするからな・・・。

今の主人とはうまくいってるようだが・・・まぁ。今が良いならそれで良いのだろう。

こやつの心の傷も彼らが癒してくれておるしな。

・・・さぁ。つきました。

・・・これは?

見ての通り鏡です。これは・・・一見はなんの変哲もない鏡・・・

けれども。これが研究所への入口なのです。

一定以上の魔力を持った者であればこの入口を利用する事が出来ますが・・・

普通の者には鏡としか見えず鏡としてしか利用することが出来ないです。

これは実験の都合上。

魔力を持たない者がこの中にはいるとたちまちのうちに生命力を吸れてしまう程の負力に満ちているから・・・

ほぅ・・・。さすがは氷帝と呼ばれたやつだけあるな。

できるだけ強力な魔法をぶつけてください・・・そう簡単には・・・

そうだな。並みのやつではこいつは。やぶれない。

べりあす・・・下がってなさい・・・。

そして。背中にさしてある刀を抜き出すと一度だけなぎ払う・・・。

音もなく。鏡は割れ・・・研究所へと続くゲートが現れる。

・・・さすが。相変わらずすごい威力・・・ですね。

・・・創魔刀 刻陽・・・

魔力をダイレクトに放射する魔刀・・・。

キングの愛刀でありパートナーでもある。

さてと・・・まいりますか。

・・・と。その前に・・・べりあすよ。

はい?

おまえはいつものままでよい。

そう・・・無理に自分を飾るな・・・

べりあすは軽くため息をつき・・・

わかったよ。キング。あんたの前じゃ飾らないっ

あ。キングようこそ。

ふぅ。あれだけの魔力を使わせてようこそもないと思うぞ?

〜そうですね。お疲れさまでした・・・かな?

まぁ。よい。ところで。なぜに私の部下を貸さねばならんのだ?

・・・あぁ。それ?。時の巫女の操を守るためだよっ。

今は修行のためにうちに引き取ってるからねっ。

現界の方の体は今仮死状態なんだけど。

仮にでも精神体いれないと死んじゃうから。

んで。精神寄生できて貞操守るのに適役っぽいのというと・・・。

なるほど・・・。確かに性交渉なしで魔力も回復できるし・・・並みの魔族じゃ太刀打ちできまいな・・・。

ってこと。だめかな〜?

う〜む。さすがにタダでと言う訳には・・・。

まぁ。それもそだねっ。じゃぁ。クロノリング一個で。

クロノリングか・・・時の石を加工して作ったもので装着者の時間を極端に遅くすることができる・・・

つまりは不老不死とかいうのになれるものだ。私にはあまり興味のない話だが価値的には・・・。

ふむ・・・悪くない。

ただし。期間は無制限でねっ。

ま・・・まぁ。良いだろう。

んじゃ交渉成立って事でっ。しばらくはこっちで一般的な事教え込むから送るのは少なくとも一ヵ月先っ。

けど。送り込むのはさーてぃがこちらに飛んだ日になるから特に問題はなしっと。

ただ時空移動に耐えることができる子をよこしてほしいなっ。

わかった。優秀な者を選りすぐっておこう。

あ。そこのゲート使ってっ。このラボと直通にしといたからさっ。

・・・?。直通だって・・・?

ま♪通ってみればわかるからっ。

・・・ふむ。では失礼する。

ゲートが静かに作動した瞬間・・・

彼は普段から座り慣れた椅子にこしかける・・・。

・・・ふ。なかなかおもしろいことをするな。うぃるよ・・・。

我が城に繋ぐとは・・・。

・・・つまり。やつはどこにでもゲートをひらけるといいたかったわけだな・・・。

この不安定な空間にでさえ・・・しかも我が椅子に的をしぼって・・・。

・・・今更ながら冷汗が出る・・・。ふぅ。こいつは多少甘く見てたな・・・。

チリンチリンっ。

呼び鈴を鳴らす。

ん?呼んだか?

うむ・・・。

セキュリティの連中が慌ててるぜ?あんたが急にでてくるからよ〜。

あぁ。ゲートでおくってもらったのだ。

・・・へ?まじで?この空間にかよ?。

うむ。

・・・敵にまわしたかね〜な。

・・・すぐにサキュバスを集合させよ。

ん。三日いないにゃなんとかするぜ。じゃぁな。彼は漆黒の翼を広げて飛び立つ。

彼の名はサタン。後に魔王となる者・・・

そして。現魔王キング。・・・

しかし・・・

我らを使おうとはヤツも大したものだな・・・。

ざーどさまぁ〜このドジ犬なんとかしてくださいよぉ。

あ?

