記帳者:主人公(2)
9月26日
雨
今日は、ちょっと気分的にダメージが大きかったな。
巡回中に、トリーシャがやってきて、
「明日はボクの誕生日なんだ!」
と言ってきた。
それだけならまだよかったんだが、そこにいきなり、
「だから、ローレライの新作の洋服買って!」
って言われてしまった。
そこで思わず、
「悪いがそんなもの買ったら飢え死にする」
って本音を言ってしまった。
その後、トリーシャが哀れむような目で俺を見たのを、俺は忘れないかもしれない。
そんなふうに雨の中で話し込んだせいか、ちょっとばかり肌寒い。
早いところ寝ることにしようか。
9月27日
晴れ
カゼ、ひいた。
あたまいたい、のどもいたい、熱もある。
トリーシャ、ごめん。
9月28日
晴れ
昨日はトリーシャの誕生日だった……が、カゼでダウンして行くことができなかった。
薄情にも誰も見舞いに来なかった。
ただし、今日はトリーシャが見舞いに来てくれた。
なんか、今日はトリーシャが色々やってくれたな。
たとえば――洗濯。
男の下着を洗おうってことに気づいて、慌てて止めようとしたけど、あっさり撃墜された。
よく考えたら、リカルド隊長の下着とかもトリーシャが洗ってるはずだから、別に大丈夫なんだろうが……。
やっぱり、男としては恥ずかしいものがあるぞ。
他には――掃除だな。
あれは、ちょっと失敗したな。我ながらかなりあせっていたな。
あの写真、なんかトリーシャに似ているから買ってしまったんだが……。
トリーシャには気づかれなかったかな?
そういや、もう一つあったな。
食事の支度、というか炊事だな。
ホント、俺って貧乏だよなぁ。あんなはした金しか渡せないってのは、見栄のみの字もないよな。
それでも、結構いい料理を作ってくれたのには驚いたな。色々回ってくれたのかな?
それほどまでに想われてるとは思わなかったな。
まだまだだな、俺も。
に、してもだ。
トリーシャのエプロン姿、何というか、可愛かったな。
思わず後ろからこう、ぎゅーっと。
それはともかく。
けっこう精力のつきそうな料理だったな。
どうやら、トリーシャも料理を並べてからそのことに気づいたようだけど、
とりあえず気づかない振りをして、
「おいしかったよ」
と言っておくことにした。
とたんに機嫌がよくなったんだから、現金なものだ。
しかし、普通自分の分も作るものかね。
そして、食事のあと。
――うーん、ああいう食事だと、やっぱりああなるのかもな。
なんというか、トリーシャもけっこう淫乱いや、それはないかな。
でも、思わず出てしまったな、あの一言。
「なんか、新婚家庭みたいだったな、今日は。」
こうして書くと、かなり恥ずかしいこと言ってしまったな。
とりあえず、今日はこんなところかな。
さあ、明日はどんな騒動が起こるかな。
−トリーシャ・フォスターの寝顔を見ながら−
後日談
9月28日のことは、パティとローラによって(結果的に)思いっきり大々的にエンフィールド中に広まった。
さらに「新婚○○」の食い違いがあったので、主人公(2)はあやうくリカルドに殺されかけたとさ。