Harry Potter's Room

HARRY POTTER and the Order of the Phoenix


あらすじ2

第11章 The Sorting Hat's New Song

ルナは1年生のときからその馬が見えていたと言うが、ロンには今も見えていない。どうして自分は今年急に見えるようになったんだろう、と考えながら馬車に乗っていた。

城に入って、自分たちの寮のテーブルにつくとき、またしても生徒たちがハリーの方を見て何か言っているのがわかった。席に座って、先生たちのテーブルを見ると、やはりハグリッドがいない。ハーマイオニーが言った。「あれ、誰?」
見ると、ダンブルドアに耳打ちしている女性がいる。ずんぐりとした、短い茶色の髪にどピンクのヘアバンドをし、ローブの上からふわふわのピンクのカーディガンを着ていた。その人がゴブレットをすすろうと顔をこちらに向けたとき、ハリーは見た。青白い、カエルのような顔。たるんだ目。
「あのアンブリッジだ!」
「だれ?」
「ぼくの審問の時にいたんだ。ファッジのところで働いてるんだ」
なんでこんなところにいるんだろう?

やがて、1年生がマクゴナガル先生に連れられてやってきた。組分け帽子は歌った。
それはいつものように、4つの寮の違いや自分の役目についてのものだけではなかった。学校の危機が来ている、だから全校で力をあわせて乗り切ろう、というようなことまで歌った。ほとんど首無しニックによると、こういうことは時々あったということだ。なんで帽子にそんなことがわかるのかと言うと、どうもダンブルドアの部屋に置いてあるからでは、ということのようだ。
組分けが済むと、ダンブルドアがあいさつを始めた。
いつものように、森は危ない、だとかフィルチからの注意について述べた後、こう続けた。
「『魔法生物の扱い』を教えてくださるグラッブリー・プランク先生を再び迎えることができてうれしい。そして、アンブリッジ先生を紹介できることを光栄に思う。新しい『闇の魔術の防衛術』の先生じゃ」
そして、今年のクィディッチについて話そうとしたとき、横から「ヘン、ヘン」という咳払いが聞こえてきたので黙った。どうやらアンブリッジ先生がスピーチをしたがっているようだった。他の先生たちは、ダンブルドアのスピーチの途中に口をはさむなんて、という驚きを隠せないようだった。
そして、アンブリッジ先生は例の幼女のような声でスピーチを始めた。初めはにこやかにあいさつをしていたが、次第に事務的な口調で延々としゃべるので、みんな私語をしたりほかの事をしたりしていたが、彼女は気にも留めていないようだった。
スピーチが済んで、ハーマイオニーは言った。「いくつか大事なことが隠されてるわよ。魔法省がホグワーツに干渉して来るってことよ」

ハリーがグリフィンドールの談話室の入り口で新しいパスワードを知らなくて困っていると、ネビルが通りがかって教えてくれた。なんといっても彼が一度で覚えられたその言葉は、なんと「ミンブルス・ミンブレトニア」だった。
男子部屋に入ると、ディーン・トーマスとシーマス・フィネガンがいた。シーマスはお母さんから学校に戻って欲しくない、と言われたという。そしてそれは、ハリーのせいだという。日刊予言者新聞の記事を信じているからだ。そこへ監督生の仕事を終えたロンが戻ってきた。
ハリーやダンブルドアの言ったことを信じる信じないでけんかになった。どの家の両親もハリーのことを問題にしているのだろうか?
ディーンの両親はマグルなので知らないと言う。ネビルは言った。
「おばあちゃんは、悪くなっているのは日刊予言者新聞で、ダンブルドアじゃないって。新聞とるのやめたんだ。ぼくらはハリーを信じてる。おばあちゃんはいつも言ってる。「あの人」はいつか復活するって。ダンブルドアが『彼が戻ってきた』と言ったんなら、戻ってきたんだ、って」
ハリーはネビルに感謝したい気持ちだった。誰も何もいわなかった。
ベッドに寝転んで、最後にはぼくたちが正しいって分かるさ、と悲しい気持ちで思った。でも、そのときが来るまで、いったいどのくらいシーマスの時のようなことに耐えなくちゃならないんだろう。

第12章 Professor Umbridge

翌日の朝、大広間でアンジェリーナが話し掛けてきた。オリバー・ウッドが卒業してキーパーがいなくなったので、金曜の5時から入団テストをしようと思うから、メンバーは全員集合、とのことだった。
その後で、マクゴナガル先生が新学期の時間割を配って回った。ロンはそれを見てうめいた。というのも、月曜日、つまり今日の日課が「魔法史、魔法薬学2時間、占い学、闇の魔法の防衛術2時間」というものだったからだ。
そのうめき声にフレッドとジョージが反応した。「5年生はO.W.Lの年だからな。5年目の悪夢だよな、結果を気にするんなら。でも、俺たちは学問の世界の向こうに俺たちの未来があるような気がするんだよな」
2人はN.E.W.Tの結果なんかいらない、今年はホグワーツの生徒の嗜好を探る年にするんだ、とも言った。二人はジョーク・ショップを開業するつもりなのだ。ハーマイオニーとロンはその資金の出所をいぶかしんだ。

歴史の授業が終わって3人で移動していると、チョウが珍しく一人で話し掛けてきた。しかし、チョウの胸にプロのクィディッチ・チームのバッジがついているのを見つけたロンが、チョウにいろいろ話し掛けたせいでまたしてもチョウは去ってしまった。姿が見えなくなってから、ハーマイオニーはロンに、「気が利かないわね」と忠告するも、ロンにはなんのことか全然通じていないようだった。
ハリーはハリーで、チョウはセドリックの彼女だったのに、セドリックが死んでも憎んだりしないし、また他の友だちのように怖がったりもしないでこの2日で2回も話し掛けてきてくれた、ということでいい気持ちになっていた。
しかし、その気持ちは魔法薬学の実習の失敗によって沈んでしまった。スネイプに「意味なし」、と言われた鍋の中身は「エヴァネスコ」の呪文で空にされてしまった。結果が提出できなければ0点だ。
今年度の「占い学」は、「夢占い」だ、とトレロウニー先生は言った。「最近見た夢について、『夢のお告げ』の本を見てやってみましょう」
ロンは、夢なんか覚えてない、と言ったが、「そういえば、いつか自分がクィディッチをやってる夢を見たよ。これってどういうことかなあ?」とハリーに聞いた。
「たぶん、でかいマシュマロかなんかに食われるだろう、って」ハリーは興味なさそうに本をめくって言った。

