――…青い…見たこともないくらいに真っ青…――
――でも、どこか懐かしい…見たことなんてないのに…――
――不思議だ……夢?これは夢…?――
<――…ワタシヲ、見ツケテネ…――>
――いったい、君は………誰?――
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「NO88!明日からダイスケ・ニワの家へ行って研修、ホームステイとも言うが、行って来い!で、リペアラー!お前はリク・ハラダのところへ行け!」
『エェェェェェッ!!』
声を全く同時に上げたのはNO:88のゼロ・エンナとそのリペアラー、キズナ・ツゥーリークだった。
「教官!なんで俺たちだけなんだよっ!」
「その間私たち上にあがれないじゃないですかっ!」
二人は文句たらたらだ。まぁ、当たり前だが。
「ダイジョーブだっ!他の奴らには自主練しとくように言う。それから来年からこのカリキュラムを入れるのを検討しているんだが、お前たちはその実験。うまくいきゃ、上に上がれない事はない!」
その言葉を聞いた二人は待ってましたと目を輝かせ
『行かせて頂きます!!』
今さっきまで打って変わった返事を返したのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「――…はぁ、母さんなんで起こしてくれないかなぁ…」
まぁ、ぐちぐち言っても意味がないのだが。でも、今日は母さんが起こしてくれなかった。
「おっかしいなぁ。平日なら遅刻だよ…」
―――起こしてもらわなくちゃ起きれねーのか?
「もー、ダーク、うるさいな」
ダークを無視して時計を見ればもう9時だ。日曜日でなくてはこんな寝坊はしていられない。
と、ベッドの下から「キュッ♪」っと鳴き声が聞こえてきた。
「あ、ウィズ。おはよう……ん?これなんだ?」
そのウサギみたいな動物、ウィズといったか、その動物みたいなものが口になにか紙のような物をくわえている。
ウィズがベッドへ飛び乗り、くわえていた紙を彼、丹羽大助にわたした。
「ありがと、ウィズ。母さんの置き手紙だね」
ガザガザとその紙を開いてみる。
「え〜っと、『大ちゃんへ。母さんたちちょっと買い物に行ってくるわね。いい子にお留守番しててね♪大ちゃんのママより』だって…」
僕は小学生扱いなんだろうか…。ちょっとショックを受けている大助。
「キュウゥッ♪」
僕の頭にとびついた真っ白でふさふさなウィズ。でも、ダークが触れれば、真っ黒な、大きな翼を持ったダークの相棒になる。誰にも言った事はないケド。
「――…買い物って、こんな早くから何買いに行ったんだろうね?じいちゃんや父さんもいないみたいだし…」
1階が全く騒がしくない事から判断した大助。リズム良く階段を降り、台所へ向う。そこには案の定、僕の朝食が用意してあった。
牛乳をついでトーストを口に放り込む。
「…――こういう時に限って変な人が来るんだよね…。梨紅さんならうれしいのに…」
―――バカなこと、考えてんじゃないんだろうな。梨紅に変なコトしたら承知しねーゾ?
「わ、分かってるよ、そんな事。僕がそんな事考えてる事ないだろっ!」
顔を真っ赤にして大助が言う。
―――ほーー、そんな事ってなんだよ?なぁ、大助?
と、
―――ピンポーン……ピンポンピンポンピンポーン
助かった…。大助はダークの事を無視して玄関へ向かう。めんどくさい罠をかいくぐりながら。
「一体誰だろ?」
―――さーな…
ダークは誰が来たなんてどうでもいいようだ。でもこの押し方だと梨紅さんじゃないようだ。そう、もっと荒っぽい冴原みたいな男の人。
最後のセンサーを避けきってから玄関を開ける。
「どなたですか?」
と、目の前に立っていたのは見知らぬ少年。そしていきなり彼はこう言った。
「おー、お前が丹羽大助か!オレ、ゼロ・エンナ(日本では苑名 零)。これから半年間よろしく頼むゼッ!」
一体何の話だろう・・・・・・?この人は一体誰だ?!
そんなことはお構いなしに彼はずんずんと家へ入っていった!
