ホテルの前で
今回のホームステイツアーの参加者は、全員で34人、北は北海道札幌から、南は広島まで、 独身者もいれば、家族で参加した人もいる。全員がヒッポファミリークラブのメンバーだ。

飛行場のあるウラジオストックから、ナホトカまでざっと100kmだろうか、 バスの中では自己紹介やら、どんな準備をしてきとか、そんな話で盛り上がった。2時間位掛かって、 僕らを乗せたバスは、受け入れてくれるホストとの待ち合わせ場所である、ナホトカのホテルの前の 広場に到着した。ホテルの前とは言うが、殆ど街灯もなく、あたりは薄暗い。

ロシア人のホストの人が、手持ちの花火を打ち上げて、歓迎してくれているのが見えた。 日本だと花火=夏=鑑賞するもの、とういう感じがあると思うが、ロシアでは歓迎とか、お祝いの ときに、花火を使うようだ。新年を迎えた夜にも、あちこちで花火を打ち上げていた。

広場には、毛皮の帽子に毛皮のコートという出で立ちの、ロシア人のホストの人達が 集まっていた。「ついに来たんだな」という実感が、興奮をもって湧いてくる。僕たち ホームステイツアーの参加者は、順番にバスから降りて、各々のスーツケースを、バスから取り出した。 外は風もなく、それほど寒さは感じなかった。足元には、雪は全く積もっていなかった。
コーディネータの人が、リストを見ながら、ホストが来ている人から順番に、日本人が名前を呼んでゆく。 ひとり、またひとりと名前が呼ばれてゆく。ホストと対面したホームステイ参加者は、ホストに自己紹介 したり、さらわれるかのようにホストの車に乗り込み、その場を後にしていく。

ひとり、またひとりと名前を呼ばれるが、いつまで経っても僕の名前は呼ばれない。 だんだん不安になってくる。そしてついに誰の名前も呼ばれなくなった。たまらなくなった僕は、 自分の方からリストの僕の名前を指差し、コーディネータに尋ねた。するとコーディネータは、 あたりを見回し、何かを叫び始めた。僕のホストの名を呼んでいるようだが、全く返事はない。

どうやら僕のホストは来ていないようだ。あたりは一面何も見えない真っ暗な夜。気温は氷点下。 言葉は通じず、知る人など誰もいない。 「僕は・・・、一体どうなってしまうのか?!」(笑)
コーディネータは、その場にいる他のホストに聞き始めた。しかし彼らは一様に、 「コシネンコ(僕のホストの名前)? 知らないなあ。来ていない? さあどうしたのかなあ?」と 言ってるのが、表情や首を横に振る仕草で分かる。いよいよマジか。気持ちはもう半泣き状態である。

「僕はどうすりゃいいの?。 誰か僕のホストがどうなってるのか分かるまで、この気の毒な 僕を家に泊めてくれるよね?!。 僕を見捨てたりしないよね!」そんなことを真剣に考えていた。 [このときの写真を見る]

しばらくして、一台の車が、こちらに向かって走って来るのが見えた。車は広場に止まり、 中から一人の女性が降りてきた。
コーディネータは、車から降りてきた女性に、コシネンコさんであることを確認した。僕も、彼女が僕を 受け入れてくれる、コシネンコ家のマーマチカ(お母さん)であることを、すぐに理解した。

マーマチカは、僕が分かると笑みを浮かべ、ロシア語で何か言いながら、いきなりハグをしてきた。 僕は、初めてのことに戸惑いながらも、ハグを返した。その瞬間、それまでの不安で泣き出しそうな 気持ちが、一挙に嬉しさと安心に変わった。

一時は、極寒の異国の原野に、一人放り出されてしまうのかと心配したが、とりあえず、 凍え死ぬことはなさそうです。やれやれです。
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