闇の魔術の防衛術の教室では、すでにアンブリッジ先生は座っていた。授業を始める前に、あいさつの仕方や、挙手の仕方を教えた。そして言った。
「いつも先生が変わっているので、少し混乱したり、ばらばらになったりしているようですね。ここで、基本的な原則に戻ってみることにします。『防御魔法論』の第1章を読みなさい」
しかし、ハーマイオニーは本も開けず、じっとアンブリッジを見つめていた。しばらくすると、みんながハーマイオニーの動向を見つめていた。やがて、アンブリッジ先生はそれ以上無視することはできず、「なにかこの章で質問でも?」と聞いた。
「いいえ、授業の目的について疑問があります。この中には防御魔法を『使用する』ということが書かれていません。闇の魔術の防衛術、というのは防御魔法を練習する、ということが本来の目的なのではないでしょうか?」
ハーマイオニーの質問を受けて、次々とみんなが質問した。しかし、アンブリッジは答えた。 「防御魔法はリスクのない安全な環境で学ばなくては。教室で襲撃される、ってことはないでしょう?理論を学ぶことが大切なのです」
ハリーがこぶしを突き上げて大声で叫んだ。
「現実の世界で理論がなんの役に立つんですか?」
「ここは学校でしょう、ポッター君、現実世界ではありませんよ」
「じゃ、外の世界で待ち受けていることに何の準備もできない、ってことですね?」
「外の世界にも、何にも待ち受けていることなんかありませんよ、ポッター君。誰があなたたちのような子どもを襲いたいとでも思ってると言うの?」
「例えば・・・・ヴォルデモート卿とか?」
「いつも言っているように、それは、ウソです」
「ウソじゃありません!」
「居残りを命じます、ポッター君。明日の5時から、私の事務室で」
それでもハリーは引き下がらなかった。すると、アンブリッジは何かを紙に書いて、マクゴナガル先生に渡すように言った。ハリーはそれを受け取ると、きびすを返して出て行った。
マクゴナガル先生はそれを読んで、ハリーを座らせた。
「アンブリッジ先生の前で無作法なことをすると、どんどん寮の減点と居残りがかさみますよ。あの人がどこからきたのか考えて、もっと頭を使いなさい。明日から一週間居残り、ってかいてありますよ。あの人のスピーチを覚えているでしょう?」
「ええ、・・・魔法省がホグワーツに干渉して来る、っていう意味だと・・・」
「ハーマイオニー・グレンジャーの言うことを聞いていてうれしいわ」

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第13章 Detention with Doloress

アンブリッジの授業の後の夕食の席では、ハリーの話はあっという間に広がり、もう一度大声を出させようと言うのか、ハリーに聞こえよがしにいろいろ言うものがいた。ハリーは耐えられなくなって、談話室に戻った。ハーマイオニーたちもついていった。宿題をしていると、そのうちにみんなも夕食から帰ってきて、フレッドとジョージとリーが何も知らない1年生を相手にサボリ菓子を試し始めた。それを見たハーマイオニーは度が過ぎてる、と注意しに行った。そして、「もう宿題できないから寝るわ」と言いながら、バッグの中からなにか毛糸の塊のようなものを二つ取り出した。どうやら帽子らしい。屋敷しもべ妖精のためらしい。ロンは「自由になりたくなんかないやつをだますのかい?」と聞いたが、「自由になりたいに決まってるじゃない!」とハーマイオニーは答えた。

授業では、フリットウィック先生もマクゴナガル先生もO.W.Lの重要性を説き、がんがん宿題を出した。グラッブリー・プランク先生の授業はハグリッドの小屋の近くで行われた。ハリーは、先生のそばに行った際に、「ハグリッドはどうしてるんですか?」と聞いたが、「心配ないですよ」としか答えはなかった。その代わりに、ドラコがハリーのそばで声をひそめて言った。
「たぶん、あの馬鹿なでか物は大怪我でもしてるだろうさ」
「たぶん、黙らないとお前がそうなるね」
「たぶん、あいつにとってでかすぎるんで困ってんじゃないの?言ってること分かる?」
きっとドラコは何か知っているに違いない。
移動の途中、ジニーを含めた4年生が温室から出てくるのに出会った。ルナは相変わらす変な恰好をしていて、笑われていた。ルナはハリーに近づいて一気に「あの人が戻ってきたってことも、あの人と戦ったってことも信じてるわ」と言った。しかし、ハーマイオニーに、ルナはホントかどうか分からないことばかり信じている、と言われ、あの馬が見えると言ったことも疑わしくなってしまった。あの子はうそつきなのか?
城へ戻ると、今度はアンジェリーナにつかまった。「みんなでキーパーの入団テストをするって言ったのに、いないってどういうこと?」
「アンブリッジに居残りを受けたから」
「金曜日ははずしてもらいなさいよ。『あの人』のことはどうでもいいから、とにかく行けるようにして!」

5時になり、ハリーはアンブリッジの事務室に行った。部屋はレースのカバーでいっぱいだった。初めにハリーは、クィディッチの件を頼んでみたが、やはりだめだった。
アンブリッジはハリーに長く、細い黒の羽ペンを渡した。そのペン先は妙にとがっていた。
「『ぼくは嘘をつきません』と書いて欲しいの」
「何回ですか?」
「あら、その言葉が染み込むまでよ」
そう言ってアンブリッジは自分の机に向かった。ハリーは書き始めようとして気がついた。
「インクがないんですけど」
「あら、インクは必要ないのよ」
ハリーは紙の上に書いた。「ぼくは嘘をつきません」痛みが走った。すると、紙の上に真っ赤なインクで言葉が現れた。と同時に、ハリーの右手の甲に、メスで切ったように同じ文字が刻まれた。そしてその傷はみるみる治ったが、かすかに赤く残っていた。
何度も何度も書いた。外はすっかり暗くなって、しばらくしてアンブリッジが呼んだ。そして、手を見せるように言った。アンブリッジは手を見た。「まだね。明日もしましょうね。行きなさい」

