二人の少年は互いに見つめ合っていた。そこの横ではボーッっと少女が見つめている。
「でやぁぁぁぁぁ!!」
いきなり少年の一人、チャットが木刀を持って駆け出す。が、もう一人、リオンはトンファーを持って慌てる様子も無く構えていた。
ガギィィンっ。
木刀とトンファーがぶつかる音が部屋中に響く。
さっと二人の間が開いた。
「はぁぁぁぁ!!」
トンファーを持って走り出すリオン。
ガッッ。
トンファーは木刀によっていきよいよく弾かれた。
「−…ふっ、やるじゃねーか…」
「お前みたいなよえー奴に負けてられっかってンだ…」
「んだとーー?!」
「言ったとーりダイ!!」
ぎりぎりと二人ともバカ力を出しに出しまくって鼻と鼻がくっつくとこまで近寄っている。
あ、僕イオンです。今いる所は体技室っていうところ。いろいろ武器が置いてあったりするんだけどね。
それから戦ってるのはリオンとチャット。3日前からどーも二人の様子がおかしいんだ。食事の中に下剤入れてたり、いきなりフライパン持って走り出したり…等など。見てて案外楽しんだけど。
そんな一人の妄想を楽しんでいると、
「あら、皆さんここにいらしたのね」
と、ガラガラとドアを開けて入ってきたのは、クリスだった。
「あ、クリスぅ。あの二人って一体何してるんだろうねぇ?」
ちょっと考えてからクリスがだした答えは、
「きーっと、イオンちゃんが二人とも好きで仕方がないんですわ♪理由は分かりませんけど。でもなんでリオン様が……うぅぅぅ…うっふっふっふっふ………ガァァァァァ!!」
いきなりクリスの目から光が放たれた!
「ちょっ、ちょっと、クリス!や、止めなよ!って、うわっっ」
体技室がガラガラと音を立てて崩れてきた。
「だわぁぁぁっ?!」
「ぬゎんだぁぁぁぁ?!」
今さっきまで戦っていた二人の上にちょうど、か・な・り・でかいコンクリの破片(?)が落ちてきた。
ブキュウッ。
二人の悲鳴はコンクリの破片のせいで、見事に聞こえなくなった。
「あ〜あ、また壊れちゃった…」
苦笑いしながら、頭を抱えて僕は座り込んでいた。なんかもう慣れちゃったって感じだ。
と、クリスの目から出ていた光がふっと消えた。
「―…あら?私何をしていたのかしら…?」
クリスには暴れた記憶が残らないようだ。
「クリス、また君が壊したみたいだよ…」
だから僕が恐る恐る教えなくちゃいけないんだ。うぅぅ…僕って不幸。
「まぁっ!また壊してしまいましたのね、私!」
「ゴメン、僕ちょっとこの二人保健室運んでくるから」
とか言ってクリスからなるべく離れる。
「行ってらっしゃ〜い。さぁ、私は直さなくては…」
トンテンカンカン。
この寂しげなかなづちの音は3日前から10回ぐらい聞いたような気がする僕だった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「明日は私服を着てきて……」
先生がそう言ったのはここに来て半年になろうという頃だった。
今までに山で武術の練習させられたり(山の中にホッポリ込まれて魔物と戦って帰ってきなさいだって)、精神集中させられたり(滝打ち等など)、後全く関係無いけど、カギ破りの方法も教えてもらった。魔法使いにカギ破りって必要なのかな?泥棒になるわけじゃないんだし。でも知ってたらいいことあるかもしれないけど♪
で、いつも明るいアザリー先生なんだけど、なんか今日は何かが違う。先生に元気が無いんだ。
どうしたんだろう、なんかとっても心が苦しそうで、不安で仕方ないみたいな、そんな感じ。それになんでいきなり私服なんだろう?街にでも連れて行ってもらえるのかな。でも、街に連れて行くだけならこんな気持ちになったりしないよ…、先生。
「では皆さん勉強再開してくださいね…」
とってもくらい感じで、先生が去って行った。
「なぁ、先生の様子おかしくないか?」
先生がいなくなった後、僕の隣のチャットが言ってきた。
「やっぱりチャットもそう思う?先生なんか悩み事でもあるのかなぁ…」
「好きな人でもできたんじゃないのか?」
茶化すように前の席のリオンが言ってきた。
「そんな事じゃないと思うけどなぁ」
「家族の方がご病気になって、心配なのかもしれませんわよ?」
勉強熱心のクリスまでくるっと椅子を回転させて後ろを向いた。
「そーかもしれないなぁ。先生ってところで家族っているの?」
「…………」
皆知ってるわけがない。先生の素性は、ほとんど教えてもらえなかったんだ。歳、名前、少し前までこの学園にいたこと。これぐらいしか教えてもらえなかった。他の先生も同じだ。僕たちは先生達の個人情報おろか、学園の行事さえ知らされていない。いつ何が起こるかわからないんだ。そう、いつ外に放り出されるかも分からない…。
