街を賑わす化粧品のポスター。
今話題のプロモーションを展開している大手化粧品メーカーのものだ。
女性用のシリーズにも関わらずメインはメンズモデル。
裸の女性を抱きしめ、その肩口から不敵に笑むのは人気絶頂のモデル
友雅だった。
「やっぱり、格好いいよね〜」
ショウウインドのパネルを見つめ、しみじみとつぶやく少女。
つぶらな瞳、肩口で切り揃えられた明るい色の髪。
艶やかな桜色の唇はふっくらとして優しい印象を与える。
「あかね、次行くよ!」
「あ・・、うん」
友達の女の子に肩を叩かれ、あかねはちらちらと名残惜しげにパネル
を見つつグループへ合流した。
浮かない顔をしたあかねに、ひとりの少女がガシッと首に腕を巻きつけ
こっそり囁く。
「あかねぇ、もっと愛想良くしなよ。彼氏GETできないよ?」
「いいよ〜、そんなつもりないし・・・」
今日は前々から約束していたコンパなのだ。
気は進まなかったが、約束と人数あわせの為に渋々付き合っている。
だが友人達は彼氏がいない(と思っている)あかねの為に、コンパを計
画したのだった。
もちろんあかねは知らない。
「何言ってるのよ、あかね!今日はレベル高いんだから気合入れて頑張
ってよ!」
確かに友達が言うように、コンパにしては珍しくハイレベルだった。
でも、あかねにとっては・・・・。
「行っくよー!あかね!!」
バンッと背中を叩かれ、あかねは困ったように笑った。
少し混んだ道をゆっくりと運転していた青年が、ふと声を上げた。
「おや?」
「どうしたんだい?鷹通」
「いえ・・・・」
友雅の言葉にらしくなく、言葉を濁した鷹通。
訝しげに眉を寄せ、友雅は鷹通が見ていたであろう場所へ視線をやっ
た。
「あかね!?」
友雅の目は反対車線の向こうの歩道を歩くあかねの姿をしっかりと捕ら
えていた。
「今日は友達とショッピングと言っていたが・・・」
友雅の目が眇められる。
あかねは一人の少年とにこやかに話をしていた。
あかねが何かを言い、少年が呆れたように笑って彼女の頭をくしゃりと
撫でる。
それに首をすくめて笑い、あかねは少年を叩くふりをして・・・・。
友雅まで声は届かないはずなのに、彼の耳に響くあかねの朗らかな声。
二人でいる時には、決して見せない表情。
友雅は、ギリッと拳を握り締めた。
<続>
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