Harry Potter's Room

HARRY POTTER and the Order of the Phoenix


あらすじ3

第21章 The Eye of the Snake

次の朝、ハーマイオニーはハグリッドの小屋に出かけていき、昼前に戻ってきた。最初ハグリッドは小屋におらず、禁じられた森のほうから帰ってきたという。そして、ハーマイオニーの申し出には耳を貸さなかったと言う。
昼食の時、ハグリッドは職員のテーブルに現れた。数人の生徒は熱烈な歓迎の意を表したが、大多数はそうではなかった。
そして、ハグリッドの授業が始まった。ハグリッドは森の中に向かって、不思議な呼び声を出した。それを2回した後、森の中から現れたのは、龍のような頭をした黒い、例の馬だった。ハリーはついに、あれが本当に存在する、ということが分かった。ロンの方を見ると、ロンはまだ森の中を見つめ、どうしてハグリッドはもう一度呼ばないんだろう、と聞いてきた。
ハグリッドは聞いた。「これが見える人?」
ハリーは手を挙げた。ネビルも。
「これが見える人にはすっごいおそろしいことが起きるんだって、トレロウニー先生が前におっしゃってたわ」とパーバティが言った。
「いや、いや。それはただの迷信。どうして見える人と見えない人があるのか言える人?」
ハーマイオニーが手を挙げた。「テストラルが見えるのは、死を見たことがある人です」
そこへアンブリッジが視察に来た。そして、ハグリッドの揚げ足をとるかのようなメモを取って帰っていった。

12月になった。ハリーが今一番心待ちにしているのはD.Aの集まりだけだった。クィディッチは禁じられてるし、ハグリッドの結果は気になるし・・・
休暇前の最後のD.Aの集まりの時、ハリーは「お願いの部屋」に早く着いた。ドビーはクリスマスの飾り付けをしていた。ルナ・ラブグッドが入ってきた後、アンジェリーナとケイティー、アリシアが入ってきた。アンジェリーナはだるそうにローブを脱いで隅のほうに投げながら言った。
「あなたたちの代わりを決めたから」
「代わり?」
「別のシーカーを入れたのよ」
「誰?」
「ジニー・ウィーズリーよ。あの子はいいわよ、実際。もちろん、あなたほどじゃないけどね」
ビーターの代わりも見つけたという。これもフレッドとジョージにはかなわないが。
みんながそろった。休暇前なので新しいことはやらないが、今までやった気絶の呪文の練習を二人組で行うことにした。ネビルの進歩は著しかった。
練習が終わって、みんなハリーにメリークリスマスを言いながら帰っていった。ロンとハーマイオニーは片付けをしていたが、ハリーより先に出た。チョウはまだ中にいた。ハリーはチョウからメリークリスマスを言ってもらうのを期待して待っていたが、クッションを直すふりをしていた。
振り向くと、チョウは部屋の真ん中で涙を流して立っていた。
「ど、どう・・・?」ハリーはどうしたらいいか分からなかった。
「ご、ごめんなさい。これを・・・全部習っていたら・・・・もし、彼がこれを全部知ってたら・・・まだ生きてたんじゃないかと・・・思って・・・」
ハリーの心は沈んだ。彼女はセドリックと話したかったんだ。ハリーはセドリックをたてながら慰めた。
「わたしがセドリックのことを言うのはあなたにおそろしい思いをさせるのは分かってる。彼が死ぬところを見たんだし。忘れて欲しいと思ってるでしょ。あなたは、ほ、本当にいい先生だわ。わたし、今まで気絶の呪文なんてできなかったんだから」
そう言いながらチョウが近づいてきた・・・

夜、ハリーは夢を見た。彼はD.Aの部屋にいた。チョウはハリーが150枚の蛙チョコレートのカードをくれる約束をしたという。ハリーは言い訳をした。すると、チョウが叫んだ。「セドリックはわたしにたくさんくれたわよ。見て!」と言ってローブの中からカードを取り出してばらまいた。空中でそれはハーマイオニーに代わり、「そう約束したじゃない、ハリー。なら、他にもっといいものをあげるとか・・・ファイヤーボルトはどう?」しかし、ハリーはアンブリッジが持ってるからあげられない、とチョウに言い訳をしていた。
夢が変わった。
彼のからだはなめらかで柔らかく、冷たい石の上を滑っていた・・・彼の体は平で、腹で滑っていた・・・そこは暗かった。彼は振り返った・・・初め、その廊下には何もなかった・・・いや、男が床に座っている。あごを胸につけて。
ハリーは噛み付きたいと思った・・いや、まだ他にしなければならない大事なことがある・・・
男は動いた。ベルトから杖を抜くのが見えた。ハリーに選択の余地はなかった・・・2度、3度とその男に噛み付いた。温かい血の味がした。
男は苦痛で叫んだ・・・それから静かになった・・・血が床に飛び散っている・・・
「ハリー!ハリー!」
彼は目を開けた。冷たい汗が流れている。額に痛みが走り、転げ回り、吐いた。
「君の父さんが・・。襲われた」
「はあ?」
「君の父さんだ!噛まれたんだ。大変なんだ。あちこちが血だらけだ」
「ハリー、君はただ夢を見ただけじゃ・・・」
「違う!夢じゃない・・・いつもの夢じゃないんだ・・・ぼくはそこにいたんだ。見たんだ・・・・ぼくがやったんだ・・・」
だれかがマクゴナガル先生を呼んできた。マクゴナガル先生はハリーの話を聞いた。
「信じましょう、ポッター。ガウンを着なさい。校長先生に会いに行きましょう」

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第22章 St. Mungo's Hospital for Magical Maladies and Injuries