と,リオンが
「で、勉強しような。べ、ん、きょ、う!」
『ゲッ』
い、いじめだ…。でもごまかす為に話してんだけど…。
「と,言いたいところだが,もう夕方だ。だーかーら、部屋に帰ってゆっくり休め」
「え?ホントにいいの?やったぁやったぁ!…って、なんか隠してない?」
リオンがこんなに優しいなんて、何か裏がありそうだ…。
「へっ、なんともねーよ、それよりさっさと部屋帰ってやすめっ!」
そう言うとたなへ本を返し、足早に部屋を去って行った。
「ねぇ、リオンの様子おかしいよ」
「おかしくないおかしくない。ほら、さっさと部屋へ戻るゾ」
ガタガタと音を立ててチャットも席を立つ。
「さっ、今日は寝ましょ、イオンちゃん.明日は何をするのかしら?」
にこやかな笑みを浮かべ、クリスに言われた通りヘ部屋に帰ることにした自分。
「ルミナ、帰ろ…」
「あぁ」
音もたてず席をたち足音もたてず後ろからついてくる。
で、キースはもういなくなっている。
「…行動はやいよね、キースって…」
彼はいつの間にか僕たちの前を歩いていた。
「…言えるわけね−だろ、こんなこと…」
廊下をいらだたしそうに歩いているのはリオンだった。
「まだ俺たちはこの学園に来て半年しかいないし、魔法も習っちゃいないんだぞっ?!なんでいきなり…」
廊下。自分以外誰も歩いてはいない。そう、誰も歩いていないのだ。
「来た時から疑問はあったさ。なんで上がいないかってな。でも,あんな理由があったなんて…。くそっ!兄貴は何考えて俺たちをこの学校に入れさせたんだよ!」
頭をかきむしる。ここから逃げ出したい。
「盗み聞きするつもりなんてなかったのに…」
昨日だった。ただ、職員室の前を通ろうした時、先生の声が聞こえた。とても苦痛にみちた、泣き声にも似たような声を。だからつい、足を止めて聞いてしまった。
この学校の試験の事を。この学園の素性を。
「言えるわけ…ない…」
彼のつぶやきは広い廊下に響いていった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――確かに、リオンの様子は変だったさ。どうしたって言うんだ?お前が俺に勝負を挑んできた時みたいに、元気がないじゃないか…
自分の横のベッドで寝ている彼を見ながら考える。
――明日何が起こる?その事でお前は悩んでいるのか?なんでお前は明日起こることを知っている?
疑問はいくらでも浮かんでくる。
ベッドに寝転んで寝ようとするが寝れない自分がもどかしい。
と、
「…!」
隣で寝ていた彼がムクッと起きあがり、部屋を出て行く。
「……どこへ行くんだ?」
全く何も考えず、彼の後をつけてみる。彼は上へ上へ階段を上っていった。教室は自分たちの部屋より下にあるのだから忘れ物を取りにいくわけではないだろう。
彼は屋上まで上っていった。星でも見るのか?
ドアを少しだけ開けてリオンの様子をうかがおうとしたその時
「――…チャット、そこにいるんだろ。出てこいよ」
ばれてたか。
仕方なく彼の横まで歩いて行く。彼は空いっぱいに瞬く星を見上げていた。
「で、何のようだ?」
顔をこちらにむけず、彼は言った。
「別に.タダ眠れねぇ、お前と一緒だよ」
「そーか…」
『…………………』
何を話せばいいのだろう?全く分からない。
すると、
「イオンのこと、頼んでいいか?」
「えっ?」
彼が言った事が最初分からなかった。あいつは彼女の事で3日前から俺に突っかかっていたのに。
「これから何があるかわかんねぇ。俺がずっと一緒にいてやる事は不可能だ。だから、イオンの事守ってやってくれ。チャット、いや、シェルフォードと呼んでほうがいいか?」
「?!なんでその名前知って…」
「忘れたとは言わせないゼ、チャット。いや、シェルフォード。お前が俺の家にきた事は忘れてない」
すごい昔の事だから、忘れてると思ってたのに。なんてこった。
「イオンは覚えてないのか?覚えてるなら、いわないでくれ…」
彼の顔をのぞきこむように,そして願うようにして言う。
「お前の答え次第だ。守るか,守らないか」
ニイッっと彼がうっすら笑う。答えはわかっているのに聞いてくるなんてやな奴だ。
「昔お前の兄貴と約束したからな。守るに決まってるだろ」
「これで商談成立だ」
『…………………………』
二人とも何もしゃべらない。
そして先に重い口を開いたのは
「で,何があった?」
チャット、いや,シェルフォードだった。
「明日になればわかるよ…それに俺の口からは,とても、言えない」
彼の気持ちがなんとなく,自然に読めたのは,いつも見たことない苦々しい顔をしていたからだった。
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