ボクは受け取った・・・かつて あのひとが使っていた力・・・時空操作・・・。
あのひとはボクを守ってくれた・・・。ボクを守って・・・息絶えた・・・。
ボクは受け取った・・・あのひとの力を・・・。ボクの命と引き換えに・・・
・・・・・ボクのベッドのそばには目覚し時計・・・。後数分でボクを起こすべき時間を迎える・・・
静かな朝・・・。そして。その静寂の時間が破られる・・・。
チッチッチッ・・・・・・カチッ。
ジリリリリリッ。いきなりの大音響にボクは目を覚ます・・・。
そしてまた・・・安らかな寝息を立てる・・・。
とんとんとん・・・誰かが階段を昇ってくる・・・そして・・・。
ボクの部屋の扉が開かれる・・・
「っいいかげん起きんかいっ」
「うきゃぁ」
突然の訪問者に一気に目がさめる。
ボクの目に姉の姿が映る。
「うにゃぁ・・・おねーちゃん。おはよぉ」
「っおはよーじゃないわっ 今何時だと思ってるっ」
・・・・・がばっ。慌ててベッドから飛び起き・・・時間を・・・
「っにゃぁぁっ」
姉は肩をすくめる・・・。そして部屋を出て行く。
時間は8時45分・・・普通だったら完全に遅刻。
取りあえずいつもの日課をこなす。
半分の時間でシャワーを浴び半分の時間であさごはん。
それから制服に着替えて裏庭に出る
そこには一つの魔法陣
ボクは呪文の詠唱
・・・次の瞬間には学校の空き教室にとんで・・・
クラスルームに向かうはず・・・だった・・・
・・・真っ暗な闇。何も見えないし何も聞こえない。
ただ体が宙に舞うような感覚があるだけ・・・デジャブ?・・・
ボクはこの感覚に覚えがある・・・あの人の力をボクの命と引き換えに
受け継いだ時の感覚・・・時の迷宮と呼ばれる異空間。
時空の狭間に存在する死者の転生の場所・・・。
また・・・転生するんだ・・・。
不思議と心が落ち着いていく・・・怖いとかって感じない。逆に安心してる・・・。
転生する時って以前の記憶とか消されちゃうんだけど・・・思い出せちゃうんだね・・・
少しずつ意識がはっきりしてく・・・もうすぐ・・・あの場所・・・。
一瞬の閃光とともにボクは・・・気を失う・・
「やれやれ・・・この娘にはちと重荷かのぅ・・・」
その老人は呟いた。
・・・ここは時空の狭間・・・
通称・・・時の迷宮と呼ばれる場所。
ここには幾人もの時の旅人が迷い込む。
そして・・・別な時代に飛ぶ者もいれば迷宮内をさまよい現世に戻れない者もいる。
・・・とはいえ・・・
さまようことなど大した問題ではない・・・ここには時間が存在しないのだから・・・。
そしてこの迷宮の創造主であり案内人でもあるのがこの老人である・・・。
「さてさて・・・時を操る者としての力は身に付けておるようじゃが・・・
またここにもどってきたという事は・・・」
・・・うーむ・・・。
その老人はなにやら考えこんでいた・・・。
明らかに精神が脆くなっておる・・・。
やはりこの娘には・・・無理だというのじゃろうか・・・。
じゃが・・・これほどの純粋な力をもつ者はめったにおらん・・・。
ただ・・・能力としてひきだせぬだけじゃ・・・。ここはひとつ・・・あやつにまかせてみようかのぉ・・・。
そして。老人は羽織っていた長いローブを翻すと虚空に消えた・・・。
・・・。なるほど。あなたが認めるのならばこの子の潜在能力はたいしたもの・・・ですね。
老人の前には漆黒のローブの若い男がいる。
彼は・・・かつて。氷聖と呼ばれ おそれられた 魔導師でありかつての時の管理者でもある。
・・・が。今はほとんどの力を失い片田舎で静かに暮らす生活をしている。
老人とは師弟関係であり下界に降り立ったいまもこうして足を運んでいるわけだ。
・・・もっとも・・・。
今回はこの老人に呼ばれて来たのだが・・・。
「で・・・。この子を私が預かればよいのですね?
ただ・・・私も大半の力を失った身。
あなたが望むほどの結果が出せるとは・・・。」
「・・・じゃが。やってみねばわからんもんじゃ。
どうじゃな?」
まるで何かを見透かれたように話す老人に彼は首を縦にふるしかなかった。
そしてボクをつれ下界に降り立った。