中国山地は良質の砂鉄と豊富な森林資源に恵まれていたことから、
古来から『たたら製鉄』の盛んな地帯でした。
最盛期だった江戸時代後期には国内生産量の約80%を占めていたといわれています。
これら、たたら製鉄関係者の信仰を集めていたのが製鉄・鍛冶を司る女神『金屋子神』でした。
伝承によると、金屋子神は播磨国志相郡岩鍋(現在の兵庫県宍粟郡千種町)に降り立ち
住民に技術を伝えましたが、やがて土地を離れ
出雲国能義郡比田村黒田(島根県広瀬町)に落ち着いたとされています。
日本に製鉄技術を伝えた渡来人が都のある近畿地方から良質の砂鉄を求めて西へ移動していた様子を彷彿とさせる伝承といえます。
この金屋子神を祀る総本山的存在の神社が島根県広瀬町の金屋子(かなやご)神社です。
本殿(県有形文化財)は銅板葺の大社造
総ケヤキ造りで建てられている例は珍しいそうです。
元治元年(1864)建立
境内や参道には『ケラ(金偏に母と書きます)』と呼ばれる鋼を含んだ塊が奉納されていました。
この辺の土地では大きいものでは直径2〜3mのケラが畑などから出土するらしいです。
神社のすぐ隣には広瀬町立金屋子神話民俗館があり、
たたら製鉄と金屋子神について学習することが出来ます。
この広瀬町を含む周辺6市町村では「たたら・和鋼・和鉄」をキーワードにした『鉄の道文化圏』という
プロジェクトを展開していて、各市町村にある資料館が連携して資料公開展示を行なっているとのこと。
興味のある方は是非どうぞ。