熊野大社・亀太夫神事
(島根県八雲村)
秋は実りの季節。
各地で収穫を祝う祭が行なわれています。
今回は熊野大社の伝統的神事である『亀太夫神事』を見学してきましたので、ご紹介したいと思います。
熊野大社は杵築大社(出雲大社)と並んで出雲地方の代表的な神社として古くから信仰を集めてきました。
主な祭神は『スサノオノミコト』『イナダヒメ』『イザナミノミコト』で、
それぞれを祭った社が3つ並んで鎮座しています。
さて、ここの境内には他の神社では見られない変わった建物があります。
それが『鑽火殿(さんかでん)』です。
本殿の脇の方にある、この萱葺きの建物の中には、
『燧(ひぎり)臼・燧杵』と呼ばれる火を起こす道具が納められています。
この燧臼と燧杵は出雲大社で行なわれる『古代新嘗祭』の際に使われるのですが、
祭に先だって、毎年出雲大社の宮司(出雲国造)が熊野大社へ受け取りに参詣します。
この受け渡しの儀式が鑽火祭・亀太夫神事と呼ばれています。
今年は、神事が行なわれる10月15日が休みだったので、すごく楽しみにしていました。
始まるのは朝の10時。
家から松江まで160Kmくらいだから大体3時間半あれば行けるかな〜と計画とたてて、当日は6時半に出発。
国道54号線を順調に北上して行ったんですが、あちこちで渋滞につかまり、県境を越えたのがすでに9時・・・
『あと60km以上あるのに・・・ぜったい間に合わない〜(汗)』
結局、20分遅刻して到着しました。
境内に入ると、出雲大社からの使者が『お清め』(?)を受けているところでした。
やがて、使者が門をくぐって拝殿へと入っていきます。
拝殿には地元の氏子の人たちがぎっしり並んで座っていました。
やがて、使者が持ってきた箱から白く長細い箱を取りだし机に置きました。
見にくい写真で申し訳ないです(汗)
左側の人が熊野大社の神職さんのようです。
遠くからだったので、良く聞こえませんでしたが、熊野大社の人が使者に向かって挨拶を述べていました。
どんなことを云ってるのかなと、耳をすましてみると・・・
『・・・・・・本当に約束できるか!?』とまるで使者を叱っているような口調。
この神事では出雲大社が燧臼・燧杵を受け取る代わりに『餅』を奉納するのですが、
その時に熊野大社が『今年の餅の出来は悪い!』などとケチを付けるのが慣わしとのことでした。
ケチを付ける口上は形式的なものではなく、どうやら毎年考えて変えられているようです。
お叱りの口上が終わると、使者は本殿から燧臼・燧杵を受け取り、鑽火殿へ移動しました。
これで終了したのかなと思って、しばらくぼーっとしていると、社務所の方から黒い装束の人が出てきました。
どうやら出雲国造のようです。
先ほどの使者と同じように、お清めをしてから拝殿へと入っていきました。
祭壇を前にして『百番の舞』を奉納する出雲国造。
舞いの最中には脇の方で木の箱を棒でたたいてリズムを取りながら歌を歌っていたのですが、
単調なリズム、何度も繰り返される歌詞を10分くらいぼーっと聞いていると、不思議な感覚にとらわれました(笑)
トランス状態へ引きこむ要素があるんでしょうか。
舞いが終了すると、出雲国造は拝殿から退出し、神事は終了しました。
その後、恒例の餅まきが行なわれました。
ブレまくりの写真で済みません(汗)
よそ者の自分が戴いても良いのかな?と少しためらわれましたが、
記念にということで、一つ戴いて帰りました。
ということで、熊野大社の鑽火祭・亀太夫神事でした。
平日なのに、地元の氏子の人たちが大勢集まっていらっしゃっており、
この神社が地域に大切にされているんだなと実感しました。
文化財保護というと建物や仏像など、『ハード』的なものを思い浮かべがちですが、
それとともに、祭礼や神事・伝統行事といった形の無い『ソフト』的なものの保護も重要だと思います。
こういった伝統の祭を後世まで伝えたいものですね。
熊野大社のHPはこちらです・・・http://www.kumanotaisha.or.jp/
今回の鑽火祭・亀太夫神事などの年中行事や歴史について詳しく紹介されています。
興味のある方はどうぞ。