のぞみの会-講演会・勉強会
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講演会 2001.07.28 広島
「乳癌治療の現況」

広島大学 原医研外科
大崎 昭彦 先生

1)乳癌は増加している。 その原因は

 食生活の変化(洋風化)
  →脂肪の増加
  →エストロゲンの増加
  →乳腺への過剰刺激

 ライフスタイルの変化
  早い初潮、遅い閉経、高齢出産、未産、独身
  →女性ホルモン(エストロゲン)の活動期間が長い

乳癌になりやすい人
 40才以上、肥満、未婚、高齢出産、未産、遅い閉経(55 才↑)乳癌の家族歴、
 乳腺疾患の既往、乳癌の既往。 

2)乳癌の術後と外来通院

 A)乳癌手術の動向(1980年→1997年)
  定型的手術(筋肉も切除)(50% →3.2%)
  非定型的(乳房のみ切除)(22%→61%)
  温存手術(0.1% →29%)

 B)再発時期(再発した人の内)
  1年以内:30.8%
  2年以内:55%
  5年以内:80.9%
  10年以内:94% 

 C)再発部位(症状)
  骨(背腰の痛み)
  肺・胸膜(咳、息切れ)
  領域リンパ節(首のぐりぐり)
  胸(発赤、しこり)
  肝臓(だるさ)

 D)術後の通院と検査:
  外来通院は2年までは3月に1回、
  5年までは3−6月に1回、
  5年以上は6−12月に1回、
  婦人科受診は症状がある時、
  X線は1年に1回、
  血液検査は3−6月に1回、
  骨シンチ、肝エコー(およびCT)は1年に1回、
  最低10年間は経過をみる必要がある。

3)乳癌の治療法
 手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法、免疫療法、温熱療法その他補助療法
 3)-1 ホルモン療法
  A)ホルモン療法のしくみ
    乳癌組織のエストロゲンレセプターへ抗エストロゲン剤(ノルバデックス)が接着する
    →エストロゲンが接着できない
    →ガン増殖因子が出なくなる。乳癌患者の約60%がレセプターを持つ。
    レセプター(−)でも10%に有効。

  B)その他のホルモン剤の種類
    LH−RH類似薬(ゾラデックス)  閉経前の人に有効 
    アロマターゼ阻害剤(アフェマ)   閉経後の副腎、脂肪組織に働き
                       エストロゲンの合成を抑える
    黄体ホルモン(ヒスロンH)     閉経に無関係、骨転移に有効

 3)-2 化学療法(抗ガン剤)             

  A)化学療法の投与時期
    術前化学療法 腫瘍が大きい場合、投与後温存が可能になる。
    術後補助療法 再発予防
    再発時 再発部を小さくする。他部位の発生を抑える。

  B)術後化学療法が必ず必要な場合
    リンパ節転移が有る
    腫瘍が2cm以上、35才以下の人
    エストロゲンレセプターが無い
    腫瘍細胞の悪性度が高い。

  C)術後化学療法:
    CMF療法:Cyclophosphamide+MTX+5FU 
    (エンドキサン)(メソトレキセート)   (副作用が少ない)
    CEF療法:C+エピルピシン+F     (脱毛の副作用がある)
    CAF療法:C+アドリアマイシン+F   (副作用が強い)
    タキソール、タキソテール         (脱毛の副作用がある)

 3)-3 新しい治療薬
  ハーセプチン
   乳癌のガン遺伝子(HER-2 遺伝子)に対する抗体。乳癌組織の血管の新生を抑制する効果がある
   乳癌の20-30%にこの遺伝子があり、悪性度が高い。
   この遺伝子をもつ乳癌の20%にハーセプチンが有効(つまり全体の5%に有効)    
   乳癌の人全員に使用できるわけではない

(先生のお話を浜中がまとめさせていただきました)
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