ハリーは宿題が何もできず、そのため授業でうまくいかず、アンジェリーナにも呆れられてしまった。「居残りなんだから!クィディッチよりあのカエルと部屋に篭っているほうがいいわけないじゃないか!」
「でも、字を書くだけなんでしょ?」
ハリーはロンにもハーマイオニーにも本当のことは言わなかった。怖がるところを見たくなかったからだ。
木曜日も同じように過ぎていった。アンブリッジはハリーの手を見て、「これでいつでも思い出せるでしょう?帰っていいわよ」と言った。ハリーは、「明日も来なくちゃいけないんですか?」と聞いた。
「そうね、もう1日あれば、もう少し深く刻み込めるわね」
あいつは悪党だ、曲がってる、狂ってる・・・・
帰る途中でロンに会った。ひどく慌てていたが、キーパーテストを受けるつもりだと白状した。
金曜日の5時、ハリーはいつものようにアンブリッジの部屋にいた。窓からかすかにクィディッチの様子が見えた。最後に手を見せた時、手ではなく、額に痛みが走った。「痛むでしょう?」手の事?それとも・・・
談話室に戻ると、ロンが駆け寄ってきた。「やったよ!キーパーだ!」

ハリーはハーマイオニーに、アンブリッジはあの人に操られてるかどうか相談したが、とにかくダンブルドアのところに行ってみる様に言われた。しかし、そんなことでわずらわせても・・・シリウスに手紙を書いてみる、と言ったらとんでもない!と注意された。途中で誰にも見られないと言う保証はないのだから。

第14章 Percy and Padfoot

翌日早起きしてハリーは、シリウスに手紙を書いた。伝えたいことがありすぎると書きにくい、ということが分かってロンとハーマイオニーが言っていた意味が分かった気がした。それに、シリウス宛だと分からないようにしなくては。長いことかかって、ごく短い手紙を書き終え、ふくろう小屋に行った。ヘドウィグに持たせて送り出したところで、ドアが開いた。チョウだった。彼女は母親の誕生日だと思い出して、来たのだという。なにか、いいことでも言わなくちゃ、と思ったがなかなか気の利く言葉が出ない。
「いい天気だね」
天気のことなんて、と我ながら情けなく思っていると、
「グリフィンドールは新しいキーパーが決まったの?」
と聞いてきたので、ロンが決まったことを伝えた。上手かどうかはアンブリッジの居残りのせいで見られなかったから分からない、と言うと、
「あれはアンブリッジが悪いのよ。あなたはどうやって・・・どうやって彼が死んだのか本当のことを言っただけなのに。彼女にあんな風にできるなんて、本当に勇敢ね」
と言ってくれたのでとてもうれしかった。すると、そこへフィルチが現れて、ハリーにあらぬ疑いをかけてきたのだが、チョウが証言してくれたおかげで、フィルチは引き下がっていった。
彼女はセドリックが好きだったのは分かってるけど・・・ダンスパーティーの時セドリックより先に申し込んでいたら、まるっきり違うことになっていたかもしれないのに・・・

朝食の席で、いつものように日刊予言者新聞の配達を受けたハーマイオニーは、「シリウスがロンドンに現れた」という記事を見て、ルシウス・マルフォイが言ったに違いないと読んだ。さらに、隅のほうに小さく、「スタージス・ポドモアが夜中の1時に魔法省に不法侵入し、アズカバンに禁固6ヶ月」という記事を見つけた。彼は騎士団のメンバーのはず。なんだってそんな時間に?

クィディッチの練習の前に、ロンはハリーに練習を見てもらった。ハリーが見る限り、ロンはとても上手だった。ゴールの3/4は守った。
その後、メンバーが勢ぞろいし、チーム練習をすることになったのだが、競技場にはスリザリンのクィディッチチームが見に来ており、やじっていた。アンジェリーナは無視するように言ったのだが、それからのロンは散々だった。ボールは落とすし、アリシアの顔にぶつけて鼻血を出さすし・・・

次の日、3人は談話室に篭ってたまっている宿題を片付けていた。夜になって、1羽のふくろうがやってきた。それはヘルメス、パーシーのふくろうだ。何を伝えに来たんだろう、と3人は思った。ロンは読んでいたが、先に行くほど、いやな顔になっていった。ロンの後で二人も一緒に読んだ。
それは、ロンの監督生のお祝いとともに、ダンブルドアやハリーの批判が書いてあったからだ。そして、何かあったらアンブリッジに相談するように、とも書かれていた。さらに、明日の日刊予言者新聞を見て欲しいことも。
ロンは、パーシーは世界一の大馬鹿だ、と言って手紙を破り捨てた。ハーマイオニーは急にロンの宿題を見てあげる、と言い出した。
ハリーは、暖炉の火を見ながら考えていた。学校の半数の生徒がハリーのことを変な風に思っていることを今では知っていたが、同じ寮の監督生でもあり、クィディッチのワールドカップを見に行った時は同じテントで過ごしたこともあり、3大魔法学校選手権の第2の課題の際には満点をつけてくれもしたパーシーまでもが、ハリーのことを、錯乱してる、とか暴力的なところもある、と考えているなんて・・・シリウスも14年間殺人者とか言われて人々から恐れられていることを思い出し、こんな気持ちなんだな、と同情的になった。
ん?今、火の中に何かなかったか?いや、そんなはずは・・・今シリウスのことを考えてたからだよな・・・と思いながらハリーは暖炉の前にかがみこんでいた。
「ハリー、何やってんの?」
「シリウスの頭が見えたんだ」
「今、そんなことできるわけないじゃない、それはあまりにも・・・・シリウス!」
やはり、シリウスだった。ハリーの手紙に答えようと思って来たのだと言う。二人はハリーが手紙を送っていたことを知らなかった。ハリーも実は、チョウのことがあって言うのを忘れていたし、送ったことすら忘れていた。
ハリーの傷のこと、アンブリッジのことをいろいろ話した。アンブリッジが2年前、反人狼法制定にかかわったおかげでルーピンは仕事につくことがほとんど不可能になってしまったこと。
彼女が、授業で魔法の使用をさせないのは、魔法の訓練によってダンブルドアが私設軍隊を作って、魔法省に乗り込んでくるのをファッジが恐れているからだと言う。
「それって、ルナ・ラブグッドがしゃべったことを含めてもぼくが聞いた中で一番馬鹿げてるよ」
しばらくの間をおいて、ロンはそう言った。
ハグリッドは、マダム・マキシムと一緒に出かけたが、今は分かれていること。もう帰路についていると思うが、何をしてるのかはだれも知らないが、きっと元気だということ。
「ところで、次のホグスミード行きはいつだい?犬に変身して行こうかなと思うんだけど?」
シリウスのこの言葉に、3人は猛反対した。
「もうアズカバンに戻って欲しくないだけなんだ!」
とハリーが言った。
「思ったほど、君はお父さんに似てないんだな。危険なことほどジェイムズにとっては楽しみだったのに」