仲い〜よなおまえらって。

なかいいんじゃないですよ〜。

ふぇりるは軽く溜め息をつくと。

確かに仲がいいと言うのは心外ですわね。

しかし。口の聞き方には気をつけてくださいましね。

これでもわたくしは誇り高きフェンリルの末裔・・・

あなたみたいな野良化け猫が意見できる立場にありませんわ。

っくぅ。ほんと生意気〜。

いつもわたしに勝てないくせに〜。

あ〜ら。それも心外ですわね。手加減して差し上げてるんですわ。

あなたがあまりに弱いから・・・。

・・・それをみてたざーど。

何かを思い出したかのようにぽんっと手を打つ。

バトルアリーナ。

じるばーど家地下三階にある闘技場。

ふたりは対峙した。

勝負は無制限。なんでもあり どちらかが戦闘不能になった時点で終わりだ。

けどよ・・・

直接攻撃はできねーぜ。

どっちが傷ついてもデメリットしかねーからな。

おまえらにはそれぞれ このバトルシュミレーターのプラティクスでの

立体映像どおしで戦ってもらう。

いーな?

はい〜

えぇ。結構よ。

負けたほうはまぁ・・・。

勝ったほうに服従・・・。

一週間だけな。

そのあとはまたリベンジするなりするといい。

のぞむところ。

二人声をそろえる。

そんじゃ はじめるぜ。コクピットにはいんなっ。

プラクティス!レベル1セットインっ。

ゴーグルにデータが写しだされる。

レベル1はダメージポイント制。

規定ダメージを先に受けたほうが負けだ。

ただし。どんなに強力な技を出そうが与えるダメージは1ポイント。

威力より回数こなせばいいってわけだ。

分かりやすいだろ?

つーことで。開始っ。

唐突の開始・・・。

先にうごいたのはふぇりるだった。

くらぁっしゅ。

あ・・・。

体がしびれる。

にやりと笑みを浮かべるふぇりる。

こっこの〜。

パラライズ〜。

よっと。

かわされたっ?ふふっ。狼の素早さ なめないでほしいですわよっ。

ハウントっ。

ガガッ。

きゃあっ。

体がひどく痛い・・・このままじゃ・・・。

ヒュン。

何かが突き刺さる。

っく。

ギリギリ回避。

したつもりが・・・

急に目の前が真っ暗になる。

戦闘不能の文字が写しだされる。

あ〜ぁ。負けちゃった〜。

ゴーグルを外しふぇりるを見る。・・・。

ROSER?

彼女のブースの表示は・・・負けを示していた。

なんで?負けてるのあいつ・・・。

パチパチパチ。

手を打つ音の方をみる。

ざーどさま・・・。

おめ〜の勝ちだべりあす。

・・・何を思ったか自爆スイッチを押してたぜ?こいつ。

・・・事のあらましはこうだった。

連続攻撃呪文であと少しってとこまでわたしを追い詰めたふぇりる・・・。

一気にかたをつけようと焦っちゃったのね。

俗に言う。勝ちを焦るというやつ。

で。間違えて自爆スイッチ押してしまった・・・と。

ホント

ドジなコ・・・。

それで〜自爆は自己破壊と引き換えに敵全体にダメージを与える手段なものだから

わたしもそれで力尽きたっていう結末・・・。

本来パーティ戦の時に足手まといになった場合に使う手段だから

決して無駄な機能って訳じゃないんだけどね〜。

・・・きゅるる?。(これで文句ないでしょ?)