ハリーとマクゴナガル先生は校長室に行った。ハリーはダンブルドアに今起こったことを話した。「このことをどうやってみたのかね?」ダンブルドアが聞いた。
「いえ、分かりません。頭の中で・・・」こんなことが何だっていうんだ?
「いや、そうではなく・・・君はこの襲撃をどんな位置から見ていたのかね?上から?下から?」
ダンブルドアは知っているのか?「ぼくは蛇でした。このことを蛇の視点から見てました」

ダンブルドアは、天井近くの肖像画の2人に調査に行かせた。有名な校長の肖像画はいろいろなところに飾られているので、そういうことには都合がよい。
そして、アーサー・ウィーズリーが襲撃されたこと、彼がセント・ムンゴ病院に搬送された事実を確かめてから、ウィーズリー家の子どもたちを集めた。彼らの母親はきっとあの時計で夫の異変に気づくだろう。
ダンブルドアはグリモールド・プレイス行きのポートキーを作った。みんながそれに触れた。「1・・2・・」その瞬間、ハリーはダンブルドアの顔を見た。一瞬だが、目が合った。そのとき、ハリーの中に、ダンブルドアを襲いたい・・・噛み付きたい・・牙を・・という思いが湧きあがった。「・・・3」
ハリーたちは、気がつくとグリモールド・プレイスに来ていた。フレッドたちはすぐにでも病院に行きたい、と訴えたが、シリウスは退けた。
「病院側が妻にもまだ知らせてないことを、君たちが知っている、ということをどうやって説明するつもりなんだ!」
「こうやって話している間にも、父さんは死んじゃうかもしれないんだよ!」ジョージは叫んだ。
すると、みんなの目の前に炎が燃え上がり、金のフェニックスの羽のついた手紙が現れた。彼らの母親、モリーからだった。「お父さんは、まだ生きています。今セント・ムンゴ病院で準備をしています。そこにいなさいね。できるだけ知らせるから。母さんより」
「まだ生きている・・・・でも、これって・・・」ジョージはゆっくりつぶやいた。彼らは休もうとしたが、寝付けるはずはなかった。
翌日、朝ごはんの準備をしようとして、シリウスはクリーチャーを呼んだが、彼は現れなかった。仕方がないので、シリウスとハリーは2人で準備した。そのとき、ハリーは今までのことをシリウスに相談した。自分が蛇になった、と言ったのに、ダンブルドアは何も説明してくれなかったこと。
「何か心配なことがあったら、言ってくれるさ」
「それだけじゃないんだ」ハリーはダンブルドアを襲いたくなったことも言った。
「そのとき、まだ夢のことでも考えていたんだろう。休んだ方がいいよ」

トンクスはこのことに興味を持ったようだ。「あなたがやってることは、ほんとの予言ではないみたいね。未来を見るんじゃなくて、現在を見ている・・・・これって変じゃない?便利だけど・・・」
ハリーは答えなかった。
彼らは病院に向かった。着いたのは、大きくて、古いレンガ造りの店だった。「改装につき閉店」と表示が出ていた。「ここって、開いてるとこ見たことないわよね」通り過ぎる人がしゃべっていた。
汚れたガラスに向かって、トンクスが言った。「こんにちは・・・アーサー・ウィーズリーに会いたいんですけど」
そこは混雑した受付だった。ライム・グリーンのローブを着た魔法使いが並んでいる人々に話し掛けてメモをとっていた。彼らの胸には、杖と骨でできた十字の紋章がついていた。
「あの人たち、医者?」
「医者?あのおかしなマグルが人間を切り刻んじゃうやつ?違うよ。ヒーラーさ」ロンが答えた。

アーサーの病室は3人部屋だった。彼は日刊予言者新聞を読んでいた。
「どう、アーサー?ちょっとやつれてるみたいだけど・・」
「全然元気さ。この包帯がとれれば、家に帰れるんだけどね。とろうとしたら、狂ったように血が出るんだ。蛇の牙に、傷をふさがない毒が含まれてたんだろうね。でも、解毒薬も見つかったし、1時間ごとに薬も飲んでるから」
「新聞には、襲われたことが載ってるの?」フレッドが聞いた。
「いや、もちろんないさ。魔法省はだれにも知られたくないのさ。あの汚らしいでかい蛇がじ・・・」
「アーサー!」
「じ・・・自分を襲ったなんて事はね」
ハリーは彼が言いたかったことはそれじゃない、ということに気づいた。
「どこでやられたのさ?」ジョージが聞いた。
アーサーは話をはぐらかした。モリーはマッド・アイとトンクスを外で待たせてるから、代わりなさい、と言って子どもたちを病室から出した。代わりに2人が入っていった。
「いつでもそうさ。何にも教えてくれないんだ」フレッドが言いながらポケットを探った。「探しているのはこれかい?」ジョージが拡声耳を取り出した。
「ハリー、君が父さんの命を救ったんだから、聞く権利があるよ」
彼らはハリーのことについて話していた。
「・・・・ダンブルドアは、ハリーのことを心配なさっていた」
「そりゃそうでしょう。あの子は「あの人」の蛇の内側から見ていた。・・・それが何を意味するのはハリーが知らないのは明らかだが、もし、「あの人」が彼に憑いているとしたら・・・」

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第23章 Christmas on the Closed Ward