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第15章 The Hogwarts High Inquisitor

翌日の日刊予言者新聞を3人は見た。1面には微笑むドロレス・アンブリッジの写真が大きく載っていた。「魔法省は教育改革を模索している ドロレス・アンブリッジを初めての”高級調査官”に指名」 という見出しが載っていた。ホグワーツの先生の授業を視察し、その職にふさわしいかどうか決められる権限をもつ、ということらしい。
しかし、ビンス先生の魔法史の授業にも、スネイプの魔法薬学の授業にもアンブリッジは来なかった。ハリーは宿題のエッセイを返してもらったが、隅のほうに大きな黒い文字で”D”と書かれていた。
午後の授業はトレロウニー先生の「占い学」だった。そこにアンブリッジはいた。今日も「夢のお告げ」の続きだった。アンブリッジはトレロウニー先生のあとをついて回りながら、メモをクリップボードに書いていた。授業の終わりにアンブリッジ先生は「私のことを何か予言してくださいな」と頼んだ。初めは人に頼まれてするものではない、と断ったのだが、アンブリッジがクリップボードに何か書いたので仕方なくすることにした。
「残念ですが・・・残念ですが、あなたは相当な危険の中にいます!」

次はアンブリッジの授業だった。今日は2章を読む予定だったが、またしてもハーマイオニーが意見した。筆者の考えに反論したのだ。ちょっとしか分かっていないような子供に意見をきくところではない、とアンブリッジが説教している中にふとクィレル先生の名前が混じった。ハリーはすかさずそれに食いつき、
「クィレル先生は立派な先生でした、ヴォルデモート卿に後ろ頭を貼り付けられる、という障害をもっていましたし」
と言って、またも1週間の居残りを命じられた。せっかく治りかけていた手も、血が滴り落ちるまでになった。しかし、ハリーは不満も言わなかった。アンブリッジを満足させたくないからだ。
しかし、アンジェリーナは大いに不満だった。大広間で大声で文句を言っているところを、マクゴナガル先生に見咎められた。マクゴナガル先生も、そのわけがハリーの失言によるものだと知ると、ハリーからも5点を減点したのだ。ハーマイオニーも不当だ、と思ったけれども、ハリーにはいい薬になるだろうと思っていた。

マクゴナガル先生の授業にアンブリッジが視察に来た。マクゴナガル先生は、アンブリッジがそこにいないかのようにいつものように授業を始めた。「ヘン、ヘン」咳払いが聞こえた。何か言いたげだ。しかし無視。またも、「ヘン、ヘン」という声。
「だいたい、私が話しているときに人が話しているのは許さないんですけど」
これにはアンブリッジも黙ったが、その代わり猛烈にクリップボードに書き込みを始めた。授業中はトレロウニーにしたように後をついては回らなかった。
授業が済んで、勤続は何年か?と聞いて、「10日以内に結果が通知されます」と言うと、「待ちきれませんわね」と冷たい、無関心な声でマクゴナガル先生は答えた。
その次はグラッブリー・プランク先生の視察だった。代替なのはなぜか、と尋ねられたが、グラッブリー先生もよく知らないようだった。
「この授業で、だれか怪我をしたと聞いたんですけど?」
「ぼくです。ヒポグリフにやられたんです」とマルフォイが答えた。
「ハグリッドの言うことを聞かなかっただけのことです」とハリーが怒って言うと、アンブリッジがゆっくり振り返っていった。
「もう一晩、居残りね」

その夜、ハーマイオニーは言った。
「彼女はおそろしい人よ。あの人からは全然防御について学べないわ。自分達でなんとかする時が来た、と思うの。自分達で闇の魔術の防衛術について勉強するのよ」
「ちょっと待ってよ、まだ余分の仕事をさせる気?ぼくたち、始まって2週間なのに宿題がすごく遅れてるんだぜ」
「でも、これは宿題よりも大切なことなのよ!」
「宇宙中でも、宿題より大切なものなんかないと思うよ」
「馬鹿言わないでよ、あるわよ!先生が必要ね。呪文の使い方をちゃんと教えてくれたり、間違ってたら直してくれるような人が」
「ルーピン先生?」
「あの人は騎士団の仕事で忙しすぎるし、それにホグスミードに行った時ぐらいしかあえないわ」
「じゃ、だれさ?」
「分かってるじゃない?あなたのことを言ってるのよ、ハリー」
ハリーは突然のことに狼狽した。それに今まで体験があるといっても、自分だけの力ではない。散々反論した。だが、ハーマイオニーの「ヴォルデモートに対峙する、というのはどんななのか知っておく必要がある」という言葉で引き受けることにした。
だが、この落ち着かない夜は、彼にまたも長い廊下と鍵のかかったドアの夢を見させ、次の日は再び、傷が痛むこととなった。

