夜の真中

夜は嫌いです。光しか見えない目だから、暗闇には何もありません。嫌なことを考えてしまうのも夜です。孤独が苦しくなるのも夜です。



独りきり 家の中には わたしだけ

なぜか大きい 時計の音が

独りきり 隣の部屋で ピアノ鳴る

ピアノの弾けぬ 我は沈黙

写真撮る 「いちばんいい顔 して」と言われ

「無理」とつぶやく 憂鬱抱いて

放課後の 静かな廊下 歩くとき

  世界にわたし 独りと思う

窓の外 ピーピー鳥が 鳴いている

  夜は終わった ほっとため息

この孤独 知らずに生きた 幼き日

  幸せだった 純粋なとき

宿題に 日記をつけて いたあの日

  あのころはまだ 孤独を知らず

独りきり 孤独抱きしめ 歩く道

  どうしていつも 独りになるの?

桐の木を 神とあがめた 純粋さ

  あの木も消えた ピュアな心も

幼き日 早く大人に なりたかった

  純粋だった あのころの我

悩みなど 分からなかった あのころが

  幸せだった ため息をつく

母の帰り 玄関先で 待ちたいが

  真っ暗闇が 「来るか?」と脅す

1日は あっと言う間に 過ぎ去って

  またやってきた 不気味な暗さ

「また夜が 来てしまった」と つぶやいて

  びくびくしつつ 電気をつける

いつまでも 寝られぬ夜の 闇の中

  静寂だけが 辺りを包む

独りきり こんな夜には いつもより

  時計の音が 遅く聞こえる

夜、君は いったいいつまで 続くのか

  たまらなくなり 歌口ずさむ

闇の中 頭の中に 浮かぶのは

  「死」という文字の 黒い陰だけ

夜ってね 遠い国から 来るんだよ

  だからなんだね 夜は冷たい

夜の闇 見てるとだんだん 怖くなる

これだから嫌 夜は嫌だよ

寂しさは 夜の闇から 来るのかな

  夜の真中 わたしは思う

夕焼けは わたしの目には 映らない

  ただ薄暗い もうすぐ夜だ

独り待つ 母の帰りは いつもより

  遅く感じる これが暗闇

光しか 見えぬわたしの この目でも

  夜の暗さは はっきり見える

暗闇の どこが怖いと 母は言う

  答えられずに 呆然となる

夏の朝 光が見えた 朝が来た

  黒1色の 夜は終った

真夜中は 何にも音が しないから

  音がどこかへ 奪われたよう

二日間 孤独感じず 生きられた

  演劇仲間 どうもありがとう

夏になり 夜の時間が 縮んでも

  やっぱり怖い 夜の暗闇

今日もまた 静かな夜が やってきた

  独り寂しく 独り言言う

寂しさと 戦いながら 生きている

  孤独の戦士 かっこつけすぎ

部屋の中 独り寂しく 座る我

  歌歌っても やっぱり独り

虫の声 大きくなって 寂しさが

  大きくなった 秋の長い夜

白杖を つきて独りで 歩く道

  薄暮の風は 冷たすぎます

鳥たちの お水を替えに 外に出る

  寂しき声は こおろぎの声

暗闇が 嫌なわたしも 台風の

  停電は好き 風が鳴いてる

外に出る 耳がきんきんするような

  虫の声でも やっぱり独り

歓声の 中で走った この日だけ

  独りじゃないと 感じられたよ

だれも居ぬ はずの廊下に 響く音

  聞きつけ凍る トイレの中で

襲い来る 孤独を歌で 吹き飛ばし

  薄暮の道を 独りで歩く

真似をする おもちゃの鳥を 相手にし

  話しするのは むなしすぎるよ

いろいろな 空想をして 怖くなる

  お風呂のふたの 音が響いた

ガアガアと 鳴き立てている 烏たち

  サスペンスふと 脳裏をよぎる

昼下がり なぜにこんなに 静かなの?

  まるでこの町 わたし一人だ

夏休み 日焼けをしたと 自慢する

  純粋な吾は もう戻らない

ドラマ見て 恐怖の渦に 巻きこまれ

  眠れぬ夜の 孤独感じる

「子供」という 言葉がやけに 気になった

  大人は嫌と 思ってるのに

お別れは 寂しいものと 知っていて

  心の中の 自分は笑顔

わたしさえ この学校に いなければ

  物事すべて うまくいくのか

我などは 消えてしまえば いいのだよ

生きる価値など 無い人間よ

母親に 気を使わせる 我などは

  存在価値など もうありはせぬ

あの薬 幾粒飲めば 死ねるかと

  考えてみる 価値のない我

息を止め 苦しくなって 息をする

  やはりわたしは 死ねぬ身なのか

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