だから、ダンブルドアはハリーと目をあわそうとしないのか?そして、彼の中におそろしい考えが浮かんできた。
「前回彼が持ち得なかった武器のような・・・」
僕がその武器なんだ。ヴォルデモートが僕を使おうとしてるから、僕がどこへ行くにも護衛がつくんだ。僕を守るためなんかじゃなくて、他の人たちを守るためなんだ。僕は昨日、ウィーズリー氏を襲った。ヴォルデモートがそうさせたんだ。今でも僕の考えを僕の中で聞いてるんだ・・・
「ハリー、大丈夫?顔が青いわよ。夕飯まで休んでらっしゃい」
ハリーはロンの寝室に入った。
どうやって僕は蛇になったんだろう?アニメーガスなのかな?いや、そんなはずはない。ヴォルデモートがアニメーガスなんだ。彼が僕に憑いてるから僕も変身できたんだ・・・それでも5分でロンドンまで行って帰ってきたことの説明がつかないなあ・・・でも、ヴォルデモートもダンブルドアに匹敵するぐらいの魔法使いなんだから、それぐらいは訳ないことなんだろうな・・・
でも、もし、ヴォルデモートが僕に憑いてるんなら、フェニックスの騎士団本部がばればれだ!誰が騎士団にいるか、シリウスがどこにいるか・・・
ハリーはここを出て行かなくてはならない。ホグワーツでクリスマスを一人で過ごすんだ。
「逃げようか?」
声が聞こえて、ハリーは辺りを見回した。フィニーズ・ナイジェラスの肖像画だった。
「逃げるんじゃないさ。自分を守るためじゃないんだ」
「それは高貴な・・・わたしはダンブルドアからメッセージを頼まれたんだが」
「何?」
「そこにいるように」

またそれか。大人はそういうばっかりで何一つ教えてくれない。ハリーはすっかりくたびれてしまった。チョウ・チャンと会ってから24時間もたってないなんて信じられない・・・彼は寝るのを恐れていた・・・今度は何が起きるんだろう・・・?
彼は闇に沈んでいった・・・
それは映画のようで始まるのを待っているかのようだった。彼は誰もいない廊下をただの真っ黒いドアに向かって歩いていた。彼は黒いドアについた。だが、それは開かなかった・・・そこに入りたくて入りたくて、見つめていた・・・傷がうずくのが止まりさえすれば・・・・もっとはっきり考えることができるのに・・・・
「ハリー、夕飯ができたって。でも、ベッドにいたいんなら持って来るけど」ロンが声をかけた。
ハリーは行きたくなかったので寝ているふりをした。

翌日の朝はみんなクリスマスの飾り付けをしていた。シリウスはクリスマスをともに過ごす仲間がいる、ということに喜んでかとても上機嫌だった。
夕方までバックビークの部屋に篭っていたハリーは、スキーから帰ってきたハーマイオニーに呼び出され、ロンとジニーと4人で話した。ジニーはハリーが一人で塞いでいるのを見て、「あの人」に憑かれたのは私も同じだと言った。ハリーは思い出した。ジニーの見解では、ハリーは憑かれていないということだった。「僕はつまり、武器なんかじゃなかったんだ」

クリスマスの朝、たくさんのプレゼントを開けて喜んでいると、ロンがハーマイオニーのプレゼントに目をつけた。「それ、誰の?」
ハーマイオニーはクリーチャーにキルトをあげるのだという。着る物じゃないから自由にはならないし、寝床の下に敷けば明るくなるから、というのでみんなは台所へ向かった。ボイラーの下が寝床らしい。寝床にはクリーチャーが貯めこんでいる宝があった。その中に、クリーチャーのお気に入りの写真があった。あのまぶたの重そうな魔女、ベラトリクス・レストレンジだった。プレゼントはそこに置いておく事にした。

クリスマス・ランチを食べたあとみんなはウィーズリー氏のお見舞いに行くことにした。病院もクリスマスの飾り付けがしてあった。
ウィーズリー氏の包帯が替えてあるのを見て、夫人は不審に思った。「明日まで替えないんじゃなかった?」
ウィーズリー氏は新米のヒーラーと相談して、マグルたちが治療に使う「縫合」をやったのだと説明した。雲行きが怪しくなったのを感じて、子どもたちは「ちょっとお茶を飲んでくるから」と病室を出た。ドアを閉めたとたんに、夫人が怒鳴る声が響き渡った。「いつものパパだわ」
彼らは6階に向かって階段を上っていた。途中で肖像画達が気味の悪い話をするので、何階なのか分からなくなった。「ここ、何階?」
5階だった。案内表示には「魔法によるダメージ」とあり、そこへ続く廊下の入り口には二重のドアがあり、小さい窓がついていた。そのガラスに金髪の明るい青い目をした男が、鼻をくっつけて笑っていた。
「なんてこと!」
「ロックハート先生!」
その人はドアを開けてやってきた。「やあ、みんな。僕のサインが欲しいんだろう?」
「あんまり変わってないみたいだね」ハリーはジニーにつぶやいた。

「ギルデロイ、やんちゃ坊主め、どこまで行っちゃったんだい?」廊下の向こうから声がした。
「おや、ギルデロイ、お客さんだね。クリスマスになんて素敵な。かわいそうに、彼には今までだれも面会がなかったんだよ。こんなにかわいいのにね」
ヒーラーは、彼はいつも閉ざされた場所で過ごしているので、せっかくのクリスマスだし、少し話していってくれないか、と4人を彼の病室へと誘った。ロックハートは数年前の記憶は戻ってきているらしい。ヒーラーは語った。「ここは長期滞在者用の病室なんだ。魔法の永久ダメージを受けた人の、ね。もちろん、薬や魔法は進歩してきているから、少しずつ効果は出てきているんだ」
病室には何人かの病人がベッドに横たわっていた。奥のほうの2つのベッドには病人とその客のプライバシーを守るかのように花模様のカーテンがひかれていた。
「あら、ロングボトムさん、もうお帰りですか?」
ハリーは振り向いた。そのカーテンの向こうから2人の客が出てきた・・・ネビルだった。ロンたちも「ロングボトム」の声に反応して、ハリーが止めるまもなく、「ネビル!」と声をかけていた。
ネビルのおばあさんは、ハリーたちを見ていつもネビルから聞いていますよ、と名前を当てていった。おばあさんはロンたちの赤毛からウィーズリー家の子であることも知り、「御両親も立派な方ですものね。でも、あれは父親の才能を受け継がなかったみたいで・・・」とベッドの方に目をやりながら言った。
「あれは、君のお父さんなの、ネビル?」ロンが聞いた。
それを聞いておばあさんが驚いた。ネビルがだれにもこのことを話していなかったことを。
「恥ずかしいことじゃないんですよ。誇りに思いなさい!ネビル」
「恥ずかしいとは思ってないよ」
そしておばあさんは、ネビルの両親のことを語り始めた。
2人が帰ったあと、3人とも知らなかった、と言ったが、ハリーは知っていたことを話した。
「ベラトリクス・レストレンジがネビルの両親に十字架の呪いをかけたから、心を失ったんだ」
「ベラトリクス・レストレンジがやったの?クリーチャーの写真に写ってたあの人じゃない!」