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第16章 In the Hog's Head

ハーマイオニーはそれから丸2週間、自分が提案した計画について何も言わなかった。
9月の終わりの夕方、3人は図書館で魔法薬の材料について調べていた。
「わたしね、あなたが闇の魔術の防衛術についてもう何も考えてないんじゃないかって思ってるんだけど、ハリー」
「もちろん考えてるさ、あの鬼婆が教えてるんじゃ忘れようにも忘れられないだろ」
「そうじゃなくて、あなたが教えてくれるって話の方」
「ああ、す、少しはね」
「それで?」
「わからないよ」
「あなたは支配の呪いを完全に退けた唯一の人だし、パトロナスだって出せる。大人の人にだってできないようなことがいろいろできる、ってヴィクトールはいつも言ってたわ」
「でも、君ら以外にぼくに教えて欲しいっていう人がいるかどうか疑問だね。ぼくは変わり者だから、覚えてるだろう?」
「じゃ、10月の第一週目の週末がホグスミード行きだってことは知ってるわね。私たちの話に興味を持って、会って話がしたいっていう人たちとそこで話し合う、ってのはどうかしら?私たちがしようとしていることをアンブリッジが知ったらうれしく思わないでしょうからね」

ホグスミードに着いて、3人は村のはずれの方へ歩いていった。
「どこ行くの?『3本の箒』?」
「いいえ、あそこはいつも込んでるし、ほんとに騒がしいもの。みんなには『豚の頭』っていう、大通りからはずれたところにある別のパブを言っておいたの。あそこはちょっと・・・・危ないんだけど、生徒は普通はあまり行かないし、盗み聞きもされないでしょうからね」
ハリーは1年生のとき、ハグリッドに「豚の頭では面白いやつらにいっぱい会えるぞ」と言われたのを思い出した。店内にはフードをかぶった客が3人と、ベールをかぶった魔女が一人いた。
「こんなところで会って、大丈夫なのかい?」
「ええ、校則を2重3重にもチェックしたから」
「で、だれに来るように言ったの?」
「ほんの2,3人よ」
ところが、ドアが開いて、ネビルやディーン、ラベンダーをはじめ、他の寮生や学年の違う人たちまで、ぞろぞろと入ってきたではないか。その中にはチョウもいた。総勢25人だ。
「2,3人?2,3人だって?」

ハーマイオニーは彼らに計画の趣旨を話した。興味を持って、来ているだけにほとんどのものは乗り気だった。
「あの人が戻ってきた、っていう証拠は?」
突然、金髪のハッフルパフの少年が攻撃的な声で聞いてきた。彼はザカリアス・スミスと言う名前だった。
「証拠?僕は彼を見たんだ。ダンブルドアが去年、全校に何があったか言っただろう。君がダンブルドアを信じられないなら、僕のことも信じられないだろうね。僕は人を説得するのに、午後の時間を無駄にするつもりはないしね」
その後、みんなはハリーがこの4年間でどんなにすごいことをしたか話し始めて盛り上がっていた。が、ハーマイオニーが話を元に戻して、いつ、どこで集合するか、という点について話し始めた。クィディッチの練習があるから、夜がいいだろうということ。しかし、場所についてはいいところがない。そこで、ハーマイオニーは場所が見つかり次第、一回目の会合について連絡するから、紙に名前を書いて欲しい、と提案した。
すると、それまで乗り気だった生徒の何人かは尻込みを始めた。もし、この紙がアンブリッジに見つかったら・・・
「わたしがこのリストをその辺にほったらかしにするとでも思ってるの?」
試すように言うハーマイオニーの声に、しぶしぶサインをした。
全員のサインを確かめると、ハーマイオニーは慎重にかばんに入れた。

帰り際、チョウはハリーに手を振って帰っていった。
みんなが帰ったあと、ハーマイオニーが今日のことを振り返っているとき、「マイケル・コーナーなんかジニーと付き合ってなきゃ来なかったでしょうしね」ということばを聞いて、ロンが驚き、「いつだ?だれだ?なんで俺に言わないんだ?」とハーマイオニーに詰め寄った。「そんなだからよ」
「ところで、チョウとあなたはどうなのよ?彼女、あなたから目が離せなかったみたいでしょ?」
ハリーは、それを聞いてホグスミードの村がこんなにも美しいと思えたことはなかった。

第17章 Educational Decree Number Twenty-Four

月曜日の朝、グリフィンドールの談話室の掲示板いっぱいに掲示物が貼られていた。それは、黒文字で印刷され、サインと公的な印章が記されたものだった。
内容は、「すべての生徒の組織、集団、チーム、グループ、クラブは高級調査官の許可なしには認めない。4人以上のものが対象。許可のないものは見つけ次第退学 教育法例第24条による」
というものだった。
これは偶然の一致ではない。あのことをアンブリッジは知っている。「だれかがあいつにしゃべったんだ」というロンに、「それはできないはずだわ」とハーマイオニーは答えた。なぜなら、名前を書いてもらった紙にはお呪いをかけており、そんなことをしたらすぐに誰だか分かるし、その人も後悔するようになっているからだ。
大広間では、他の寮生たちが3人に様子を聞きに来ようとするので、ハーマイオニーは制止した。
また、アンジェリーナは「あの法例にはクィディッチチームも含まれるのよ。許可をもらいに行かなくちゃ。だから、これ以上かんしゃくを起こさないでね」とハリーに告げた。

