のぞみの会-講演会・勉強会
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講演会 1996.02.03 尾道
乳癌の手術療法と術後のリハビリについて

尾道市民病院外科
浦久保 直澄 先生
乳癌の手術療法とその変遷

1)定型的乳房切除術 

乳房全部と小胸筋と大胸筋も取る。
昔はこの拡大手術が主であった。しかし転移はガン細胞の性質によるので、大きく取っても予後にはあまり関係ないことがわかった。また大胸筋がなくなると運動障害が起こりやすい。皮膚も沢山取るので肩関節そのものよりも皮膚がつっぱって動かしにくい。このため拡大手術から温存療法へと移行してきた。現在は数パーセントに減少している。

2)非定型的乳房切除術

乳房を全部取り大胸筋を残す方法で外観も良い。筋肉をはがさずにリンパ節を取る。  神経も傷つけないように注意する。現在はこの方法が6割余りぐらいを占めている。 

3)乳房温存療法

乳房の一部を取る方法で神経も温存する。しかし部位的制限がある。10年位前より実施しており、次第に増加し現在では3割近くが温存療法である。再発率も変わりはない。

4)乳管切除術

乳管の中のみに病変がある場合、乳管造影や乳管内視鏡を施行して、悪い乳管のみを切除する。
最近は乳頭の側に腫瘍があっても乳頭を残せるようになった。その後放射線療法と化学療法をする。しかし予後を考えて今のところ切除する方が多い。
患者は乳頭を残す方がいいか、残して再発の不安にどう対処するか。


放射線療法

残存組織へ照射する。週に4回、6から7週の期間治療を要する。
その間入院するか通院するかが問題になる。副作用への不安もある。

術後のリハビリについて


拡大手術ほどリハビリが必要。痛くて動かさないとますます動かしにくくなるので、痛くなるところまで動かすこと。重いものは持たない。ダンベル体操は2Kg位なら問題ない。

講演後の質問に対して


*予後は何が一番関係しているのか?

 ガン細胞そのものの性質、つまりガン遺伝子による。その検査は可能であるが治療には直接結びつかない。乳癌はたとえ再発してもコントロールが可能であるし、化学療法が有効である。

*リンパ節を取るとどんな影響があるのか?

 全身の免疫力の低下はない。しかし感染には弱いので局所(手や腕など)の傷には注意すること。      

*腕が腫れたときは安静にした方がよいのか?

 下げたままにはしない方が良い。リハビリをすることでバイパスができるので、しっかり動かす方がよい。

*リンパ浮腫の対応策について

 浮腫治療器(波動形末梢循環促進装置):ハドマー、メドマー筒状の空気袋に腕を入れ、空気圧を加えることにより末梢から中枢へもみあげ、循環を改善する装置である。 

 ハドマー:病院用装置。尾道農協病院東4病棟に設置されている。
       受診時に希望すれば使用可能である。尾道市民病院では今年設置予定である。

 メドマー:家庭用装置。定価 76,500円。医療器具店に注文すれば手に入る。
 
 経験者談:1日2回使用しているが腕の固さが取れて良い。
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