――なんだろう…僕、浮いてるの?
<――私ノカワイイ娘…目ヲアケテ…――>
――………あなたは、森の神殿にいた人…?
<――アナタハモウワカッテイルハズ、翼ノ呪文ヲ…――>
――翼の、呪文?それってなあに…?
<――私ノカワイイ娘…アナタナラキット大丈夫…サァ、目ヲヒラキナサイ――>
――……あなたは、母…様…?
「――……う〜ん…なんだったのかなぁ…?」
なんかよく分からない夢を見た。今の夢、なんか見たことあるような気がする。気のせいかなぁ?
現在朝の3時。やな時間に起きちゃった。クリスとルミナ、起こすわけにもいかないし。
二度寝しようと思ったけど、
「…眠れないよぉ…」
仕方がないので私服に着替えて部屋を出てみてみる。誰かいないかと期待して。
「って、誰もいるわけないか…」
ちょっと愚痴をこぼしながら体技室に向う。なんとなく運動したくなったから。
「……夢の中で君に出会った…君は空へ翼を広げ飛んでいった…僕を降り返りもせず…」
昔兄さんに教えてもらった歌が口から自然にでてくる。
「…いつか君を追いかけたいから…僕……?続きってなんだったけ?」
とっても昔に教えてもらったから忘れてしまった。なんだったけ?僕に翼をください?僕
の背中に大きな翼を?わかんないなぁ…
そんな事を考えていたら、目の前に体技室のドアがあった。
「誰もいませんよね……あれ?キース…?」
体技室の中にはなんとキースがいた。片手に練習用の剣を持っている。
「……何しに来た…」
相変わらずの無愛想でキースが尋ねてきた。
が、あまり気にもせずイオンは
「えーっとね、ただ眠れないだけ…」
と、そばに片付けてある双カンって言うのかな?を手に取った。
「ね、運動に付き合ってくれないかな?」
手に持った双カンを自分流に構える。一番自分的に使いやすいのはこの武器だけだ。
「…いいだろう…」
そう言うと剣を構える。もちろん木だけど。
床を強く蹴る。最初に足を踏み出せばもう自分ではなくなる。そう、踏み出せば自然に勝てるのだ。
「クッ…」
キースの横で小さな風の音が鳴る。その横にはイオンの顔がいきなり現れる。こんなに近くで見たことはなかった。いつもと違う、全くなにも感情を持たない人形のように見える。
「…避けるだけじゃ、つまらないよ…」
小さく俺の耳元でつぶやく。なにかのゲームでもしているかのような言い方で。
「…そっちがその気なら本気でいってやろう…」
とても細い剣。だが動かすのにはとても便利だ。そう、俺の流派にはあっている。
相手の手首を狙う。双カンを片方落としただけであいつの負けは決定するからだ。
「…なかなか速いけど、僕について来れる?」
口が小さく笑っている。自分もだが、相手も。こんな相手はじめてだ。
二人の間合いが開く。次に二人が床を蹴れば勝負はつくだろう。
瞬時に間が狭くなる。そして、二人は相手の急所をめがけ飛び込んだ。
「……なかなかやるね…」
仰向けに転がっているイオンが言う。急所ははずしたようだがその避ける弾みでこけたらしい。
「……お前もなかなか腕がいい…」
こちらも急所から逃れるため寝転がっている。
「…なんかこんな本気で戦ったのはじめてだよ。やっぱり違う人格が出ちゃったね」
笑いながらイオンが起きあがる。
「…俺も本気になったのははじめてだ」
腹筋で起きあがったキースはどこかよく分からない方向を向いている。
「…どしたの?」
キースと同じ方向を向いてみるがなにもない。
「……俺は、結婚するのがイヤだったから、家を飛び出したんだ…」
「え?」
彼が自分の事を話すなんて思いもしなかった。
「1歳の時、一回会っただけ。名前も顔も、性格も知らない。いいなずけだから、ただそれだけで結婚させらせそうだったんだよ…」
目の向きは変えず、彼は話を続ける。
「少しは、少しは自分の道を自分で決めたかった。昔から、ずっと親が俺の進路をすべて決めたんだ。もう、こんなの、まっぴらだ…」
苦いものをすべて吐き出してしまいたい。こいつなら聞いてくれる。なぜかそう思った。
「だから、ここに逃げ込んだんだ。親の手が届かない、この学園に…」
