あなたは鯛の「フカセ釣」を知っていますか!

  「エビで鯛を釣る」 と言う諺がありますが、最近の鯛釣りはオキアミを使ったコマセ釣りが主流になっており

釣りをしない人には、エビで鯛が釣れることを知らない方もいるほどです。

  フカセ釣は、今では傍流になってしまった、エビ餌で鯛を釣る釣法の一つです。

 基本的な釣り方は、針に刺したエビを潮の流れに乗せて自然に泳いでいるかのように、鯛がいる棚に仕掛けを流します。

  仕掛けは胴突き仕掛けと同じような仕組みですが、地域(広島県山口県)と釣師により多少異なります。

山口県では潮の流れが速いので、主に20〜50号位の錘を使用する為に、(下図右)錘糸を長くしています。

広島県では0〜4号位を使用するので、錘の為の糸は付いていません。

 

 図ではエダスの数が三本と四本になっていますが、実際には広島で三〜五本、山口で四〜七本と地域と

釣り師により違いがあります。

また、餌のエビの刺し方も広島では頭に針を刺し、山口では頭掛けと尻掛けどちらも行われています。

この釣は山口県では、大畠、上関、平群島などの地が有名で、 広島県では倉橋町で行われています。

 

  私、日美丸は倉橋町で釣り船と漁を行っている漁船です。

 上述の説明では、広島と山口の仕掛けの違いを簡単に書きましたが、私、山口の釣り方は詳しく解らないので

 これからは、広島(=倉橋)の釣り方をメインに説明したいと思います。

  どんな釣りにでもシーズンがあるようにフカセ釣にもシーズンがあります。ただ山口と倉橋では時期が少し異なります。倉橋では四月半ばから六月半ばにかけてのフカセと十月頃の小フカセとがありますが、近年では小フカセは行われていません。いろいろな事情から、鯛が釣れなくなったからです。

  釣りをするポイントは倉橋島と山口県柱島の間にある西五番灯台付近に点在する岩礁です。

  早い人では四月の半ば頃からフカセを始め、鯛の顔を見た(釣り上げた)と伝われば、他の漁師も次々に船を出していきます。 

   倉橋のフカセ釣は期間が短い上にボウズも当たり前なのに、今までほそぼそと続けられているのは4s以上の大物が暴釣する事があるのと、熱心な愛好家がいるおかげです。

   フカセ釣は、釣り方に特徴があります。

まず、ポイントに着いたら潮の干満を考慮して根磯の潮上側に、船の左舷が潮上になるように二本の錨で船を留め(これをカガリつけと言う)、右舷から仕掛けを潮に乗せるように流していきます。よく釣れるポイントでは七〜八艘が弧を描くように船を舫って釣りをしているので、船の集まり具合でどのポイントが今、よく釣れているかがすぐに判ります。

図に描いているように、倉橋では三号ぐらいまでの錘をつかって、魚のいる棚を針が通過するように仕掛けを送り込みますが、その日その時の潮により流れが違うので経験と前日の釣果を参考に錘を決め、何度か仕掛けを流し、アタリが無ければ釣れるまでいろいろと錘を変えてゆき、周りの誰かが釣り上げればその人と同じ錘に合わせて釣ります。

三号ぐらいの錘は磯釣師には、軽いとは思え無いかも知れませんが、鯛釣のポイントはほとんどの場所が水深40〜50メートルあるうえに潮流があるので、棚を合わせるのは容易ではありません。

船をカガリつけると船頭はまず、活きた海老をまき餌として適量まき、海老の泳ぎ(逃げ潜る)具合を見て潮を読み、釣り始めの錘を決めます。わずかゼロ〜十数グラムの違いしかない錘の差ですが、この釣では釣果に大きな差が出るので大変気を使います。

軽い錘を使うので、この釣りに慣れない人から、仕掛けが底に届いていないと鯛は釣れないのではと思い、底取りの確認を求められますが、そんな人には始めに重たい錘で底を取り、仕掛けが流れている以上は、それよりは長く道糸を出さなければ底に届かないと、助言をしています。

しかし、この釣りの本質は付け餌が自然に泳いでいるようにする事と、撒き餌と付け餌が同調しながら鯛のいる棚に届くようにする事なので、必ずしも底取りに拘る必要は無いと思います。事実、時には五本の針に餌を付けて道糸を数メートル出した所で(海底から数十メートル上)70センチオーバーの鯛が釣れた事もありました。

