このウィンドウを閉じる
1996年7月
お便り
N.Tさんより
 術後8年を過ぎ、今まで何度か入退院を繰り返し、いろんな事がありました。しかし、今までは、どんなに辛くとも涙したことはありませんでした。今度、両足の骨に転移、痛みを伴い身体のバランスがとれなく、歩行困難になり、何度もつまづくようになりました。コバルト治療のため、両足にマジックで印が入り、ながめていると、くやしくてくやしくて、初めて大声を上げて一晩泣きました。泣いても泣いても心は晴れず、ますます泥沼に入り込むだけで、不幸が不幸を呼び何一つ解決しません。
 私自身の問題で、私自身が立ち上がらねば誰人の救いの手もその場の慰めに過ぎない。自分が強くなり、現実をしっかり見つめて前に進む以外にない。戦い続けよう。死は遅かれ早かれ避けられない問題。死を恐れるから不安が始まる。死をしっかり見つめた上で、与えられた時間をどう生きるか。せっかく生きているのに嘆き悲しむ日々では不幸である。病気だから不幸なのではない。その病に負けた心が不幸を感じるのだ。身体は病んでも心が健康であれば不幸ではない。幸福である。心までガンに侵されない自分を作ろう。周りの多数の方々に励ましの声をかけていただきながら、アヒルの足かきのような静かな日常が始まりました。目に入るものすべて新鮮で感謝と感動の日々で、その場、その時に精一杯の智慧を働かしながら小さな幸せをかみしめている昨今です。
 医学が進歩しているとはいえ、ガンに関しては一進一退のように私は思います。お医者さんの最善の治療を受けながら、最終的には患者自身が病を治すように思えてなりません。太陽が一日の使命を終え、夕焼けの美しい余韻を多くの人に残しながら沈んでいくように、私も使命あるかぎり輝き続けたいと思います。ガンになり、全く違った生きかたをし、病のお陰で二つの人生を歩むことができたように思えます。同病の多数の方々とお知り合いになり、声をかけあいながら、生きざまを重ねられると思うと、今後ますますのぞみの会の発展を祈らずにおれません。

このウィンドウを閉じる
2002 Copyright(C) Nozominokai All rights reserved.