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第24章 Occlumency

クリーチャーは屋根裏部屋にいた。ブラック家の思い出の品を探していたらしい。クリーチャーはみんなへの態度は多少柔らかくなったものの、一度か二度ハリーを穴が開くほど見つめていたことがあった。もっとも、ハリーが気づくとさっさと逃げていたが。
そろそろ学校へ戻る時期が近づいていた。しかし、ハリーは初めてホグワーツに戻るのがうれしくなかった。シリウスをまた一人でここに残していくことは心配だった。それにアンブリッジはまた教育法令を増やして束縛するだろうし、なんといってもクィディッチは禁じられていたし。
休暇の最後の日、ハリーはロンとチェスをしていた。そこへおばさんが声をかけた。
「ハリー、台所に降りてこられる?スネイプ先生がお話があるんですって」
ハリーは顔をこわばらせながら台所へ行った。そこにはスネイプとシリウスが顔を合わせないようにして座っていた。
スネイプはダンブルドアからの命令なので、ハリーだけに話がしたいといったが、シリウスは自分は名付け親だから、と譲らなかった。スネイプはシリウスに嫌味を言いながら話し始めた。
「校長先生は、君は今学期閉心術を学んで欲しいということで私をここによこされた」
ハリーは初めて聞くその言葉にとまどった。閉心術・・・それは外部からの洞察に対する魔法防御術である。そしてこの個別レッスンを週一回受けること、アンブリッジ他、だれにも知られないこと、という話を聞いた。
「誰が教えてくださるんです?」
「私だ」

ハリーたちは、ナイト・バスでホグワーツに戻ることになった。ロンは乗ってみたかったんだ、と嬉しそうに乗り込んだが、あまりの揺れに二度と乗りたくない、と言い出した。
ホグワーツで降りる時、他の乗客が窓に鼻をくっつけるようにして一行を見ていた。見送りについて来たトンクスとルーピンは荷物を降ろしていた。最後にルーピンはハリーに近づいてそっと言った。
「君がスネイプを好きじゃないのは分かってるけど、あいつは優れた閉心術師なんだ。ぼくも、シリウスも君が自分自身を守ることができるようになることを心底願ってる。がんばるんだよ」
ハリーは翌日、夕方になるのを恐れていた。D.Aのメンバーは次々に、会合は今日あるのか、と聞いてきたが、そのたびにハリーは自分から知らせるから、と言わなければならなかった。チョウもやってきた。それを見ると、ハーマイオニーは「図書室にいるわね」とロンを連れて去っていった。
「クリスマスはどうだった?」
「悪くなかったよ」
「うちは本当に静かで・・・・あの・・・・次のホグスミード行きが来月あるけど、掲示板見た?」
「え?こっちに戻ってから、全然見てなかったよ」
「そう、その日はバレンタイン・デーなの」
「ああ、そう。ぼくと・・?」
「あなたさえよければ・・・」
「ぼくは・・・・あー・・・・」
「あら、いやならいいのよ。気にしないで」チョウは傷ついたような顔をして、歩き出した。
「チョウ!待って・・・チョウ!」ハリーは追いかけた。「バレンタイン・デーの日、僕と一緒にホグスミードに行かない?」
「ええ、行くわ!」彼女はそう言って、真っ赤になって彼を見つめた。

夕方6時、ハリーはスネイプの事務室の外にいた。ノックして中に入ると、中は暗く、いろいろな薬の材料がいっぱいだった。机の上にペンシーヴがあるのに気づいた。なんでこんなところにあるんだろう。奥のほうからスネイプが現れた。
「これは普通の授業ではない。しかし、私は君の先生であるから、ここでもいつも私を「先生」と呼びたまえ」
「どうしてダンブルドア先生は、僕がこれを学ぶ必要があると思われたのですか、先生?」
「今ではもう分かっているのではないかね、ポッター?暗黒卿は侵心術の優れた使い手なのだ。君の心が最もリラックスして無防備な時・・・例えば眠っている時・・・君は暗黒卿の考えや感情を共有している。校長はこれが続いていくのは得策でないとお考えになられた」
その後しばらく、ハリーは幾つかの疑問をスネイプにぶつけた。スネイプは時に怒りながらも自分の考えを述べた。そして、閉心術の勉強に戻った。その前にスネイプは自分のこめかみに杖を当て、3度ほどペンシーヴの中に入れた。
「立って、杖を取れ、ポッター。杖を使ってわたしの武装を解除するか、思いつく限りの方法で自分を防御するように。わたしはこれから君の心に侵入する・・・レジリメンス、侵入開始!」
5歳の記憶、9歳の記憶、ホグワーツに来た時・・・さまざまな記憶が思い出される・・・見るな!見るな!プライベートだぞ!
心をクリアにするように、といわれたが、それは難しいことだった。
4回目の挑戦で、ハリーは見た。廊下に続く黒いドアを。倒れこみながら、「分かった!分かった!」と叫んでいた。
「何が分かったのだね?」
「ミステリー局の中には何があるんですか?僕が見たあの廊下は・・・何ヶ月も夢に出てきた・・ミステリー局に続いてるんだ・・・ヴォルデモートはそこから何か欲しいんだと思う・・・」
「暗黒卿の名前を言うなと言ったはずだ!ミステリー局にはいろんなものがあるのだ、ポッター。その中でお前が理解できるものはほんの少ししかないし、お前に関係あるものなどは一つもないのだ」

