「なぁ、怪盗ダークって、誰だ?」
 全ては、この言葉から始まった――。
 ゼロ・エンナが僕、丹羽大助の家に起こったこと。
 その1.食費代がかさむようになった。(本当にゼロはよく食べる)
 その2.僕がダークになる回数が減った。(さすがに母さんも少し注意してるみたいだ)
 その3.ここ1週間寝不足続き。(普通に宿題教えてるだけなのに……)
 これくらいかな?
 あ、そうそう、1番大事なことを忘れてた。
 その4.なぜか、梨紅さんと話す機会が増えたんだ!
 ゼロが僕の家に来て1週間ちょっと経った。
「おっす、大助、ゼロ!」
 教室に入って来たばかりの僕に、いつものごとく首に手をかけた冴原は、ご機嫌でその手に力を入れる。
「お、おはよ、冴原……」
「おっす、冴原!」
 僕のしなびた声とは反対に、ゼロは元気よく手を上げた。
 ゼロは早々とクラスに馴染んでいる。特に冴原とは仲が良い様だった。やっぱり、似てるんだろうな……。
「あ、そうそう。ゼロ、頼まれてたもの、持ってきたぜ」
 首から手を離した冴原は、自分の鞄をガザガサとあさりだす。
「これだ、これ」
 そう言いゼロに手渡したのは数十枚の写真の束。そこに写っていたものは……。
「へぇ、これが怪盗ダークか」
 彼の興味有り気な声に、僕は苦笑いを浮かべる。やっぱり似たような人種だ、この二人。
 肩を落としている僕の後ろから、ぱっと花が咲いたような声が聞こえた。
「おはよ、丹羽君」
「あ、梨紅さんおはよう」
 振り向くと、やはりそこには原田梨紅さんが立っていた。その後ろにはピンク髪の少女。
「おはよ、大助」
 軽く手を上げた少女は、すこし梨紅さんと感じが似ている。なんだか快活そうっぽい。
「おはよ、キズナ……さん」
「別に呼び捨てでいいって言って……――」
「おっす、キズナ!」
 途中で割って入ったのはやはりゼロだ。
 ゼロとキズナ・ツゥーリーク、二人はG・O・Aから一緒に来たから仲がいい。キズナは梨紅さんの家にホームステイしている。だから、彼女とゼロのおかげで梨紅さんと話す
機会が増えたと言う訳だ。
「ゼロ、その手に持ってる写真、何?」
 言うが早いかゼロから写真の束を奪い取るキズナ。後ろから覗きこむようにして見た梨紅さんの顔の色が、突然青くなる。
「なんでこんなところにあのチカンの写真が……」
「チカン?」
 不思議そうに振り返ったキズナに、梨紅さんはしどろもどろしている。
「な、なんでもないの」
「そう」
 どうもキズナは深く突っ込みたがる正確ではないようで、すぐに写真に顔を戻した。
「ねぇ、これって怪盗ダークよね?」
 ゼロと違い、あまり興味なさそうな声でキズナは言った。
「ああ、俺が激写してきたダークの写真だ」
 誇らしげに胸をはる冴原を一瞥し、すぐに写真をゼロへと返した。
「私、あんまりこういうの興味ないのよね」
 すたすたを冴原とゼロの間を通り、キズナは自分の席へ鞄を置いた。
「なんだよ、一体……。なぁ、大助は興味あるよな?」
 突然話をふられ、僕は微苦笑した。
(興味があるもないも……僕がダークだし)
 そんなことを言えるわけもなく、あいまいに返事を返した。
「ほんの少しだけ……」
 冴原がなぜだか手を打ち合わせる。嫌な予感が……。
「そう言えば、今日ダークから予告状があったらしい。『十時の鐘が鳴り終わるとき、天使
の翼を頂きます』ってな。なぁ大助、俺と一緒に来るか?」
 冴原ちょっと待て!なんでダーク本人の僕が知らないことを、君は知ってるんだ?
 色々突っ込みたいところがあるけど、突っ込めない。
 冴原の言葉に、ゼロは一瞬目を輝かせた。やっぱり行く気だ。
「連れてってくれるのか?!」
「おう、そのかわり、写真撮るの手伝えよ」
「よっしゃ!」
 いつの間にこんなに交流を深めていたのだろう、この二人。厄介な事が起きなければい
いんだけど……。
 
そんな僕の願いも、虚しく夜空に散った――。
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