釣り全般に共通することですが、大事なのは魚の居る棚を早く見つけて、仕掛けをそこに確実に投入することです。その為に先に釣り上げた人に錘と釣ったときの道糸の長さを聞き、錘を合わせその長さの近くから特に神経を尖らせて魚信をとり、それが無ければもう少し道糸を延ばし、それでも魚が釣れない時は仕掛けを手繰り上げて、餌を付け直して投入します。これを手返しと言いますが、これをこまめに繰り返すことが好釣果を得る近道だと思います。

アタリがあるとアワセを入れますが、仕掛けに糸ふけがあるからなるべく大きくアワセる様にし、針がかりを確実にするため追いアワセのつもりで、2、3回大きく素早く仕掛けを手繰り寄せないと、針がかりしないか、途中で逃げられることになります。

アタリは大きく分けて二種類あり、一つはモタレ喰いと言い、潮に乗せている仕掛けが流れなくなったり、道糸に何かが持たれかかった様に重みを感じたりするアタリです。もう一つはひったくる様なアタリで、このアタリは鯛の大きさにより強さに違いがあり、70オーバーになると「ガッツウン」とか「ゴッツウン」といった衝撃を感じます。

アワセを入れ、手元に伝わる感触の違いで針にかかった鯛の大きさを読み、ハリスが切れないように糸を手繰ります。切れないようにとは、自分の手の感触でリールのドラグの役割をして糸を弛めたり手繰ったりする事で、このやりとりを見るだけでその人のフカセの技量がだいたい判ります。

それでも自然相手だからハリス切れとかフックアウトして逃がす事もあるけれど、気を付けなければならないのは逃げた鯛に付いて周りの鯛も散逸してしまう虞があるから、取り込みはくれぐれも慎重にしたいものだ。もっての外なのが、せっかく釣れた大物を逃がすまいと道糸を手に巻きつけてドラグ機能をなさずにハリス切れしてしまう事で、初心者によく見られます。

 

仕掛けは先に図で簡単に説明していますが、私がベターだと思うシステムを参考として紹介します。

まず、道糸は8号〜12号までを使用する、道糸にはPE、フフロロカーボン、ナイロン単糸とナイロン編糸があるけれど、フカセに関してはナイロンの単糸が良いようです。他の糸は伸びが少ないから微妙なアタリを取るには良いが、大物がきた時に伸びが無い故にアワセ切れする事がよくあるし、PEは軽いからラインが沈みにくいため棚取りが難しく、もつれ易く滑るから手を切ることがある。フロロは糸癖がつきやすいから縺れやすい、編糸は滑るから大物がかかった時に摩擦で火傷をすることがある。これから鯛のフカセを始めようと思われる方にはナイロン単糸の10号をお奨めします。

多くの人が道糸に6号〜8号の無色の先糸を付けています。長さは三〜六ヒロとり結節は必ずサルカンを使用し、サイズは極力小さくて十分な強度のあるものを選んで下さい。

 先糸に三又サルカンを結び幹糸とエダスを結びます。幹糸5号、エダス4号を使用していますが、この釣ではハリスの太さによる釣果の差はあまり無いようなので、幹6号、枝6号を使用している漁師もいます。推奨は5号のハリスを使って幹糸とエダスにすると無難だと思います。材質はナイロン、フロロカーボンどちらでもかまわないけど気を付けなければならないのは、材質の違う物を組み合わさないことです。糸ヨレの原因になりますから。

 エダスは人により3〜5本と違いがありますが4本が基本です。

 針は鯛針の9から12号を使いますが、大きなチヌ針を使う人もいます。ただ倉橋では鰤類などの大物青物は滅多に釣れないから、餌の活きエビの負担を考慮してあまり軸の太いものは使用しない方が良いと思います。一般に鯛針として売られている物には、胴の長い丸型と短い角型がありますが、エビの負担を少なくする上で同じ号数の針ならば角型にした方が良いでしょう。ちなみに私は金龍の角カムロ10〜11号を使っています。

結びは内掛けまたは、外掛け結びを基本にして二重に結ぶ人とそうでない人がいます。でも最近のハリスは質が良くなっているから5号6号を使うときは二重結びをしなくても良いと思います。私は普段4号ハリスを使っていますが、針は一重にしています。その代わりに魚が釣れる度に結び替えるように心がけています。それと、忙しく釣れている時や、楽をしたいときは漁師結びでまにあわせています。この結びでも鯛を釣る程度には問題ない強度があると思います。