えぇ♪よくにあうわよそのカッコ。

勝者は一週間主導権を握る・・・。

これが最初に決めた るーる。

わたしがふぇりるに何を命じたか・・・。

一週間。人間形態にならないこと。

実はふぇりるって犬の時は目がおっきくて真っ白で小さくてふわふわで。

特に尻尾なんかふさふさしてて。も〜すっごくかわいんだよ〜。

とってつけは鳴き方。きゅるるんだよ〜。

力も普通の小形犬くらいしかなくて無害だしね〜。

こいつを自由に出来るのはやっぱ気持ちいいね〜。

くせになっちゃいそ。

よぉし。次も勝たなきゃね〜。

クリスマスの夜・・・ボクは一人窓の外をみてた。

あーぁ。今頃うぃる達は町で楽しんでるんだろなぁ・・・。

こんなことなら彼氏の一人くらいつくっとくんだったよぉ・・・。

なんて考えながら・・・。

「あ?今日はお前しかいねーのかよ?。」

突然うしろから話掛けられて驚いて振り返ると

ひーるおねーちゃんの弟のざーどが部屋の中まで入ってきてた。

でも・・・今日は相手にする気も起きなくて・・・

「そうだよ。うぃるとおねーちゃんはデートいっちゃったから」

とだけ答えてまた窓の外の景色を見つめてた。

それで・・・。ざーどは

「あんだよ!今日は随分大人しーじゃんか」

って調子狂ってるみたい。


そりゃまぁ・・・

普段は喧嘩ばかりしてるよな仲だもん。調子狂うの無理もないよねー。

「あ・・・。今日はなんか何もしたくないだけだよ・・・。気にしないで・・・。」

「ざーどにもそうゆう気分の時・・・。あるでしょ?」

ってゆうと。彼も納得してくれたみたいで。

「そりゃ。まーな」

って答えてくれた。

「でもよぉ?」

「え?何?」

「そのかっこ何とかする気ねぇか?」

ん?あ・・・そっか。ボク キャミしか着てないんだよね。

部屋の中はあったかいもん。

・・・それで。気になったんだ・・・。少しかわいいかも。

「別に気にしないよ〜。ざーどもボクなんかじゃ何ともおもわないでしょ?」

ってカマかけてみる・・・。

少し間を置いて・・・

なぁ。おまえって彼氏いねーんだよなぁ?」

あれ・・・?。意外と簡単に乗ってきたかも。

「あ・・・うん。」

「今はいないよ?どうして?」

「あ?いや別に大したことじゃないけどよ。」

・・・ってボクの隣にすわって。

「つまりさぁ・・・こうゆう事してもいんだよなっ。」

ほんの数瞬でボクは思いっきり押し倒されてた。

「きゃ・・・ぁ。いったいなぁ〜。なにするんだよぅ。」

ざーどは構わずボクにおしかぶさって無理やりキスしてくる。

・・・でも・・・。


嫌悪感っていうか。そうゆうのはかんじないんだよねぇ。

・・・もともと少し無理やりな方が好きみたいだからボクって・・・。

それにざーどの事嫌いじゃないし。

喧嘩ばかりしてるけど別に嫌いだからやってるんじゃないもんね。

喧嘩するほど・・・ってやつでだもんっ。

けど・・・。

キスってなんで頭の中トロトロになるんだろぉ・・・。

なんか不思議。

あ・・・ちょっとエッチな気分になってきてる。

「・・・ごめんな。」

「うん?」

突然 の言葉で思わずききかえしちゃった・・・。

「あ。いや。無理やり押し倒しちまってよぉ。」

「別にいいよ・・・。誘ったのボクなんだし。」

「それに・・・キスうまかったよ?」

しばらく沈黙・・・。

「・・・最後まで・・・。してもいいから・・・。ボク・・・」


「っなにいってんだよっ!別に俺は・・・。」

「自信無いとか?」

畳み掛けるかのように上目使いで問い掛けるボクに彼は背を向け

「そんなんじゃねーよ・・・」って言い捨てて部屋を出てった。

・・・部屋にはボク一人・・・

「別に良かったのになぁ・・・。」

ん・・・。あ。まだ治まんないや。一人でするのもやだしなぁ〜。


ざーどの私室。

俺はソファーに深々と腰掛けため息をついた・・・

「ざーどさま?」

「あ?あぁ。べりあすか・・・」

大きくひとつ伸びをし。つぶやく。

