ナホトカのホテルの前の広場で、無事に出会うことが出来たコシネンコさんと僕は、早速ボストーチヌイ
という地区にある、コシネンコさんの家に向かった。僕は、マーマチカ(お母さん)の車に、スーツケースを
詰め込み、後部座席に乗り込んだ。車の中では恥ずかしがりやのアーニャが、車から降りずに待っていた。
アーニャにロシア語で自己紹介した。といっても名前を言って挨拶しただけだが。
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すかさずマーマチカが「ロシア語が話せるのか?」と僕に聞いてきた。僕は指で形を作りながら
「チュチ(少し)」と答えた。だけどこのとき僕の使えるロシア語といったら、「はい」、「いいえ」、
「ありがとう」、「こんにちは」、「さようなら」くらいのものだった。
家に向かう車の中で、アーニャと英語で話をした。僕の仕事のこと、家族のこと、以前コシネンコ
さん宅にホームステイしたヤスさんのこと等いろいろだ。以降ホームステイ中は、少々込み入った内容に
なると、アーニャと英語で話をして、お互いに理解していた。
30分くらい掛かって、家に到着した。家に入ると留守番をしていたジェーニャが起きてきて、眠い目
を擦りながら、英語で僕に挨拶してくれた。ジェーニャはまだ11歳だが、しっかりとした英語を話す。
きっとロシアでは早い段階で、英語の教育を受けるんだろう。
パーパチカ(お父さん)は出張のため、このとき留守だった。
それからこの家の飼い犬ドーニャが、見慣れぬ客に、”何者が来たのか”という顔をして
不思議そうにこちらを見つめていた。
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もう結構遅い時間になっていたが、シャンパンで乾杯しよということになった。
この時にはもうすっかり打ち解けることが出来た僕は、他人の家にいることを
あまり意識することなく、リラックスすることが出来た。
その後で、腹が減っているだろうとマーマチカが、ピラフを作ってくれた。
僕は、アーニャといろんな話をしながらピラフを食べた。
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アーニャと話をしていると、マーマチカが「イッショ?、イッショ?」と僕に聞いてくる。
”イッショ”って何と何が一緒かって聞いてるの? さっきアーニャと新潟−ナホトカの時差の話を
していたのを思い出した僕は、新潟とナホトカの時間が一緒かと聞いているんだ! となぜか、咄嗟に
思いついた。
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そして自信たっぷりに「イッショ!!」
と答えた。するとマーマチカは、ニッコリと微笑んでピラフのお代わりを皿に盛ってくれた。僕は、
そのとき初めてマーマチカが聞いた「イッショ」とは、ロシア語の”ещё”(”もっと〜”の意味)
のこと、すなわちこの場合は、お代わりがいるか?と聞いていたことに気付いたのだった。
僕は、おかわりを頂かなくても、お腹的にはもうちょうどよかったのだが、2杯目のピラフを
ちょっと無理して食べたのだった。
・・・っていうか、マーマチカが日本語で”一緒?”って聞く筈もないし、 空の皿を見せながら
聞いた時点で気付けよ! っていう話です。
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