エンジェルスダンジョン フィフスフィールド
「悪気はなかったんだ・・・。不愉快な思いさせてごめん。」 僕は二人に謝った。僕が謝る理由はない。全て父さんが悪いんだ。 「でも、父さんも悪い人じゃないんだ。その・・・ここの自警団だから・・・。」 僕は少しだけ、父さんの事を話した。 「僕の父さんはカルクス=ロットハークっていうんだ。 ここの自警団の第3部隊って所の部隊長さ。職業柄、人をよく疑うんだ。 でもさ、優しい所もあるんだよ。」 僕が父さんの話をしたとたん、パープルの顔色が変わった。 「カルクス・・・。あなたカルクス様の息子さんでしたの!?」 「カルクス様?父さんを知っているの?」 「お父様からは何も聞いていないのですか?」 「何も。」 僕は父親の過去は何も知らないし、聞こうともしなかった。 だから僕には驚かれる理由がわからなかった。 「あなたのお父様は・・・。」 「いいよ。俺から話す。」 後ろから父さんの声が聞こえた。 「父さんっ!」 「悪い。入る時はノックするべきだったな。」 ドアの前で大口を開けて笑う。 「入るぞ。いいよな。」 拒む理由はないし、ダメっていっても怒られるだけ。 それに何も言わなくても勝手に入ってきてるし。 「さてと、俺の件だが・・・。」 席がないために机に手をついて話し始めた。 「あなた達天使は、俺の事を”ルシフェル”の生まれ変わりと思っているんだろう。違うか?」 どういうこと?”ルシフェル”って神話上の魔族じゃないの? たしか、魔族と神族の戦争の首謀者で”ミカエル”っていう天使と相打ちになったって書いてあった。 その首謀者の生まれ変わりが父さん!? そんなバカなっ!! でも、そんなバカなに天使二人はうなずいた。 「まいったな・・・。もう俺にはあの時のような能力<ちから>は残っていないんだ。 無から出る時に置いてきたんだ。能力は当てにできないよ。」 その返事に二人はがっくりとうなだれた。 「悪いな。がっかりさせて。」 「そうですか・・・。ならばアプネクス様を探してみます。」 「兄なら隣の家にいるよ。逢うかい?」 「ええっ!!そんなに近くにいたのですか!」 「たださ、多分同じ事を言うと思う。兄もあの時一緒だったんだ。 ただ、兄と俺とは能力を使った状況は違うけど。」 俺は”無”から再生するために、兄は仲間を”無の世界”から転送する為にと付け加えた。 「そう・・・ですか・・・。」 「なあ、話してくれないか? 今、天界で何が起こっているんだ? 俺も自警団員としてできる限りの事はする。」 パープルは、僕をちらりと見てから父さんのほうへと向いた 「実は・・・。」 「あ、ちょっと待って。アリアス、お前は外で待ってろ。」 「なんでっ!?」 僕は反論したが、問答無用で追い出された。 だが僕もただでは引き下がらない。 僕は壁に耳をあてて内部を探ろうとした。 「・・・あいつを巻き込むわけにはいかないからな。で何だって?」 「はい・・・。実は、一人の天使が天界にある集落を3つ葬り去りました。」 ブルーの声だ。 「天使の名は”アムグ”。 彼は、私達と同じ下級の天使でした。 しかし、ある日突然何かに取り憑かれたかのように、天界にすむ住人達を次々に虐殺していきました。」 「それだけではありません。 彼と、彼に魅入られた者達によって、天界自体が邪に染まり始めました。」 「私達、守護兵団”異形の翼達”は彼らの暴動を止めようと試みました。 しかし、止めるどころか、彼らに傷一つ、つけることができませんでした。 私達の仲間のほとんどは、彼らに殺されたか、邪に魅入られ、同胞と化してしまいました。」 ブルーとパープルが交互に話している。 「そうか・・・。 わかった。このことは俺達に任せてくれ。 なあに、能力をもっているのは俺とアプルだけじゃないんだよ。 俺達と違って、今でも現役で持っている知り合いもいる。」 「わかりました・・・。 それと、私と彼女(ブルー)の保護を求めたいのですが・・・」 「身の安全は保証する。約束するよ。」 「ありがとうございます・・・。」 「じゃあ、話はそれだけだ。」 ガタンと席を立つ音が聞こえた。 やばいと思ったが、間に合わなかった。 僕は廊下にしりもちをついたところを、父さんに見られてしまった。 「何をしていた、アリアス。」 「別に何も。ここに突っ立ていただけ。待ってろっていったでしょ。」 「聞いていたのか、今の話?」 僕は、その質問に”聞いていない”と答えた。 父さんは、僕に背を向けて「これは大人の仕事だ。首を突っ込むなよ」と静かに言った。 そして居間へと向かっていった。 僕はムカッとしてドアを乱暴に開け閉めした。 「なんだよっ!都合が悪ければ大人と子供を持ち出して、ズルいよ!」 この怒鳴り声に反応してくれた人は一人もいなかった。 二人とも、僕を凝視しているだけだった。 「アリアス、あなたはお父様が嫌いなの?」 長い沈黙(と思っていた)から先に開放してくれたのはパープルだった。 「別に嫌いじゃないけど・・・。でも・・・。」 僕は言い訳できず、そのまま頷いた。 なんていうか・・・。 厳しいとかでなくて、僕の意見をなかなか聞いてくれない。 僕がやりたい事をことごとく反対する。 でも道理が通っているから僕も反論できない。 だからどちらかと言うと、嫌いな方だと思う。 「そう・・・。」 パープルは納得したように、視線をブルーのほうへと戻した。 「あ、そうだ。僕、風呂入ってくる。」 僕は逃げ出すように、この部屋から出て行った。 沈黙が怖かったわけではない。 あの娘達も父さんの味方をしているみたいで、居心地が悪かったからだ。 「どいつもこいつも!」 僕はそういって、苛立ちを服に八つ当たりしながら、洗面所で服を脱いだ。
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