――お前は、私を超え、偉大な者になる。
(………父上…………)
――お前は、言うことが聞けない子ではないだろう。
(…父上、俺は………)
――そのためにも早く、真実を受け入れろ。
(父上、俺は、まだ………)
――お前はよくできた子だ。
(違うんだ、父上……!!)
――親の言うことが聞けないのか。
(……父上なんて、父上なんて……大嫌いだ…!!)
§
静寂の街。静かな、本当に静かな音をたて、冬の妖精達は空から舞い降りる。
彼女は鼻先を窓ガラスにくっつけ、食い入るように外の様子を見つめていた。
夜の闇は濃くなり、時間が止まったように思える。それと対照的に、白銀の雪はやむことなく降り続けていた。
白い息をはく少女は、一人の老人を待っていた。もじゃもじゃの髭をたくわえ、さえる赤色の服と帽子をかぶり、トナカイが引くソリに乗った老人である。
今夜は十二月二十四日だった。
彼女は近くにあった犬のぬいぐるみを引き寄せ、強く抱きしめる。このぬいぐるみは昨年老人がくれたものだった。
「早く来て、サンタさん…」
小さく歯をカチカチと打ち鳴らしながら、彼女はつぶやいた。今日何度同じことを言ったかなど、憶えてはいない。
彼女は一層、強くぬいぐるみを抱く腕に力をこめた。小さくぬいぐるみは悲鳴を上げる。
一瞬、彼女が見つめている窓ガラスの向こうに、突然不思議なものが映った。
一人の少年。
彼女は自分が寝ぼけているのではないかと、ごしごしと目をこすった。この部屋は、マンションの十二階なのだから。
しかし、少年は少し遠退いただけで、本当に宙に浮かんでいた。正確に言えば、少年がまたがっている馬のような動物が飛んでいる。その動物は背にはえた翼を羽ばたかせ、ゆっくりと下降して行き、最後には見えなくなってしまった。
彼女は少し呆気にとられたが、すぐに寝間着の上にジャンバーを羽織ると、急いで部屋から飛び出した。
エレベーターに乗りこんだ彼女は、少年の一瞬だけ見えた顔を思い返した。
(なんだか、悲しそうだった…)
エレベーターはガコン、と音を鳴らし一階へと到着した。
マンションから走り出た彼女は、一目散に近くの公園へと駆け出した。彼女なりに、あんな大きな動物が降りることができるのは公園だけだと考えたからだ。
彼女は走っている最中、不思議な思いに胸を踊らせていた。
(きっと、迷っちゃったのね)
息を弾ませ、公園の入り口に立った彼女が見たもの。
それは、絵本で見たことがある動物と、雪が舞う夜空を見上げた、一人の少年だった――。
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