アンブリッジはビンス先生の授業には来なかった。いつものように退屈な授業を聞いていると、ハーマイオニーがハリーを突っついてきた。「何?」と言うと、窓の方を指差した。そこにはヘドウィグが手紙をつけてやってきていた。しかし、朝の郵便の時間じゃなくて今来る、というのがハリーにはわからなかった。そのうち、みんなもビンス先生の話より、ヘドウィグに気をとられ始めたので、ハリーはこっそり席を離れて窓を開けた。すると、ヘドウィグは飛び込んできた。仕方なくハリーはヘドウィグを肩に乗せて、こっそり席に戻り、椅子に座ってヘドウィグを膝に乗せた。すると、羽のあちこちを痛めていることが分かった。ハリーは、ビンス先生に「具合が悪いので保健室に行きます」と言って、ヘドウィグを連れて出た。
ヘドウィグを治してくれるような人、といって思い当たるのはハグリッドだが、どこにいるか分からない。ほかにはグラッブリー・プランク先生ぐらいだ。授業がない時は職員室にいるのだろうか。
職員室をノックすると、出てきたのはマクゴナガル先生だった。「また居残りを受けたんじゃないでしょうね!」
「違うんです。グラッブリー・プランク先生を探してるんです。僕のふくろうが怪我してるんです!」
肩越しにグラッブリー・プランク先生は現れた。いろいろ見てくれた。「何かに襲われたんだね。テストラルは時々鳥をやるけどね、もちろんハグリッドはホグワーツのテストラルたちをふくろうを襲うようにはしつけてないけどね」
テストラルって何だ?と思いながら聞いてると、マクゴナガル先生が聞いた。
「そのふくろうはどこまで行ったのか知っているの、ポッター?」
「えっと、ロンドンからだと思います」
目を合わせたそのときにマクゴナガル先生はロンドン = グリモールドプレイス12番地だと察しがついたようだ。
「覚えておきなさい。ホグワーツに出入りする通信の類は見張られている、ということをね」
廊下を行き交う生徒たちが増えてきたので、それ以上先生とは何も話せなかった。
ハリーは手紙を見た。「今日 いつもの時間に いつもの場所で」

魔法薬学の時間の前にマルフォイが騒いでいた。ハリーたちを怒らせようというのはいつものことだ。
「僕の父さんは魔法省がポッターをセント・ムンゴに送るのも時間の問題だって言ってたよ・・・あそこは魔法で頭がイカレちゃったやつらが行く特別なところだからね」
しかし、そのときマルフォイの方に飛び出していったのは、ネビルだった。ハリーとロンが2人がかりでとめているとき、スネイプが入ってきて、減点を食らった。
みんなはネビルの意外な行動に驚いていたが、ハリーには分かっていた。しかし、ダンブルドアとの約束を守って誰にも言っていない。ネビルもハリーが知っていることは知らないだろう。
この授業にはアンブリッジが来ていた。ハリーは2人の会話が気になって、またしても魔法薬作りに失敗し、宿題をもらう羽目になった。

占い学では、トレロウニー先生はいい結果が来なかったようで、泣き崩れていた。「こんな侮辱を受けたのは初めて。「予見者」はいつも恐れられ、迫害されるのよ。それが・・・ああ、私たちの宿命なの」

夕方、アンジェリーナはグリフィンドールのクィディッチチームの許可がすぐ下りなかったことにがっかりしていた。
談話室では、フレッドとジョージ、リーがついに完成したサボリ菓子の一つ、「ゲロトローチ」のデモンストレーションをしていた。すでに24ガレオンも儲けたらしい。
やがて、それも終わり談話室に人気がなくなると暖炉にシリウスの頭が現れた。シリウスは3人が立ち上げた団体のことを知っていた。なぜなら、バー「豚の頭」にマンダンガスがいて、すべて聞いていたからだ。ロンのお母さんはそれにはものすごく反対している、と伝えた。
「じゃ、シリウスもぼくに参加しません、て言って欲しいんでしょ?」
「俺が?いいや!そりゃすごいアイディアだと思ってるさ」
場所のことについて、いいところがないか話し合っていたそのとき、不意にシリウスは緊張した顔をしたかと思うと、消えた。
「何で、彼は・・・?」とハリーが振り返ってロンとハーマイオニーを見たとき、ハーマイオニーは驚きの声をあげて飛び上がった。
手が、炎の中に現れたのだ。短い指に醜い流行おくれの指輪をした腕が、何かをつかもうとうごめいていた。3人は逃げ出した。ハリーは寮へのドアまで来て振り返ると、アンブリッジの手はまだ炎の中を動いていた。

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第18章 Dumbledore's Army

「アンブリッジはあなたの手紙を読んだのよ。説明はいらないわ」
「アンブリッジがヘドウィグを襲ったってこと?」
「ほぼ間違いないわね」
「昨日、アンブリッジはどこまで彼に近づいたか分かってるのかが疑問だわ」
「もし、スナッフルを捕まえてたら・・・・」
「おそらく今朝にはアズカバンに戻されてるでしょうね」
「もう、二度と馬鹿なことはしないと思うけどね」

アンジェリーナはマクゴナガル先生にかけあってグリフィンドールのクィディッチ・チームの許可をもらってきた。夕方7時に競技場に集まった。天気は悪く、練習は思うようにいかなかった。
「痛っ!!」更衣室でタオルで顔を拭いているとき、額にここ数ヶ月で一番の痛みが走った。人気がなくなってから、ロンがハリーに聞いた。「どうした?傷かい?」ハリーはうなずいた。
「でも、近くにいるはずはないよね?」
「うん、たぶんずっと遠くにいる。痛いのは・・・・彼が・・・・・怒ってるからだ」
「見えるの?」
「彼は何かをやりたいんだ。でも、なかなか進まないんだ」
「なんで分かるの?じゃ、前の時は?アンブリッジの事務室で痛んだのは?「あの人」は怒ってたの?」
「前の時は、すっごく、すっごく喜んでたんだ。何かいいことがあったんだ」
「トレロウニーから受け継いだんじゃないの?」
「予言をしてるわけじゃないよ」
「でも、君は「あの人」の心を読んでるんだよ」
「いや、なんていうか・・・気分のようなものだ」