「――でも、うらやましいな。僕の親、死んじゃったから…。それにまだ、1回しかあった事ないんでしょ?彼女に会ってみてから考えてみなよ」
彼女が俺の前で立ち止まる。優しい笑みを浮かべて。
「お前にそう言われると、会ってみたくなるな…。お前みたいな奴だとうれしいんだが」
顔を少し赤らめ、彼は言った。
「…ありがとな」
「ううん。僕もなんか変なもやもや、消えたから。こっちこそ付き合ってくれてありがとうございました」
二人は向かい合い、小さな笑みをこぼす。
「お前に意外な面、見られちまったな」
「僕も。いつもはあんなんじゃないからね」
彼らが外を見ると、朝日が登ってきた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「皆さん、集合したようですね」
なぜか入学式の時にいた、変なおやじが教卓の前になっている。
教室には入学式に見た全員の私服が見える。
「あれ?アザリー先生じゃないの?」
見た通りの質問をするイオン。
「今日は特別な行事があるのですよ。まあ、席について」
言われた通り皆自分の席につく。隣では席に座りながらもイオンがおやじを見ながら首をかしげている。
「これからあるものを配ります。絶対になくさないでくださいね」
そう言って手に持っていた皮袋から出したのは指輪だった。全員の席に置いていく。
「なんだコリャ?不良品か?」
石をはめる金具はあるのに、肝心の石が無い。
なんとなく机にに置かれた不良品のような指輪を中指にはめてみる。他のやつらも好きな指にはめている。
「?!ぬ、抜けない!!」
『えっっ?!』
ルミナの悲鳴と共に指輪を抜こうとしたが、抜けない。
「おっさん!どうなってんだヨ、これ!」
「――…時空よ…」
おやじがなにかつぶやくのが聞こえた。確かこれは、アザリー先生が使っていた、時空移動の魔法!
足元には入学式の時と同様に歪みが現れた。
「!!一体何が起こってるの?!ねぇ!おじさん!答えてよっ!!」
歪みに引き込まれながらも必死に抗うリオン。
「…無事を、祈っています」
完全に彼が視界から消えた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「――…痛たたたた…。ここ、どこだ?」
だいたいリオンの話を聞いて、分かってはいたがいきなりこんなとこ落とされるなんてな…。
「あ、チャットおはよ」
「今の時間『おはよ』はないだろ。俺たちどうやら、どっか学園から時空移動させられたらしいな」
頭をかきむしりながらゆっくり置き上がる。どこを見ても、木、木、木。どうやら森のようだ。
「他のみんな、どこ行ったのかな?あれ、これなんだ?」
そこには紙切れと金貨が入った小さなは話袋が落ちていた。
彼が紙切れを手に取る。
「えっと、なになに。今から魔法使い中級試験です?龍の加護を一人一回、半年以内に受けてください?!馬鹿言うなっ!んなこと一言も聞いて…」
「いいじゃん♪そのなんとかって言う加護を受ければいいんでしょ?それのついでにリオンやクリスやルミナやキース、探そうよ」
根本的に頭のつくりが間違っているイオンの意見は聞きたくない。が、他にやる事がない。
「しゃーない。その龍の加護とやら、受けたやろうじゃねえかっ!」
やけっぱちでチャットが叫ぶ。
「うんっ!」
「まぁっ!リオン様と一緒だなんて私幸せですわっ♪」
横で一人ではしゃいでいるクリスをしりめに、一人ため息をつく。
「やっぱり、言っておくべきだったのか…?」
いきなり海岸に落とされて、気がついたら横にいるのはクリスだけだった。先生の話を立ち聞きした通りだ。このあと、何が起こるかも・・・。
「まぁ、仕方が無い。手紙に書いてある通り、龍を探すか…」
「はい♪」
こうして海岸線を二人は歩き始めた。
「なんてお前となんだ?」
「気にするな」
やはりこの静かな二人組になってしまったようだ。ルミナとキースは草原に出たらしい。
「まぁいい、協力が必要なら力を貸す。お前はイオンの友達のようだからな」
全く感情がこもっていない言いかたで、キースは言った。
「では半年間、仲良くして頂けるかな?」
ルミナが手を差し出す。
「そう願うならそうしよう」
二人は軽く握手を交わした。
|