そいつは、ホンットーにサイアクだった。
 

 まさに、悠久幻想曲の開発の人間全部を敵に回すかのように。
 

 しかたあるまい。なんといっても、そいつは「史上最強」なのだから。
 

 ただし……たったひとりには徹底的に弱いが。
 



 

史上最強サイアク存在ヤロー伝説
 

1.スタートラインがゴールライン
 



 

「……ん?」
 

 俺はムクリと起きあがった。なにかが俺の部屋に侵入しようとしている。

       ぬしとこう
 俺の名前は「主人 公」。主に「公」と呼ばれている。
 

 とある事情でこの世界を旅している。

      ぽかやって
 少し前に「油断」して、ここ、エンフィールドの何でも屋「ジョートショップ」の世話になった。

              ばけもの
 俺は「恩を仇で返す」ような「人間」ではないので、世話になったお礼にここの手伝いをしている。
 

 最近では俺の方がここが気に入って、「この街にいるのも、悪くはないかな。」などと思うようになってきている。

          おおばかもの
 まあ、それはともかく侵入者だ。
 

 まだそこには誰もいないようだ。だが、俺はそこに何かが「出てくる」のがわかる。

       じっとみている
 しはしそこを凝視していると、突然人影が現れた。
 



 

「誰だお前は。」
 

 そう声をかけると、その人影はビクリとすくみ上がった。
 

 よくよく見ると、なかなかにイカれた格好をしているらしい。それと脇になにか大きな板のようなものを抱えている。

  くらやみをみとおすちから
 “どうも“暗視能力”は完全じゃないようだ。今度鍛えておくか。”
 

 心の中でそんなことを思っていると、突然侵入者が叫んだ。
 

「そ、そんな馬鹿な!! おまえは寝ているはずだ!!」

              むだんではいった
 声からして男らしい。しかし、不法侵入者の分際で、よくもまあいい態度だ。
 

「なんか、俺が『寝ている』と断言しているようだな。貴様は誰だ? 何の目的で俺の部屋に入ってきた?

                           むりやり
 そして、その脇に抱えたものは何だ? 場合によっては、強制的に聞き出すが。」
 

 脅しでも宥めでもなく、淡々とセリフを述べる俺。“なんて決まっているんだろう”と自分で思ってしまう。
 

 だが、観客が目の前の
 

「変態。」
 

では空しいが。
 

「てめえっ!! 誰が変態だ!!」
 

 どうやら口に出してしまったようだ。
 

「ふん、そのことはいいとして、だ。お前の質問だがな、お前に答える義理はないよ、ひゃーっはははは!!」

        とっととおちろ
「そうか。じゃあ“飛び降りろ”。」
 

 そう返答した“変態”に向かって、公は“言葉”を紡いだ。
 

 瞬間、そいつの姿はかき消え、板のようなものが残った。

          そんなに
 まあ、チェックには30秒もかからないだろう。そう思って、板を覆っていた布を取り外してみる。(5秒)
 

「……これ、美術品じゃないか? しかも大戦前の絵だ。(2秒)
 

 それに、どこかで見たことが……。」(4秒)
 

 少し思い出してみる。(3秒)
 

「そうだ!! フェニックス美術館にこの絵が展示されてるってポスターがあったな!!(4秒)
 

 てことは、この絵はあそこのものらしい。こりゃやばいかな?(3秒)
 

 たしか、大戦前の美術品って、ものすごく希少なはずだ。それがここにある=盗難=それがここにある=犯人=逮捕=裁判=良くて追放、悪ければ終身刑だ。(6秒)

    ぶっころし
 こりゃ、半殺し確定だな。(2秒)
 

 っと、”まずい”!!(1秒)」
 

 その“言葉”を媒介にして、俺は部屋から消えた。


 その数分前。

        こうたい
「ふう、そろそろ引き継ぎの時間だな。」
 

 そう言いながら夜もかなりふけた街を巡回しているのは、皆様ご存じの変態化粧魔人、アルベルト・コーレイン。
 

「てめえっ!! 誰が変態だっ!!」
 

 お前だお前。男の分際で化粧に入れ込むなんざ、仕事でやらない限り、変態以外の何者でもない。
 
                              ワンパターン
 それとさっきのヤツとおんなじセリフで突っ込むんじゃねーよ、犬の卒倒馬鹿。
 

「きっさまあっ!! ぶっ飛ばしてやるから出てきやがれ!!」
 

 やだプー。それより話を進めるぞ。
 

「あ……あとで殺す。」
 

 で、アルベルトは自警団詰め所へ帰る前に、ジョートショップを通ることにした。

         らぶらぶ
 理由としては、彼が懸想しているアリサ・アスティアが心配なことと、最近彼女にまとわりついた(と、アルベルトは思っている)主人 公の監視がある。

             みはり                          てんてき
 特に、アルベルトとしては監視の方を重要視している。なんといっても、彼にとっては公は害虫以外の何者でもないからだ。
 

 そう言う説明をしている間に、ジョートショップに近付いてきた。
 

「さて。」
 

 軽く周りを見回すアルベルト。とりあえず何もないことを確認する。
 

「絶対ヤツには何かがあるんだ。いつかシッポをつかんでやる。」
 

 そう言って詰め所に向かうアルベルトであった。

  ちょっと                             いくらか
 もう数分遅く来ていたら、また、ジョートショップの屋根の上、はるか上空を数秒眺めていれば、その“シッポ”をつかんでいたであろう。
 

 そう言う意味では、コイツは不幸であった。
 



 

