「女性の高脂血症」
広島鉄道病院 第二内科
高田 耕基 先生
講義の前の基礎知識
高脂血症:血液中の脂質が異常に多い状態を高脂血症という。
脂質:コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド:TG)、リン脂質、脂肪酸
HDLコレステロール(高比重、善玉):血管壁のコレステロールを肝臓に持って帰る。
LDLコレステロール(低比重、悪玉):血管壁に蓄積して動脈硬化を進展させる。
正常値:総コレステロール200mg/dl未満 LDL 120mg/dl未満
高コレステロール血症:総コレステロール220mg/dl以上 LDL 140mg/dl以上
高脂血症⇒動脈硬化⇒狭心症・心筋梗塞 脳血栓・脳梗塞⇒死亡
乳がんは年々増加している。
乳癌の危険因子:高脂肪、高カロリー、肥満、野菜不足、アルコール、家族歴、
良性乳腺疾患の既往、授乳経験なし、運動不足、ストレス
女性ホルモン(エストロゲン)の作用:TG ↑、HDL ↑、 LDL ↓、血栓症誘発、
血管拡張作用、痴呆症予防
更年期に対するホルモン補充療法の副作用として乳がん、子宮内膜症が増加している。
大腸がん、骨粗しょう症は減るが、5年以上ホルモン補充療法をするとよくない。
女性は閉経期にエストロゲン減少のためLDLが増加する。
注:乳がん治療薬のホルモン剤は抗エストロゲン作用をもつので閉経期と同じ状態
になっている。つまりLDLが増加しやすい。だから高脂血症になりやすい。
女性の高脂血症の増加
この10年間高脂血症が増加し、検診で女性の60%に高脂血症が認められた。
1990年にはアメリカの女性と同程度の高脂血症が発生している。
原因は食生活の変化:総カロリーの増加、特に脂肪の増加(25%以上は危険)
コレステロールが350mg/dl以上になると死亡率が3倍になる。
動脈硬化とは 血管内に脂肪の塊のプラークが詰まっている状態。
血管内超音波で確認できる。
動脈硬化の危険因子:糖尿病、低HDL、高LDL、高TG 加齢
頚動脈エコー:動脈硬化測定のための血管内超音波機器
総頚動脈の壁の厚さが1.0cm以上は要注意。
LDLが高いと厚く、治療してLDLが低くなると薄くなる。
(現在広島鉄道病院で測定可能、要予約)
動脈硬化になる前に治療をすること。
心筋梗塞、脳梗塞になってから発見されたのでは遅い(実例にて説明)
動脈硬化⇒狭心症・心筋梗塞 脳血栓・脳梗塞⇒死亡
心筋梗塞の危険率はタバコ、糖尿病、高血圧で増加する。
高脂血症の治療
治療目標:LDLコレステロールを100-140mg/dlにする。
食事療法:総カロリーの調節 標準体重×25Kcal
脂肪摂取量と質:脂肪を総カロリーの20%以下にする。αリノレン酸を増やす。
青魚、オリーブ油がいい。サラダ油は酸化すると良くない。
コレステロール量を250-300mg/日までとする。卵、小魚(特に子持ち)に注意。
食物繊維をしっかり摂る。
ビタミンE、カロチノイド(ビタミンA)を摂取する。
アルコールを控える。 塩分を控える。
生活上の注意:タバコはすわない。ストレスを避ける。
運動療法:肥満防止:体重減少すると総コレステロール、LDL、TGが減少する。
エアロビを30分間、三回/週。4週以上続けると効果が現れる。
ウォーキングは20-30分間する。食後30分以上経ってからすること。
薬物療法:食事療法、運動療法をしても改善しないときは薬物療法が必要になる。
現在多種の薬剤が開発されている。
*リポバス、メバロチン、ローコール、リピトール
*クエストラン、コレバイン
*ロレルコ、シンレスタール
*ベザフィブラート、フェノフィブラート
(高田先生のご講演を浜中がわかりやすくまとめさせていただきました。)
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