「俺も情けねーよな・・・折角舞台も用意してもらったというのによぉ。」

「そうですよぅ。あの魔法かけるの大変だったんですよぉ?」

「・・・解いてきてくれないか・・・。あいつにかけたテンプテーション。」

「ついでに・・・あいつに謝っておいてくれ・・・すまなかったとな」

「はいはい・・・では行って参ります。」


「なるほどぉ。ボクにそんなのかけてたんだねこの。化け猫ちゃんが・・・」

「ば・・・ばけねこ〜!?」

「もぉ。冗談だよべりあすちゃん。そんなに興奮しないでよぉ。」

「でも・・・ボクにこんなことしたんだから責任とってくれるよね?」

「そ・・・それはもちろん・・・。」

「んじゃ。ざーどにかけてきて。テンプテーション・・・。」

「え?しかしそれでは・・・」

「いいからっ。行きなさいっ。」

「・・・はい・・・」


さてとぉ・・・こっちも準備しないとね。

「あ。モシモシくえす〜。ちょい。これる?」

「・・・でねっ。妨害してくれればいいの。出来る?」

「うー。ちょっと気が進まないですけど分かったですぅ。」

「ごめんね〜。時間無いから早速行って!」

「はぁい。一時間でいいんだよね〜?それ以上は無理だよ〜?」

「うん。分かってる。お願いね☆」

「はい はぁいっ♪」

んもぉ。なんだかんだと結構乗り気なくせにぃ。

んじゃ。ざーどのとこにいこっと。


・・・ジルバード家に向かう二つの人影・・・。

「上出来だったろ?」

「まぁ・・・ね。合格ってことにしとくわ」

「初めのころはキスさえまともにできなかったんだから・・・」

「それはいわないでくれ・・・恥ずいから・・・」

「・・・で?あそこに変な空間のひずみがあるわね・・・」

「あぁ・・・。召還のときのみたいだけど・・・」

パチッ。

「ふーん。バリアみたいね・・・」

「かなり強力なものみたいだけど・・・」

「家に何かあるみたいね・・・。どうする?」

「うーん・・・。たぶん・・・くえすの張ったものだよ。これ」

「あの子がこんなに強いものを?」

「うん。ま。あくまで防御に関しては僕たちを上回るから・・・」

「なにか・・・僕たちが帰ってはまずいんじゃないかな?きっと」

「それじゃ・・・少し寄り道しよ?」

「あぁ・・・。そこにべりあすの喫茶店もあるしな・・・」

カランカラン

「いらっしゃいませ。お二人さんですね?ご注文はなにに・・・」

「猫の生き血・・・・もらえるかしら?」

「びっくぅ・・・」

「おまえ。相変わらず変化下手だな。外からでもわかったよ・・・」

「にゃ・・・はは。若輩者なものでして・・・」

「で?あれはなになの?」

「はぁ・・・実は・・・」

「ふーん・・・そっか。じゃ・・・。」

「小一時間ほどここにいよっか。べりあすのおごりで」

「そうね。クリスマスだもの」

「えぇ〜そんなぁ」


「ぅん?」

「あ。おきちゃった?」

「あ・・・ぁぁ。俺・・・」

「夢じゃないよ?」

「・・・・・やっぱ?」

「うんっ。ボクとエッチした。」

「はぁ・・・」

「な・・・なんでため息なんかつくんだよぉ」

「いや・・・なんか。」

「心配しなくてもボクは満足だよ♪」

「あ・・・あぁ。」

んもぉ・・・なんで無口になるんだよぉ」

「きもちよくなかった?」

「い・・・いや・・・そんなんじゃ・・・

ただ。お前の口からそんな言葉が出ると・・・」

「む〜。ボクってそんなこどもっぽい?」

「・・・どうしてだ?」

「うん?なにが?」

「どうして俺に抱かれた?テンプテーションまでかけて・・・」

「ん〜でないとエッチしてくんないでしょ?」

「なっ・・・」

「んもぉ・・・。ボクはキミのことがすきなの。

どうしようもないくらいにねっ。」

「部屋を出てった時悲しかったんだよ?」

「・・・・ごめんな・・・・」

キュッと抱きしめられる。

「お前の気持ちわかってやれなくて・・・」

「・・・あ。窓の外見てごらんよ」

そこには静かに・・・雪が降り始めてた・・・

「ホワイトクリスマスだね・・・」