「あっ、入口には落とし…」
言い終わらないうちに何かが落ちてつぶれる音がする。あ〜あ、あのゼロって人、落ちちゃったみたいだ。
―――勝手に落ちたことにしてやんなよ…
「えっ?」
ダークが頭の中で変なことを言った。勝手に落ちたことにしてやるな…?だって今、落ちた音が…。
と、足元から声が。
「なんなんだ、この家は…?」
「?!えっ?!君、落ちたんじゃ…?」
こんな落とし穴、素人では気付かないうちに普通落ちているはずだ。なのにこのゼロ・エンナって人、落ちてない!片手でぶら下がって体を支えている。
「よっと」
そう言って彼は僕が毎日やってるようにして、落とし穴から出てきたんだ!僕と同じぐらい身軽に出てきた彼は、不機嫌そうな顔をしている。それは普通当たり前だが。
「荷物、落ちちまった…あとで取ってもらえるよな?俺の荷物」
ポカーンと口を開けたままの僕にむかって彼は言った。まったくごく自然に。確かに僕の家は変だけど、彼も変だ!一体何者なんだ、このゼロ・エンナって人。って言うか、本当に変な人が来た…。
と、彼が僕に手を差し出した。
「今日からお前の家にホームステイさせてもらうことになった、ゼロ・エンナだ。明日から東野第二中学校に通うことになってる。よろしく頼むぜ、丹羽大助」
そう言って彼は強引に僕の手をガシッとつかんで握手をした。
「う、うん…よ、よろしく、ゼロ・エンナ君…」
全くわけもわからないまま、彼の返事にあいまいに答えておく。なんで母さんはこういう時に限っていないんだろう?
そんなことを考えて困惑している間に、聞き覚えのある声がした。
「大ちゃ〜〜ん、ただいま〜〜、良い子にお留守番してた?」
手にいっぱいの荷物を抱え、そしてたぶん荷物持ちとしてかりだされたのだろう、母さんよりも3倍ぐらい大きな荷物を持った父さんとじいちゃんが母さんの後ろをふらふらと歩いていた。
「か、母さん!なんなんだよ?!ホームス…」
僕が顔をふくらませて母さんに詰め寄ると、なぜかがばっと口をふさがれた。そしてこう言った。
「あ〜ら、ゼロ君、もう着いてたのね〜」
「お世話になります、おばさん!」
一体なんの話してるんだ…?
全くもって大助には分からなかった。ホームステイ?ゼロ・エンナ?
「あら、大ちゃん、ホームステイの話してなかったかしら?」
「そんな話聞いてなーい!!」
―――いいじゃねーか、別に。
いいわけないじゃないか。だってダークだけでも大変なのに、僕と同じぐらいの運動能力、そして冴原と似ていて似ていない性格。絶対大変な事になる。
「か、母さん!ちょ、ちょっとこっち来て!」
「なーに?大ちゃん?」
ぐいぐいと母さんの服を引っ張り、ゼロに声が聞こえないところまで連れて行く。
「ちゃんと順をおって説明してよ、母さん」
「もう、この前説明しようとしたら大ちゃん、自分の部屋に上がっちゃったんだもん。まぁ、かわいい大ちゃんのためなら説明してあげる」
「もう、余計な前置きはいいから、さっさと説明してよ…」
「確か1ヶ月前かしら、GOAってところから連絡があったのは。『お宅のところに研修生を半年ほど預けたい。かわりに半年間こちらもあなたの息子さんを研修生としてこちらにきてもらいたい。』って言う電話があったのよ。で、そこですぐOKだしたのね、研修生って興味あったから。で、後日ゼロ・エンナ君がくるって言われたのよ」
「ぜんぜん…聞いてない…」
「おい、なんの話してるんだ?」
「の、のわぁぁぁぁ?!」
なぜかゼロに冴原と同じように首に手を回され、そして首を締められていた。
「ぐ、ぐるじぃ…」
「スキンシップだ」
ぎゅうぎゅうと首を締められながらも冴原と同じ反応を見せてしまう僕。
「まぁいいや、これからよろしく頼むぜ、丹羽大助!」
彼はそう言って彼はもう一度僕に手を差し伸べた。
いまいち理解はできない。でも別に悪い人じゃなさそうだし、もう決まった事だし、全部仕方がないんだから。
そう思った僕は、彼の手を握り返した。
「よろしく、ゼロ・エンナ」
こうして奇妙な研修生がうちへやって来たのだった。
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