のぞみの会-講演会・勉強会
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合同講演会 2003.07.20
「乳がん治療の変遷」

北九州総合病院院長 広島大学名誉教授
西亀 正之 先生

1)乳がんの危険因子
 @ 年齢が40歳以上であること
 A 未婚(30歳以上)であること
 B 既婚、未婚を問わず初産年齢が30歳以上であること
 C 閉経年齢が55歳以上であること
 D 標準体重よりプラス20パーセント以上の肥満であること
 E 良性の乳腺疾患になったことがあること
 F 乳ガンになったことがあること
 G 家族に乳ガンになった人がいること

2)乳房の局所症状
 @ 乳房にふれるとしこりがある(腫瘤の触知)
 A 乳房の皮膚に変化がある
  ・ えくぼのようなへこみがある(萎縮陥凹)
  ・ 腫れがある(浮腫)
  ・ 部分的に赤みをおびている(発赤)
  ・ 皮膚がくずれて潰瘍ができている(潰瘍形成)
 B 乳頭に変化がある
  ・ へこみやかたよりがある(陥凹、偏位)
  ・ ただれがある(びらん)
  ・ 妊娠・授乳期でないのに分泌物がでる(異常分泌)

3)診断 自己検診・集団検診
  マンモグラフィの導入: マンモグラフィによって非触知乳がんの発見が可能
  読影医の養成:試験 によってA・B・Cのランク付けをする
  超音波検査(エコー):マンモで発見されない腫瘍でもエコーで発見されうる

4)乳がんの手術方法:この20年の間に大きく変化した。
 @定型的乳房切除術:乳房組織をその周囲を含めて筋肉も、腋のリンパ節も一塊として、最大限切除する。日本乳がん学会の資料によれば、1980年の乳がん手術患者の50%の症例にこの定型的乳房切除術が施行されていた。当時の患者さんは胸の筋肉もそぎ取られて肋骨が浮き出た状態に甘んじなければならなかった。

 A 非定型的乳房切除: 1987年には筋肉を残し乳房のみを切除する非定型的乳房切除術が定型的乳房切除術にとってかわり、次第に乳がん手術の主流となった。

 B 乳房温存手術:現在では乳房を出来るだけ残してほしいという女性の切実な思いと、患者のQOL(生活の質)を考慮して、乳房の一部のみを切除する乳房温存手術が次第に増えて来ている。今やその40%を占めるようになった。

 先生は20年前の手術例の、一方の胸がえぐられた手術痕を示して、「医者は命を救うことを最優先して考え、その時々で常に最善の治療法は何かを検討しています。当時はこの手術法(定型的乳房切除術)が最もいいと信じて行ってきました。しかし今となっては慙愧の念に耐えない思いです。それでもこの患者さんは、先生に手術をしてもらったおかげで、今も元気に生きておれますと言ってくれました。」と述懐された。

5)乳がんのステージによる予後(腫瘍の大きさ・リンパ節転移の有無が関与)
  0期:10年生存率 100%
  1期:10年生存率 94.1%
  2期:10年生存率 79.6%
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