ハリーは図書室で宿題をしているロンとハーマイオニーに早速今の話をした。
「お父さんはミステリー局について何か言ってなかった?」
「ぼくはそこで働く人のことを「禁話人」と呼んでいるのは知っているよ。だれもそこで何をやってるか本当に知らないんだ・・・武器をもつには気味の悪いとこだよ」
談話室に戻ると、フレッドとジョージがまた新たな発明品のデモンストレーションをしていて、とても騒がしかった。
男子部屋に入ると、体を真っ二つにするような痛みが走り、自分が立っているのかどうか、自分の名前すら分からない感じになった・・・・彼の耳に、勝ち誇ったような笑い声が響いてきた・・・誰かが顔の辺りをぶった。狂気じみた笑いがその痛みさえ押しつぶした。まだ笑い声が続いている・・・
ハリーは目をあけると、その笑い声が自分の口から発せられていることに気づいた。と、同時に声は止まった。
ヴォルデモートにとてもとても嬉しいことがあったんだ・・・

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第25章 The Beetle at Bay

その謎は、翌日解けた。ハーマイオニーがいつものごとく日刊予言者新聞を見ると、1面に10人の写真がでかでかと載り、「アズカバンから集団脱走 魔法省はシリウスが旧デス・イーターの結集点だと恐れる」という見出しが出ていた。それとともに、「魔法省職員の悲劇的な死」という記事も載っていた。ロンは思い出した。彼は「禁話人」、つまりミステリー局で働いていたことを。それを聞くと、ハーマイオニーは席を立った。
「手紙をだしてくるわ・・・どうなるか分からないけど・・・やってみる価値はあるわ・・・これは私にしかできないことよ」

ハーマイオニーが出て行ってから2人はハグリッドに会った。ハグリッドは今観察処分中であることを明かした。このことは数日のうちに広まった。そして、デス・イーターの脱走についても生徒中に広まり、恐怖感を与えた。変わったのは生徒たちだけでなく、職員もそうだった。廊下でこそこそ話している姿が見かけられるようになった。職員室では話ができないからに違いない。
そう思っているところに、掲示板に新たな知らせが出た。「教員は自分が教えるべき教科以外、いかなる情報も与えてはならない 教育法令第26条」
しかし、この最新の条例は生徒たちの間で、冗談の種となった。フレッドとジョージが爆発スナップで遊んでいたのをアンブリッジが注意したのをリー・ジョーダンが指摘した。
「爆発スナップは、闇の魔術の防衛術に何の関係もありません、先生!」
ハリーが次にリーを見たとき、彼の手の甲はひどく出血していた。
アンブリッジはハリーのホグワーツでの生活の価値あるものをことごとく奪った。ハグリッドの訪問、シリウスからの手紙、ファイアボルト、そして、クィディッチ。
彼は自分にできるたった一つの雪辱の道を選んだ。D.Aに力を入れたのだ。
新聞に集団脱走の記事が出てから、ネビルの様子が一変した。あまり話さなくなったが、その代わりものすごい集中力で、次々と魔法を習得していったのだ。
ネビルの素晴らしい進歩とは裏腹に、ハリーの閉心術の方はちっとも進歩しなかった。それどころか悪くなっているような気さえした。最近は毎日のようにあの黒いドアの夢を見るのだ。
「あのドアさえ開けばね。僕はそれをずーっと見てるんだ」
「ダンブルドアはそうさせないために、スネイプに閉心術を教えるように頼んだんじゃない。もうちょっとがんばりなさいよ」
「やってるさ!何回かやってみろよ、スネイプが頭ン中に入ってこようとするんだぜ、笑い事じゃないだろう!」
「たぶんさぁ・・・」ロンがゆっくり言った。「たぶんさぁ、ハリーが心を閉じられないのはハリーのせいじゃないと思う」
「どういう意味よ?」
「スネイプは、本当はハリーを助けたいんじゃなくて・・・・実はハリーの心を広げようとしてるんじゃないのかな・・・あの人が・・」
「やめて!何回スネイプを疑う気?ダンブルドアが信用してるんだし、騎士団の一員なのよ。十分じゃない!」
「前はデス・イーターだったんだよ・・・それにこっち側に来たっていう証拠がない・・・」
「ダンブルドアが信用してる!ダンブルドアを信用しなかったら、誰も信用できないわ!」

ホグスミード行きの日が来た。ハリーは身だしなみに気をつけて、なんとか朝のふくろう便に間に合った。ハリーに手紙はなかったが、ハーマイオニーは手紙を受け取った。ハーマイオニーはそれに急いで目を通すと、ハリーに聞いた。
「とっても大事なことなんだけど・・・お昼頃「3本の箒」で会えない?」
「ええっと・・・分かんないよ。チョウは1日僕と一緒に過ごそうと思ってるみたいだし。どこに行くかは全然話してないけど」
「一緒でもいいわよ。でも、来る?」
「ああ、分かったよ・・・でも、なんで?」
「今は時間がないわ。返事を出さなきゃ」
「行く?」ハリーはロンに聞いた。しかしロンは、1日中クィディッチのトレーニングがあるので行かれない、と断った。