ジルバード家の庭にたたずみこの様子を見てた3人・・・

「ふふっ。ウィルも粋なことするわね」

「まぁ・・・クリスマスだしね。」

「でも・・・星が瞬くホワイトクリスマスも悪くはないわ・・・

たとえあなたが作り出した魔法の雪でもね・・・」


「なにはともあれ素敵なクリスマスプレゼントですよぉ。」

p>今日は大晦日。ボクとふぃーるは買い物から帰ったとこ。

「さーてぃ様 これ ここに置いておきますよ?」

「あ! うん。ありがと。」

「えっと。それでこれらはなににお使いになるのです?普段見慣れないものばかりですけど・・・。」

「え?お正月のに使うものだけどぉ。」

「お・・・正月ですか?」

「うん。 もしかしてしらない?」

「はい・・・。」

「そっかぁ。んじゃ。今年はボクのとこでお正月体験してみる?うぃる達も呼んで。」

「そうですね。では。皆様に伝えて参りましょう。」

「さてとぉ。それじゃ。いそいで準備しないとねぇ♪。」

でも・・・意外と早くミスがみつかっちゃう。それは・・・

「ボクお料理・・・死人が出ちゃいそうなくらい下手なんだよねぇ・・・。」

「お家の事情でレシピは頭の中に入ってるけど・・・。」

「う〜みゅ。どうしようかねぇ。

誰かどんな料理でも作れる人いないかにゃぁ・・・」

しばらく考えてみる・・・。

ピンっと一つの考えが閃く。そういえば・・・。

ざーどのとこ行ってこよっと。

コンコン。扉をノックする。

「あれ?いないのかにゃ・・・。鍵はあいてるみたいだけど・・・。」

「ざーどぉはいるよ〜。」

カチャっと。扉を開けて部屋に入る。

あ。ねてるし・・・。

ま。いっかぁ。ボクが用があるのはこっちだし。

ボクが必要なのは側でうたたねしてるネコ。

そぉ〜っと近づいていってみる。

すうぅ・・・と目が開く。

「やっほ」

小声で話しかける。

「こっちおいで」

目で合図

ネコは静かに立ち上がるとボクに付いてくる。

一緒に部屋を出る。

「ざーど。ちょっち借りてくね。」

カチリ

扉を静かに閉め。ざーどの部屋からボクの部屋に向かう。

ボク達の気配が消えた頃。ざーどが静かに目を開く。

「さーてぃのやつ・・・。料理できね〜んだな。こりゃ・・・。」

全てお見通しだったらしい・・・。

一方。そんな事はつゆしらず。ボク達は作業を開始した。

といっても・・・。ボクが教えるレシピ通りべりあすがやってるだけ。

「はぁ・・・。もっとお勉強しなきゃだめだねぇ。」

べりあすの鮮やかな手つきをみながらちょっち自己嫌悪。

「さーてぃ?次はどうするの〜。」

「え?もうやっちゃったの?」

ってべりあすを見ると。きれいに飾り付けまでされて置かれてる。

「わぁ〜。おいしそぉだねぇ。」

ちょい味見してみる。

「うんっ。完璧っ。おいし〜★」

「まだ細かい味は良くわかんないですから。今のとこ。それくらいが限界なんですよ〜。」

「ううん。ぜんっぜん上出来だよぉ。

初めて作ったなんておもえないよぉ。

どうやったらこんな上手に出来ちゃうの〜?」

べりあすは少し考えると。

「長年の経験ってやつですよ〜。もう。かれこれ200年は生きてますし〜。

それに・・・好きこそ物の上手なれですよ?」

「う〜みゅ。好きだもんねぇ。べりあす。」

「でも・・・。どちらかと言えば。

私の作ったもので人が喜んでくれることが一番うれしいんですけど。」

「ふ〜ん。そんなもんなんだねぇ。」

「そんなものだと思いますよ?」

「さてっ。時間もないですし。次いきましょう〜。」

その頃・・・。ひーるの私室。

「ふーん。なかなか粋な事するわね。あの子も・・・」

「まぁ。あいつ。べりあす使ってるから料理は大丈夫だけどよぉ。」

「いまいち・・・この屋敷じゃ雰囲気でないわね・・・。」

「あぁ。それでおまえのとこにきたんだけどな。」

「なにか・・・いい考えあるの?」

「まぁ。一応な。あいつがそこまでしてはりきってんだし。黙って見てるわけにもいかねぇだろ?」

「そうね。うちの敷地ないだったら多少改造してもかまわないわよ?」

