ガンダムSEEDディステニーR′“薔薇の乙女達”
第0話【プロローグ】
───C.E.70、2月14日…
プラントの食料生産用コロニー、ユニウスセブンに1発の核が撃ち込まれた。コロニーは瞬く間に崩壊をはじめ、そこに住む24万人以上もの命を奪っていった。
次々と命が消えていく最中、その中に一人の少女がいた…
「パパー!!ママー!!」
一基の脱出ポットの中に押し込まれた少女はのぞき窓から見える両親に向かって泣きながら叫んだ。しかし、声も厚い壁に阻まれ両親には届かない。
窓の向こうの両親の顔には血がにじんでいた。顔だけではない、ボロボロの服の隙間から焼け爛れた皮膚が見え隠れしている。
その日、親子は居住区を離れ、外壁近くにある丘にピクニックに来ていた。その為、辛うじて爆心区から外れていたのだ。
しかし、激しい爆風に倒れた木々の下敷きになっていた。そこから、必死で這い出た親子はコロニーが崩壊していくなか、近くにあったシェルターに運よく残されていた一人用の脱出ポットに奇跡的に無傷だった娘を押し込めたのである。
深手を負った自分達は助からない、ならばせめて娘だけでも……
その時、少女の目には微かに動く母親の口が見えた。
───イ・キ・テ・・・
そう少女には読み取れた。優しく微笑む母の顔……
次の瞬間、激しい揺れと共に少女は虚空へと投げ出される。
「いやぁぁぁぁぁぁぁー!!」
悲痛な叫び声が静寂な闇の中へと消えていく…
薄れいく意識の中、少女の目には今まさに崩壊したユニウスセブンの姿があった。
後に【血のバレンタイン】として後世に名を残す事となるこの事件が歴史の歯車を大きく回す。
戦火は宇宙を、そして地球を包んでいった。
その後、近くを通りかかった救助船に拾われた少女だが、彼女にユニウスセブンでの記憶が無かったという……
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