しかし、彼が3本の箒についたときは一人だった。
「こっちよ!」
声がするほうを見てハリーはその不釣合いな連れに驚いた。ルナ・ラブグッドともう一人は他でもないリタ・スキーターだったからだ。ハーマイオニーは、時折、リタに脅しをかけるようにしながら、ハリーの話を持ち出した。
「他にもデス・イーターはいるんだ。名前を知りたい?」
リタは自動速記ペンを動かしながら、記事を書いた。
「でも、もちろん、ミス・完璧ちゃんはこの話を出して欲しくないんでしょう?」
「実のところ、それこそミス・完璧ちゃんが望んでいることよ」ハーマイオニーは甘い声で言った。
リタは驚いた。それにこんな記事を日刊予言者新聞が載せる訳がない。そこにルナが割って入った。「うちの父はクィブラーの編集長よ」
リタはその雑誌の名前を聞いてせせら笑ったが、ハーマイオニーの話を聞いて、しぶしぶ納得した。
「パパは喜ぶわ」
「ハリー、いい?真実を公表する準備はできた?」
「たぶんね」
「じゃ、どんどん質問して、リタ」

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第26章 Seen and Unforseen

ハリーにとって、ヴォルデモートが復活した時のことを語るのは容易なことではなかったが、世界に真実を伝える大きなチャンスであることは確かだった。だが、ルナは現在掲載中の記事があるので、これがいつ載るかは分からないと言った。
その一方で、ハリーはバレンタイン・デーの日の出来事をハーマイオニーに語ると、彼女は女心について切々と説明した。ハリーには言葉の裏に隠されている心理を理解するのが難しかったようだ。
ロンとジニーは1日中クィディッチの特訓をしてきて、泥まみれになっていたが内容はひどいもので、アンジェリーナはおしまいには泣きそうになっていたという。フレッドとジョージは練習を見てきたようで、ロンは観客さえいなければとってもいいのに、と感想を述べた。そして、
「知ってるだろう?クィディッチだけが唯一ここにとどまる価値のあるものだったんだ」と、窓の外を見ながら言った。
「試験があるじゃない!」
「もう言ったと思うけど、俺たちN.E.W.Tのことは気にしてないんでね」

ハリーはベッドに入りながら、心を空にしようと考えたが、アンブリッジとスネイプがどれほど嫌いかということに集中してしまった。
彼は夢を見た。「お願いの部屋」でマクゴナガル先生のバグパイプの伴奏に乗って、ネビルとスプラウト先生がワルツを踊っていた。ハリーは嬉しそうにそれを眺め、ほかのD.Aのメンバーを探しに部屋を出た。
ところが、そこは例の暗い廊下だった。突き当たりのドアは開いていた。彼はそれを押した・・・
ロンが大きないびきをかいたので目が覚めてしまった。

月曜の朝、ハリーにふくろう便が届いた。中身は雑誌「クィブラー」だった。それとともに、読者からの感想も数通届いた。しかし、それはすぐにアンブリッジの知るところとなり、ハリーへの居残りと、クィブラー禁止の教育条例が発令された。だが、世間でのこの記事の反響はすごかった。

ハリーは寮に戻って、寝る前に窓のガラスで傷を冷やした。ベッドに入ると、すぐに寝入ってしまった。
彼はカーテンのかかった暗い部屋に立っていた。ろうそくが一本だけ灯されていた。彼の手は自分の前にある椅子の背に置かれていた。その手は何年も日に当たっていないように白かったので、まるで大きな蜘蛛が椅子の背にいるかのようだった。
「悪い知らせのようだな」ハリーの声は、怒りを含んだ高く冷たいものだった。
「ご主人様、恐れながら・・・」
会話は続いた。彼が壁の方を向いたとき、ひびの入った鏡があり、そこに姿が映った。それは・・・
「うそだーーーーーーー!!」
またしても、狂ったような叫びにロンは少し呆れながらも様子を聞いた。
「なに言ってんの?それって・・・ただ「あの人」を見たってこと?」
「ぼくが「あの人」だったんだ」
翌日ハーマイオニーに伝えると、彼女には魔法省職員の死亡事件に合点がいったようだった。
「で、ヴォルデモートはその「武器」の入手方法を知ったわけ?」
「会話はよく聞き取れなかったけど、そんな感じ」
「でも、もうこれ以上みちゃだめよ、ハリー」
「なんで?」
「こんなものを見ないように心を閉じることを勉強してるんでしょ。見たことを忘れるようにして、これからは閉心術にもっと身を入れることね」
ハリーはこれを聞いて、その日はそれからずっと彼女に話し掛けなかったほど怒った。

しかし、その週の閉心術の練習でも進歩はなかった。それどころか、この夢の断片をスネイプに見られて、しつこく聞かれた。ハリーは何でもない、と言っていたが、おしまいに「単なる夢です」と答えた。
スネイプは、2ヶ月もやってまったく成果がないどころか、こんな夢まで見るようになったことを非難した。そして、もう一度、挑戦することになった。
たくさんの吸魂鬼が襲い掛かってきた。ハリーは杖をあげた。「プロテゴ!我を守れ」
スネイプはよろめき、杖が飛んだ。そのとき、ハリーの心に自分のではない記憶が満ち溢れた・・・鉤鼻の男が、しゃがんでいる女に怒鳴っている。その間、隅の方で黒い髪の少年が泣いていた・・・脂っこい髪をした10代の少年が一人、暗い寝室で杖を天井に向けて、ハエを打ち落としている・・・女の子が暴れる箒にまたがったやせっぽちの少年を笑っている・・・・
「十分だ!」
スネイプはかすかに震え、とても白い顔になっていた。スネイプは何回かペンシーヴに記憶を移した。
「もう一度やろうか?」
しかし、今回ハリーは心の準備ができないうちに始まってしまった。心に暗い廊下が浮かんだ。すると、ドアが開いた!ついにその中に入った。そこは黒い壁に囲まれた円形の部屋で、ドアが彼の周りを囲んでいた。どのドアを開ければいいんだ・・・
「説明しろ!」
「な、何が起こったのか・・・こんなの見たことありません。ドアの夢は見たとお話しましたが・・・前は絶対開かなかったんです・・・」
そのとき、部屋の外で女性の悲鳴が聞こえた。解雇命令を受けたのを悲しんで、酒に手をだしたトレロウニー先生だった。アンブリッジはトレロウニーを追い出そうとしたが、ダンブルドアがそうさせなかった。しかし、占い学の先生は別に見つけなければならない。アンブリッジは、魔法省から連れてこようとしたが、ダンブルドアは後任は見つけてあるから、その必要はないと言った。
そして、紹介されたのは・・・