「そか。んじゃ。早速やってくるわ・・・。ありがとな。」

勢い良く部屋を飛び出すざーど。

それを見て・・・。

もう。すっかり骨抜きになっちゃったわね・・・。

でも・・・。

さーてぃには不思議な魅力を感じる・・・。時空魔法能力者ってだけじゃない。

なにかわからないけど・・・。

弟も明るくなった。不器用さは相変わらずだけど・・・

以前はこんなに人の事かんがえてなかったもの・・・。

あの方も見る目は持ってるのね・・・。

「さてと。みんな動いてるし。あたしだけなにもしないわけにもいかないよねっ。」

その頃。ジルバード家地下7階。

魔法陣の部屋・・・。別名。魔導研究所。

「うぃる?いるんでしょ?」

「あ。ひーらー。どしたの?」

あたしは肩をすくめてみせる。

不思議そうに見つめるうぃる。

「やっぱきいてなかったわね・・・。」

「ん?さーてぃがお正月やるんだよね?」

「あ。しってたの。」

「ふぃーるからきいたしね。」

「え・・・?でも。」

「ここの場所は知らなくても。専用線はもたせてるから・・・。」

「そう・・・。知ってるならいいわ。」

「それに・・・ちゃんと準備もしてるよ。もう少ししたらとどくんじゃないかな。

ちょっと大きい荷物だけどいいよねっ。」

「まぁ。別に大丈夫よ?」

「でも。不思議よね・・・。あの子の為だったら違和感無くみんな動いてるんだもの・・・。」

「ん〜。たんにかわいいからじゃない?母性本能くすぐるようなさ。」

「ん。それもあるかもしれないわね。」

「ま。そんな考えてても仕方ないと思うよ?」

「でも・・・」

あたしが言おうとしたその時。

ふぅっと魔法陣が淡い光を放ち出した。

「きたきた。お正月っていったらこれがないとねっ。」

魔法陣から現れたものを見て・・・

そのまま。あたしは言葉を失ってしまった・・・。

「・・・これ。室内用なの・・・?」

「ま。今の時代じゃ珍しいかもね。

でも・・・やっぱ8人用は大きかったね。特注品だし。」

「んじゃ。これさーてぃのとこ置きにいこっ。」

さーてぃの部屋・・・。

「わぁ。おコタだぁ。」

「おコタ?」

って何って僕に聞いてくるひーらー。

「えっとね。日本古来の暖房器具。結構新しい型をよこしてもらったんだけど。 どうかな?」

「うん。うんっ。すっごくうれしいよ〜。どうしたのぉ? 」

「あ。いや。ちょっとねっ。正月っていったらこたつとみかん。おそばとおせちだろ?

って事だよ。ひーらー。」

「ふぅ〜ん。日本の独特なスタイルな訳のね。にしても。よく調べたわね。 」

「まぁね。ざーどがいろいろ書庫でしらべてたから便乗しただけだよ。」

「あ・・・そういえばざーどはどこにいったのかしら? 」

「ここにいるぜ?」

「あれ?さっき外から声聞こえたよねぇ?」

窓を開けてみる。

そこには。全員が息を飲んだ程の景色が広がってた。

「日本庭園・・・なの?」

「・・・みたいだね。」

「豪勢だねぇ。」

「まぁ。ほとんど立体映像だけどよプロジェクター借りたぜ!うぃる。」

「あ。別にいいけど・・・。壊さないようにね。」

「さて。んじゃ。ふぃーる呼んでくるねぇ。」

後に残った二人はというと。

「・・・なかなかやることがおおきいね。」

「ええ・・・。わが弟っておもえないくらいよね。」

「これは・・・なかなか趣があって良いものですね。

さーてぃ様の生まれた地にはこのような美しい景観があるのですね。」

「うん。ここまで豪華な景色じゃないけどねぇ。

こーやって みんなでおこた入って。この重ねた箱・・・おせちって言うんだけど。

これをみんなで食べるものなのにゃ。それで一家団欒みたいな事するのがお正月なんだよぉ。

でも・・・みんなありがと。手伝ってくれて。」

「当たり前だろ?間違った正月ふぃーるに教える訳にいけねぇしよ。な?べりあす。」

「そんなこと・・・少しありますね〜?」

「うぅ〜。ごめん。」

一斉に笑う

来年もいい年になりますよぉに☆