田舎道


田舎には、田んぼがあって、畑があって、河があって、虫がいて、鳥がいて、 魚がいて、猫がいて、そして何よりも、優しい祖母がわたしを迎えてくれます。


ドアを開け 大きな声で 名前呼ぶ

  田舎の猫は どこに消えたか

祖母の部屋 ベッドの中に 潜り込み

  話しは弾む 時を忘れて

弓を射る 従姉妹狙って 真っ直ぐに

  まるで昔の ハンターのよう

暖かい 苗のおうちの できあがり

  田に行くまでも 大きく育て

農繁期 いつもねぼすけ ばあちゃんが

  田んぼの中で はりきっている

ケロケロリ 水の入った 田の中で

  雨の音にも 負けないカエル

手をつなぎ 祖母と二人で 歩く道

  小鳥の声に 耳傾けて

ピクニック 太陽をうけ 草の上

  食べた弁当 最高の味

こけむして 名さえも読めぬ その墓は

  見向きもされず 忘れられゆく

美しき 灯篭の列 その中に

  雨に打たれた 骨の灯篭

夏休み 涼しい風の 田舎道

  かなかな鳴いて 一日終わる

足の上 小さな虫が はいまわる

  田舎の夏の 安眠妨害

草原を 祖母と二人で 散歩する

  足に群がる 蚊を追いながら

台風の 悲鳴のような 声を聞く

  気にかかるのは 田舎の稲田

台風の 風の鳴き声 聞きながら

  眠れぬ夜を 田舎で過ごす

竹薮で つくつくぼうし 鳴いている

  祖母とわたしの 話しは秋へ

澄んだ空 明るい月の その下に

  光を受けて 立つ祖母と我

稲の束 必死に運び はぜにかけ

  充実感が 胸にあふれる

一年の 農家の仕事 締め括る

  わたしも母も みんな籾すり

籾すりの 仕事を書いた 作文を

  思い出しつつ 手伝いをする

籾すりを 終えて従姉妹と 大冒険

  幼いころに 戻ったようだ

祖母の家 修学旅行の お土産は

  奇麗な箸と お土産話し

天井に 穴を見つけて 見上げをる

  祖母の声聞き 不安はつのる

白い杖 つきつき歩く 田舎道

  今度来るのは いつのことかと

back