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第27章 The Centaur and the Sneak

「占い学、やめなきゃよかったと思ってるでしょ、ハーマイオニー?」
パーバティが得意気に笑いながら聞いた。
「別に。私、馬はほんとうに好きじゃないし」
そう。新しい占い学の先生とは、ケンタウロスのフィレンツェだったのだ。そして、彼はダンブルドアに協力する代わりに、禁じられた森から追放されたのだ。彼の胸にはひづめ型のあざがあった。
彼は北の塔で教える代わりに、ケンタウロスが居心地のよいようにしつらえられた教室で授業を行った。フィレンツェの授業は主に星の動きから未来を読むことだった。
「過去の10年間は、2つの争いが静まっていた短い期間だ。火星は争いごとをもたらす。我々の上で明るく輝く時、戦いがじきに始まる。いつか、ということは我々ケンタウロスはある種のハーブや草を燃やして、その香りや炎の様子から占う」
授業が終わって、教室から出て行くとき、フィレンツェがハリーを呼び止めた。
「ハリー・ポッター。君はハグリッドの友人だったよね。彼に私からの警告を伝えてくれないか。彼の企てはうまくいってないと。やめたほうがいいと」
フィレンツェはハグリッドが何をやっているのかは、教えてはくれなかった。

アンブリッジは相変わらずハグリッドの授業にはついてきていた。なのでハグリッドに話し掛けるのはなかなか難しかったが、ようやくフィレンツェの警告を伝えることができた。だが、ハグリッドは、
「いいやつだ、フィレンツェは。だが、このことはよく知らんのでは。うまくいっとるのに」
と答えた。そして、このことは先生の職を維持することより大切なことだとも言った。

D.Aの練習では、いよいよパトロナスの練習が始まった。やはりなかなか難しいようだ。そこに、だれか入ってきた。見ると、ドビーだった。とても悲しそうな顔をしていた。
「ハリー・ポッター様・・・ドビーめは警告に参りました・・・でもほかの屋敷しもべ妖精たちは言うな、と申したんですけれども・・・」
「何があったんだい、ドビー?」
「ハリー・ポッター様、彼女が・・・彼女が・・・」
彼女って誰?と言いかけて気づいた。ドビーが恐れる彼女とは・・・
「アンブリッジが、来るのか?」
ドビーはうなずいた。ハリーは2人を見ているみんなに目を向けた。
「なにやってんだ!逃げろ!」
みんな一目散に逃げ出した。しかし、ハリーは途中でドラコがしかけた罠にはまって捕まってしまった

アンブリッジはハリーを校長室に連れて行った。そこには魔法省大臣のコーネリアス・ファッジとキングスリー・シャックルボルトとハリーの知らない魔法使い、そしてパーシー・ウィーズリー、ダンブルドアとマクゴナガル先生がいた。
そして、ファッジはハリーに何をしていたのか尋ねたが、ハリーは知らない、と言い張った。すると、アンブリッジは目撃者がいる、といって一人の少女を連れてきた。彼女は、アンブリッジに話がある、といって今晩の会合のことを話したらしい。目の前の少女の顔には、紫のいぼがたくさんできていて顔中に「密告者」という文字の形を作っていた。彼女は脅えていて、アンブリッジの質問にもはや答えようとしなかった。。ハリーはハーマイオニーのおまじないの腕前に舌を巻いた。
アンブリッジはとうとう、うなずくか、首を振るかでいいから教えなさい、と迫った。ハリーはもうおしまいだ、と思った。
「この6ヶ月、あなたはその会合に参加していたんでしょう?」
ところが、彼女は首を振った。「じゃ、この6ヶ月、秘密の会合はなかったのですね?」彼女はうなずいた。アンブリッジは彼女の肩をつかんで揺さぶった。
「私の生徒を手荒く扱うことは許さんぞ、ドロレス」ダンブルドアが初めて怒ったようにしゃべった。
「落ち着いてください、マダム・アンブリッジ」
我に帰ったアンブリッジは、次に「お願いの部屋」からパンジー・パーキンソンが持ってきたというリストをだしてきた。勝ち誇ったような表情のファッジに対して、ダンブルドアが口を開いた。
「ダンブルドアの軍隊、じゃよ。コーネリアス。ポッターの軍隊ではない」
「でも・・・・あなたが?これを作ったと?」
「その通り」
「違う!」ハリーは叫んだが、もはやファッジは耳を貸さなかった。ハリーの退学をもくろんで来たのだが、ついにダンブルドアを捕らえる証拠がやっとみつかったのだ。
「ドーリッシュ!シャックルボルト!連れて行け!」
ファッジがそう叫んだとき、銀色のまばゆい光が部屋を包んだ。銃声のような音がしたかと思うと、ガラスが割れる音、何かが落ちる音がして、そこらじゅうに埃が巻き上がった。
辺りが静まった時、ハリーとマクゴナガル先生とダンブルドアだけが動け、後のものはのびていた。
ダンブルドアはマクゴナガル先生に後を頼み、ハリーには閉心術をきわめるよう重々話し、自分はしばらく身を隠すと言って、フォウクスの尾に手をかけると炎の輝きとともに消えてしまった。
しばらくして目を覚ましたファッジはダンブルドアはどこだ!と迫ったが、分かるはずもなかった。仕方なく、服についた埃を払いながら、長い沈黙の後、話し掛けた。
「ミネルバ、これで君の友人ダンブルドアも終わりだな」
「そう思ってらっしゃるの?」
マクゴナガル先生はさげすむように答えた。

