廃ビルが立ち並ぶ街の裏通り。
静寂に包まれた通りを、一人の男が横切り、一つの廃ビルの中へと走りこんだ。
「そっちに入ったぞぉ!」
男を追うように男達の太い声が裏通りに響く。
ざっと二十名ほどだろう。 皆同じ制服を着て、同じ型の銃を手に構えている。
男達は、男が入っていった廃ビルをぐるりと取り囲んだ。
その中から、一人の人間が手にメガホンを持ち、進み出る。
彼女は肺に入るだけの空気を入れると、それを言葉とともに吐き出した。
「違法魔術師ロッド・マーディラス!十秒以内に出てこい!さもなくば廃ビルもろとも爆破する!!」
彼女は早々とカウントを開始する。
「……十! ……九! ……八!」
男が出てくるけはいはない。
彼女のカウントは続く。
「七! ……六! ……五!」
彼女は起爆スイッチ担当の男に目を向けた。
OKサインを返してくる男に、彼女は小さくうなずいた。
「……四! ……三! ……二! ……一! ……ゼ……」
爆破の合図をしようとしたその時、
「出てきました、隊長!!」
一人の男が叫んだ。
両手を上げた降参の姿勢をとり、ビルから薄汚い姿をしたロッド・マーディラスが出てきた。
五人の男が、すぐさま特殊な手錠をかけようと近寄る。 が、すさまじい轟音とともに突然砂ぼこり舞い上がった。
「くそっ! 罠だったか!!」
あたりが見えなくなり、毒づく男達の目には焦りの色が浮かぶ。
しかし、彼女は冷静に目をつぶり、何かしら口の中でつぶやいた。
彼女は所持品の麻酔銃を砂ぼこりの中へと標準を合わせ、引金を引く。
砂ぼこりの中に銃弾は吸い込まれ、消えてしまった。
数秒後、何か重みのあるものが倒れる音が、彼女の耳にしっかりと届く。
砂ぼこりが彼女の前から消え、その中央に砂ぼこりを起こした本人が気を失い、倒れていた。微妙に痙攣はしているが、命に別状はないだろう。そう彼女は判断した。
「完全に伸びてしまっていますね……隊長、連行します!」
手錠をかけた後、担架を持ってきた若い男達は車へとロッドを運んで行った。
彼女はそれを見届けホルダーに銃をしまうと、黒色の髪をかきあげる。
(砂だらけだ……)
服についた砂を落とし終えると、彼女はポケットからまだ新しい懐中時計を取り出し、覗きこんだ。
「午後九時三十四分、ロッド・マーディラス逮捕」
小さな音をたてて、彼女は懐中時計の蓋を閉じた。
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