ハリーは談話室で宿題をしながらうたたねをしていた。
彼は再び窓のない廊下を歩いていた。静寂の中に彼の足音がこだましていた。道の奥にドアがぼんやりと見えてきたとき、心臓が興奮で早まった・・・・開けられさえすれば・・・中に入れる・・・・
彼は手を伸ばした・・・・指先があと数インチ・・・・
「ハリー・ポッター様!」
ハリーは起きた。ドビーだった。ドビーは今までにハーマイオニーが編んだ帽子を全部かぶっていた。
「あなた様のふくろうをお連れしました」
ドビーはハリーをお助けする、というので例の会を開く場所について尋ねると、思いがけない答えが返ってきた。
「ドビーめはぴったりの場所を知っております。他の屋敷しもべ妖精から聞いたんですが「見え隠れの部屋」または「お願いの部屋」とも呼ばれているところです」
どうやら、その部屋は本当にその部屋を必要とする者の願いに答えて現れるらしい。部屋の中はその願いに応じて違うという、まさに願ってもない部屋のことだった。しかし、その部屋の存在を知っている人はほとんどいないので、偶然その部屋に行った人は二度とたどり着けないことが多いとも言われる。

次の日、連絡を回し、夜の8時に集合した。彼らは集中して願った。
すると、ピカピカに磨かれたドアが壁の中から現れた。中に入ると、壁には木製の本棚が並び、床には椅子の代わりに大きな絹のクッションがあった。部屋の端には、ムーディの事務室にあったような道具が入った棚もあった。
「リーダーを決めなくちゃ」ハーマイオニーが言った。
「ハリーがリーダーよ」すぐにチョウが答えた。みんなも手を挙げたので決まった。
「会の名前も決めなくてはね」
「反アンブリッジ同盟っていうのは?」
「魔法省は低脳集団とか」
「防衛(Defense)連合(Association)は?略してD.A。しゃべってても何のことか分からないわよ」チョウが言った。
「ええ、D.Aはいいわね。ただ、魔法省が一番恐れるダンブルドアの軍隊(Dumbledore's Army)を表す、ってことにしたら?」ジニーが言った。
ということでハーマイオニーはいつか名前を書いてもらった紙の上に「ダンブルドアの軍隊」と大きく書いて壁に貼った。

練習が始まった。まず、エクスペリラマス(武装解除)の呪文の練習から始めた。2人組でかけあうのだ。ネビルのペアがいないのでハリーが相手をした。ネビルも成功した。「やった!今までできたことなかったのに・・・やった!」
ハリーはその後みんなの練習の様子を見て回った。チョウのところへ行くのは避けていたのだが、もはや無視できなくなった。ハリーが近づくのを感じて、チョウは慌てた。そして呪文を失敗し、相手のマリエッタの袖を焼いてしまった。しかし、マリエッタはハリーのせいだといわんばかりにハリーを見た。ハリーとチョウが楽しそうに話すのを苦々しそうに見て、顔をそむけた。
時間になり、解散となった。ハリーはマラウダーの地図を見ながら慎重にみんなを誘導した。

第19章 The Lion and the Serpent

その後D.Aの集まりは3度あり、みんな目覚しい進歩を遂げていた。ハーマイオニーはみんなへの連絡手段として、仕掛けを施した偽の1ガレオン金貨をみんなに持たせた。これで異なる寮の者が大広間でしょっちゅう話して怪しまれなくて済むようになった。
しかし、クィディッチのシーズンが始まり、会合はしばしお預けになった。グリフィンドールの第1試合はスリザリンとだ。なかなか練習場がとれなかったりしたが、ハリーはマルフォイがいるチームには負けたことがなかったので楽観的だった。
11月に入り、試合当日の朝は晴れていたが寒かった。ロンはとても緊張していた。「ぼくはだめなんだ」
そんなロンを励まし、朝食をとりに大広間へ向かった。
「こんにちは」と彼らの後ろから声がした。ルナ・ラブグッドがレイブンクローのテーブルから来ていた。多くの人がその姿を見つめ、何人かはあからさまに彼女を指差して笑った。彼女の頭に本物のライオンの頭と同じ大きさの形をした帽子があぶなっかしげに乗っていたからだ。
「いいでしょう、これ。これでスリザリンの象徴の蛇をかみくだくようにしたかったのよね。でも、時間がなかったのよ。ま、とにかく・・・・頑張ってね、ロナルド」
しかし、ロンは何も食べられなかった。ハーマイオニーがハリーの腕を引いて言った。
「ロンにスリザリンのバッジを見せちゃだめよ」
そして、「頑張ってね、ロン」とつま先立ってロンのほほにキスをした。ロンはハーマイオニーがキスしてくれたところにさわりながらも、何が起こったのか分からないような顔で大広間から出て行った。
スリザリンのバッジは、王冠の形をしていて「ウィーズリーは僕らの王様」という文字が彫ってあった。