 アルベルトが去った直後。
 

 公が突然屋根の上に音もなく現れた。

               テレポート
 第三者がこれを見ていれば、「瞬間移動」という言い方しかできないだろう。
 

「30秒経ったから、そろそろ来るはず……。」
 

と言って、屋根から空を見上げる。
 

 そこには光り輝く星々が数多に見える。その星空の中に、異質な赤いきらめきを認めた公は、それに向かって両手を突き出し、
 

「“止まれ”!!」
 

と言い放った。
 

 赤い影は公の前でその速度を一瞬にして0にされた。それによるすさまじい衝撃で、今や黒く見える影は何らかの言語をつぶやくのが精一杯だった。。

 貴…… 貴 様 一 体 な ……何者だ?
「x……Oienanndizo……SEo?」
 
                        むちゃくちゃ      むしのいき
 その影は、先ほど公の部屋に出現した奴だった。全身がボロボロになり、息も絶え絶えになっている。

 その言葉を理解しているのかいないのか、

       おんそくいっぽてまえ
「どうだったかな? 亜音速落下の旅は。上空約5000メートルから一気に強制的に加速をつけたんだ。死なないだけ儲けもんだったんだが。
 

 意外と丈夫だな、お前は。」

                  ききうで
 公はそう言うと、ボロボロになった男の左腕を取り……一気にへし折った!!
 

ぼぎいっ!!
 

「があああっ!!」
 

 激痛のあまり、屋根の上を転がり回る男。その顔には、「そんなはずはない!」と、信じがたいものを見た表情が張り付いている。

                             ジョートショップ
「言い忘れたがな、さっきの“言葉”で声はこの屋根の外はおろか、建物の中にも届かないからな。もちろん姿も見えない。さてと……。」
 

 公はそう言いつつ、ゆっくりと屋根にへばりつく男に近寄り、ぼそぼそと話しかけた。
 

「これからてめえにいくつか聞く。もし答えなかったら指という指をゆっくりと全部折る。次は腕か足。

      あまりにつまらんこたえ
 そして、返答が満足のいかないものだった場合、または嘘を感じれば、全身の骨を粉々になるまで砕く。もちろん途中で気絶しないように、な。」

                     うらじんかく
 そのセリフを聞いて、男は怯えた。自分が公の闇の存在であるということを完全に忘れて。
 

“こいつは俺じゃない!! 俺はこいつじゃない!! こんな……こんな“恐怖”を呼ぶやつが、俺であるはずはない!!”
 

「さて、ますはお前の名は?」
 

 公は最初の質問を言い放った。

       さいしゅうてきなけっかはおなじ
 どちらにせよ、全身の骨はへし折ってやる、という考えはおくびにも出さずに。
 



 

 翌日。
 

「この日、2つの事件が発生した。
 

 1つ目はショート科学研究所の爆発事故。

       ごくひのじっけん
 この事故により、ある研究が完全に白紙となったが、そのことは一部の研究員しか知らない。
 

 2つ目はハメット・ヴァロリーがクラウド医院にかつぎ込まれたこと。

       アンブッシュ        むりやり
 明け方に何者かの襲撃を受け、全身の関節を逆方向にねじ曲げられて生死の境をさまよっていた。

                おそったやつ
 そこで疑問になるのは、ハメットが襲撃者について何一つ説明しなかったことが上げられる。

                                                         ふるえていた
 奇跡的に意識を取り戻したハメット曰く、「知りませんでございます、存じませんでございますうううっ!!」とすさまじく怯えを見せたことを記録しておく。
 

 記録者:第3部隊隊員 ウェイン・グローリー
 

 記録時間;夕方」
 

 この日、自警団の記録には、そう残っている。
 



 

 そのような記録を未来の第3部隊隊長であるウェインが書いているその頃、公はさくら亭にいた。
 

 ちなみに、フェニックス美術館の絵はすでにもとの所に戻してある。

        ぬすまれた
 警備の人間は、盗難されたことすら気づいてはいないだろう。
 

「ほれ、アリサさんに頼まれたピザの詰め合わせ。確かに届けたぜ。」

              いれもの
 そう言って、公は手にしたバスケットをカウンターにいるリサ・メッカーノに渡した。
 

「はい、ご苦労さん。……おおっと、さすがにアリサさんだ。これはおいしいねぇ。」
 

 言うが早いがすぐにぴざにかじりつくリサ。公はあきれてこう言った。
 

「それにしてもいきなり3枚重ねで食うか、お前は。」
 

「いいじゃないの、人の食べ方に文句言わないの。」
 

 そう言ったのはリサではない。

                        さくら亭の看板娘
 いつのまにか厨房からカウンター席の方に出ていたパティ・ソールだ。
 

「ふつう、アリサさんの作ったものをこうやって食べるか? ばちが当たりそうなんだが。」
 

「あんたのように、“サンドイッチの大盛り”とか言って1個ずつ丸飲みするよりはましよ。」
 

 そういいつつも、毎回毎回普通のサンドイッチよりも倍の数を作るあたり、パティも素直ではない。
 

「まったく、このハウスコンプレックスは……。」
 

 すさまじくまずいことを言う公。リサは即座にバスケットを持って階段へと向かう。
 

「なんですってーーー!!」
 
 
 

       こわれたもの
 直後のさくら亭の損害 いす1脚。

ぶっとばされたひと                    あっさりなおった
   人的被害  主人公  診療時点で全治4ヶ月の重傷。ただし3日で完治。
 




 あーあ。自分の妄想を書いてしまった。

 どーも、naoです。このたびはこのSSをご覧頂き、まことにありがとうございます。

 しかし、いきなりファーストイベントを崩壊させてしまってますね。まあ、これくらいサイキョーだということを認識させるには十分ではないかと。

 主人公については、今後もいろいろな意味でサイアクにしていくつもりです。でもパティには弱い(核爆)。

 それでは、次の作品で。