「ケダモノ・・・・」
ポツリと呟かれた言葉に翡翠は笑って少女を振り返った。
「否定はしないよ」
褥の上にしどけなくうつ伏せたままの少女には、軽く単衣が掛けられているだけだ。
その単衣から覗く白磁の肌には咲いたばかりの赤い華。
端近に腰掛けて月見酒と洒落込んでいた翡翠は、花梨を見つめながら酒をあおった。
「人の体力考えてよ」
「お仕置きと言っただろう?」
まったく反省する気のない翡翠に溜息をつき、花梨は気だるく痛む体を我慢して起こした。
掛けられていた単衣を簡単に羽織って翡翠の方へにじり寄る。
「綺麗なお月様・・・・」
「そうだね、だけど花梨も綺麗だよ」
落とされる口付けをくすぐったそうに受けながら花梨は笑った。
「もう、日が変わったのかな?」
「そうだね、変わったか変わる頃だろう」
「じゃあ。変わったことにして・・・」
花梨はきっちりと居ずまいを正すと、ペコンと翡翠に向かって頭を下げた。
「お誕生日おめでとうございます!」
一瞬何を言われたのか分からなかった翡翠が、驚きにかすかに目を見開いた。
その様子に花梨がちょっと口を尖らす。
「もう、前に言ったよ?私の世界では・・」
「新年ではなく生まれた日に年を取る、だったね」
「そうだよ。おめでとう。翡翠さん」
「ふふ、花梨に祝ってもらえるのがこんなにうれしいとはね」
「うれしい?本当に?」
翡翠は疑り深い花梨の鼻をキュッとつまんだ。
「うそを言ってどうする?」
「痛いよ、もう!子供扱いして!」
上機嫌に笑う翡翠。
花梨はそんな翡翠の肩に腕を回し、にっこりと微笑んだ。
「お誕生日の贈り物、受け取ってくれるよね?」
花梨の細腰を翡翠の腕がグッと引き寄せる。
「花梨からの贈り物を頂けるのかい?」
「うん。受け取って・・・・」
囁きとともに、優しい口付けがひとつ翡翠に贈られた・・・・
<終>
時間切れ!
すみません(汗)
おまけに気付いてくれてありがとうですvv
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