精霊の涙 〜機械の精霊〜
「・・・ルド!ラルドさんっ!」 「ううぅ・・・。」 「よかった。アンタが酒弱いのを知っていたのに・・・。すまん。」 意識が回復した私に向かって、ボールソーさんが一礼をして謝った。 「いえ、私が飲みすぎただけです。ボールソーさんが悪いわけではないですよ。」 私は気にしていないと言ったが、ボールソーさんはそれでも申し訳ない顔をしていた。 こういう事には、とても責任を感じる人なのだ、この人は。 私のこともあり、すぐに飲み会はお開きになった。 家を出る時、本当に申し訳ないと言って、酒とつまみを持たせてくれた。 (本当に申し訳ないと思っているのだろうか?) まだ酒が残っている体を引きずりながら私はリチルを迎えに行った。 だが、最大の問題があった。 時間だ。 ボールソーさんの家を出る時みた時計では、もう日付が変わっていた。 たとえリンさんの家に行ったとしても、明かりは消えているだろう。 こうなってしまえば連れ出す事はできない。 どうすればいいのか?と考えているうちに、また転んだ。 今度は膝だけだったので、瓶や包みの中を道路にぶちまける事はなかった。 もう考え事は止めよう。 そう思い、やけになりながらも無心でリンさんの家へと向かった。
案の定、リンさんの家の明かりは全て消えていた。 だまって入ることはできないので、一応ノックをしてから明かりが灯るのを待った。 が・・・。 いつまでたっても明かりがつかないので、私は借りた合鍵を使って中に入ることにした。 明かりはついていた。 内部からは見えない位置(つまり居間だ)にランプの明かりがまっすぐに立っている。 しかし、誰もいない。 私は、手元にある荷物をテーブルに置き、ランプを消して寝室へと向かった。 リチルが眠っている隣に大きな影があった。 それは、リチルのベッドに寄りかかる形で眠っていた。 暗い中、そっと近づいてみてみると、案の定リンさんだった。 そうか・・・。 一緒に寝てあげたんだ・・・。 ごめん・・・。 私は、感謝と負い目を感じながら彼女に毛布をかけてあげた。 そして、その傍に椅子を置いて寝る事にした。 酒の効果がまだ残っているので、椅子だろうが簡単に眠りにつく事ができた。
リチルは真っ暗で何も見えないところに立っていました。 パパ、パパ、と叫んでも、返事はありません。 リチルは泣きました。大粒の涙が頬を伝って流れていきます。 大声で泣いていると、どこかで同じ泣き声が聞こえてきました。 リチルは気になって、泣きながら泣き声のするところまで歩きました。 するともう一人、女の子がうずくまって泣いていました。 肌は白く、髪は金色で腰までありました。 顔は手で見えませんでしたが、リチルはかわいそうと思うのと同時に、うらやましいと思いました。 リチルの髪は何で緑色で短いのだろう。リチルもあんな綺麗な髪が欲しいな。と。 「どうして泣いているの?」 リチルは思い切って聞いてみました。 目を覆っている手を退けて、女の子が顔を見せてくれました。 リチルは鏡を見ている感じでした。 瞳の色(女の子は青、リチルは緑)や唇の色(女の子は淡いピンク、リチルは淡い青)が違う以外、 ほぼリチルと一緒だったからです。 「ママがいなくなっちゃった・・・。」 「かわいそう・・・。リチルもね、パパがいなくなっちゃったんだ。」 そして、今度は二人で泣き始めました。 でも、リチルは気づいていました。 女の子の後ろにもう一人女の人がいるという事を。 リチルは女の子の為に、後ろを指差してあげました。 女の子は、すぐに後ろの女の人に駆け寄りました。 「ママーっ!」 そう叫んでいました。 女の人は、女の子を抱き寄せて頬に軽くキスをしていました。 女の子も、その腕の中で笑っていました。 リチルはその姿をみて、また泣き始めました。 泣いていればきっとパパが来てくれるだろう・・・。 あの女の子みたいに、後ろにパパが立っていてくれる。 そう思っていたからです。 でも、パパは来てくれませんでした。 何度も後ろを振り返ったけれど、真っ暗で何も見えません。 リチルはずっと泣いていました・・・。 「パパーッ、パパーッ!!」 私はリチルの泣き声で目を覚ました。 「リチル、どうした!リチルッ!」 私はすぐに毛布を剥ぎ取り、リチルを抱き起こした。 リチルはすぐに目を覚ましてくれた。 そして「パパーッ、パパーッ!」と、細い指で私の腕をぎゅっと握り、ずっと胸の中で泣いていた。
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lute@do7.enjoy.ne.jp 虎神 竜斗(こがみ りゅうと)