試合が始まった。実況はおなじみのリー・ジョーダンが行っていた。応援席ではスリザリン生が歌っていた。
「ウィーズリーには守れない、一本のリングだって防げやしない、だからスリザリンが歌うのさ、ウィーズリーは僕らの王様」
クヮッフルがロンの方に飛んできた。彼は手を広げてダイビングした。だが、クヮッフルはセンターのリングを通過した。スリザリンの得点だ。
スリザリンの歌はますます大きくなった。結局ロンは4ゴールを許したが、ハリーがスニッチを取って勝った。
試合後、マルフォイはあざ笑っていた。
「ウィーズリーの首をつなげたな。あんなひどいキーパー見たことないぜ。僕の詩は気に入ってくれたかい?まだ他にも作らなくちゃな。でも、デブで醜いやつのための言葉が見つからないんだ・・・ぼくはやつのおふくろのことを歌いたいんだけど」
フレッドとジョージがマルフォイの言っていることに気づいた。「ほっとくのよ」アンジェリーナがフレッドの腕を取って言った。しかし、まだ続くマルフォイのハリーの母親とウィーズリー家に対する悪口に、ジョージとハリーはマルフォイに向かって突っ走って行った。彼は先生たちがみんな見ていることなんかすっかり忘れて、杖を抜く暇もないので、スニッチを握りこんでマルフォイの腹に食らわせた。
「ハリー!ジョージ!だめ!」
マダム・フーチの呪文で止められたが、「こんな振舞い見たことありません。どっちとも寮長の先生のところへ行きなさい。さあ!」
ハリーとジョージはマクゴナガル先生のところに行って、わけを話した。そのとき、「ヘン、ヘン」という声がした。アンブリッジだった。「何かお手伝いしましょうか?」
マクゴナガル先生の顔に血が上った。「お手伝いですって?どういう意味かしら?」と言いながら、二人には説教を続けた。「・・・そんなひどい振る舞いは1週間の居残りです!そんな目で見てもだめです!」
「ヘン、ヘン」
「なんですか?」
「居残りよりもふさわしいものがありますよ」
「でも、これはうちの寮のことですから」
「実はね、わたしも関係できるのよ。コーネリアスがたった今送ってきたのだけれど。「教育法令第25条・・・」
それは高級調査官が生徒に対する罰などの権限を他の職員以上にもてる、という条例だった。それで、アンブリッジはこの2人に、これから学校にいる間はずっとクィディッチを禁止する、と言い渡した。そればかりか、フレッドもマルフォイを襲う恐れがある、ということで禁止され、3人とも箒を取り上げられた。

「禁止・・・シーカーもビーターもいなくて、どうすればいいのよ」談話室でアンジェリーナは途方にくれた。
それから、ロンが入り口から入ってきた。顔は青く、髪には雪がついていた。「明日、辞めようと思って」
「君が辞めたら、チームには3人しかいなくなっちゃうぜ」ハリーは言った。ハーマイオニーが事情を説明した。「ぼくのせいだ・・・ぼくがクィディッチがこんなに下手じゃなかったら・・・」ロンは自分を責めた。
2人が落ち込んでいるところに、ハーマイオニーが言った。
「あなたたちを元気付けることが一つあるわよ。ハグリッドが帰ってきたわ」

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第20章 Hagrid's Tale

3人は透明マントを着て、ハグリッドの小屋へ向かった。出迎えたハグリッドの顔を見て、ハーマイオニーは悲鳴をあげた。というのも、髪には血がこびりつき、左目は青あざができて腫れていた。おまけに顔や手には無数の傷があり、中にはまだ出血しているものもあった。そして、動くのも大変そうでハリーは肋骨を折ってるんじゃないかと疑った。それなのに、ハグリッドは「なんでもない」と言い張るのだった。
それから、ハグリッドは車のタイヤよりも大きい血の滴るような緑色の生肉を取り出した。「食べるつもりじゃないだろうね?毒があるんじゃないの?」と尋ねるロンに対して、ハグリッドは答えた。「そんな風に見えるだろうが、これはドラゴンの肉だ」といって、顔の左側にべたっとのせた。湿布代わりになるらしい。
「何があったんだい?」としつこく聞いても「トップ・シークレットだ」と口を割らないハグリッドに、ハーマイオニーは静かに言った。「巨人族にやられたんでしょう?」
ハグリッドは思わず、ドラゴンの肉を落とした。明らかに動揺している。「だ、だれが巨人族のことを?」
「そう思ったのよ」
「それは・・・明らかだし・・・」
これには観念したかのように、ハグリッドは巨人族探しの旅について話し始めた。

ハグリッドはマダム・マキシムことオリンピと彼女が校長を務めるフランスの学校を訪れるふりをして旅に出た。尾行がついていることは明らかなので、魔法は使えない。巨人族がいるところまで一月かかった。巨人族は6mを越えるものがほとんどで、今では70人から80人ぐらいしかいない。魔法使いが彼らを殺したからでもあるが、彼らは互いにも殺しあうのだ。
彼らの長である巨人に贈り物をしながら、ダンブルドアの味方になるようお願いをする作戦だったが、途中で殺し合いが始まり、長が変わってしまった。ハグリッドはまた同じようにしようとしたが、失敗してしまい、村に入れなくなってしまった。そのうちに、デス・イーターも巨人族の長に「あの方」の味方になるように接触していることが分かった。
昼間は村に入れないが、夜なら入れる。そこで、夜にデス・イーターに見つからないようにしながら、長以外の巨人に接触を図り、ダンブルドアのメッセージをを伝えることにしたのだ。
「でも、どうして帰ってくるのがこんなに遅かったの?シリウスはマダム・マキシムはとっくの昔に帰ってきてるって言ってたのに」とハリーが言った。
「誰に襲われたのさ?」ロンが聞いた。
「わしゃ襲われとらん!わしゃ・・・」
ハグリッドは言葉を飲み込んだ。誰かの影が薄いカーテンに映っている。
「彼女だ!」ロンがささやいた。
「この下に入るんだ!」ハリーはすばやく言って、透明マントをかぶった。
アンブリッジはハグリッドに名乗り、身分を明かした。
「声が聞こえたんですけど?」アンブリッジは言った。
「わしゃ、ファングに話し掛けっとったんです」
「城からここまで3人分の足跡があったんですけどね」
「ああ、わしゃたった今帰ったところなんで。たぶん早くに誰か来たんでしょう」
「あなたのドアからの足跡はないんですけどね。ところで、どうしたんですか?その傷は?」
「お、落ちたんでさ。箒から」
「で、どこに行ってたんですか?」
「け、健康のためにちょっと・・・きれいな空気を吸いに・・ね。景色を変えるのもいいって・・」
「山でも見に?」
彼女は知ってるんだ。とハリーは思った。
「ま、もちろんあなたの遅い帰還については魔法省に報告しますけどね」
と言って、アンブリッジは帰っていった。ハグリッドはアンブリッジが授業を視察すると聞いたが、今回はよく考えてあるから大丈夫、と言い放った。それをきいてますますハーマイオニーは心配になった。
「もし必要なら、私が授業を考えるわ。トレロウニーを首にしたって気にしないけど、ハグリッドをやめさせないわ!」

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