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第28章 Snape's Worst Memory

かくして、アンブリッジがホグワーツの校長になった。もちろん教育条例のおかげである。昨日の出来事を知っているのはハリーだけだが、マクシミリアンから面白い話を聞いた。それは、アンブリッジが校長室へ続くガーゴイルに拒否された、という話である。どうも校長室は自らを封印したようだ。それで彼女はかんしゃくを起こしているらしい。
アンブリッジの悪口を言いながら歩いていると、マルフォイが聞いていて、減点するといってきた。監督生は注意しかできないはずなのに、と思って尋ねると、アンブリッジに選ばれた生徒たちは、「調査隊」のメンバーとなって、減点もできるという権限をもてる、ということのようだ。それで、マルフォイは不当な理由でどんどん減点した。
フレッドとジョージは今までいろんな騒ぎを起こしてきたけれど、退学になるようなことは起こさなかった。さすがにそういう一線はひいていたわけだが、いまやダンブルドアもいなくなってしまったこの学校にはもう何の未練もないらしい。退学さえもいとわない何かを企んでいるようだ。
ハリーはフィルチに呼ばれ、アンブリッジの部屋に行った。居残りでおなじみの部屋だったが、机の上には「校長」と書かれたプレートが置かれ、後ろの壁にはファイアボルトと、フレッドとジョージのクリーンスウィープが鎖につながれていた。
そこで彼女は、やさしくハリーに飲み物を勧めた。仕方なくお茶を選んだが、やばい感じがしたので飲むふりだけをした。彼女はダンブルドアやシリウスの居場所を聞いてきた。もちろん、ハリーは知らないと言い張った。アンブリッジが警告をしていたそのとき、「ボン!」という音がして部屋が揺れた。アンブリッジは横に滑って驚いて、机につかまった。その隙にハリーはお茶を近くの花瓶に流し込んだ。
外では大騒動が起きていた。フレッドとジョージの仕業だった。アンブリッジとフィルチはそれを鎮めに出かけていった。

その夜、グリフィンドールではフレッドとジョージはヒーローだった。ハリーも満足してベッドに入った・・・
彼はミステリー局に続く廊下にいた。黒いドアに向かって急いでいた・・・開けるんだ・・・開けるんだ・・・
なんと、今日はその中に入って、さらに奥へと進むことができ、新たなものを見た。彼はどこへ行くべきか知っている・・・そこに彼がとてもとても欲しいものがあるのだ・・・傷が痛む・・・
しかし、そこで目を覚まされてしまった。そして、明日の夕方閉心術の授業があることを思い出して胃が痛んだ。

スネイプの部屋で、閉心術を始めようとしたそのとき、マルフォイが駆け込んできた。アンブリッジがスネイプを呼んでいる、という。閉心術は明日に延期になった。ハリーは一人で部屋にいると、床に光が揺らめいているのが見えた。ペンシーヴの光だった。スネイプの記憶・・・ハリーから隠したがっている記憶って一体何だろう・・・ミステリー局のことかなあ・・・スネイプが戻ってくるのにどのくらいかかるかなあ・・・などと思いながらも、ハリーはペンシーヴに杖を入れた・・・・
10代のスネイプがいた。O.W.Lの試験を受けている。ということは今のハリーと同い年だ。ほかに、ジェイムズ、シリウス、ルーピンもいた。ということは、ワームテイルもいるはず、と思ったらやはりいた。
やがて試験は終わり、外に出た。スネイプが彼ら4人にからかわれている。スネイプは魔法で応酬したが・・・ハリーの母親も現れた。しかし、彼女はまだジェイムズには全然好意はないようだった。
「楽しいかい?」
気がつくと、スネイプがいて、ハリーの腕をねじ上げていた。
「面白い男だろう?君の父親は」
「ぼ、ぼくは・・・」
「見たことを誰にも言うな!」
「言いません!」
「出て行け!この部屋で二度と会いたくもない!」
ハリーはロンにもハーマイオニーにもいわなかった。見たことから判断するに、彼の父親はスネイプがいつも言っていたように傲慢な感じがした。

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第29章 Career Advice

「でも、どうしてもう閉心術の授業を受けてないのよ?」ハーマイオニーが聞いた。
「言っただろう。もう基礎ができたから、あとは自分でやれってスネイプが言ったんだ・・・」
「ということはもうあの変な夢は見ないのね?」
「かなりね」ハリーは彼女の目を見ないように言った。
「スネイプはあなたが完全にコントロールし切れるまでにやめるとは思えないけど?もう一回頼んだら?」
「いやだ。もう終わりにしようぜ、ハーマイオニー」
イースター休暇の最初の日だった。ロンは試験まで6週間しかないことに気づいた。
ハリーは考え事をしていた。あのスネイプの記憶だ。ハリーは今まで自分の両親は素晴らしい人だと思っていた。だから父親がスネイプをあんな風に中傷するような性格だとは信じられなかった。そういえばマクゴナガル先生は、父親とシリウスはトラブルメーカーだといっていたし・・・それに母親だ。全然好きじゃなさそうな感じだったのに、どうやって結婚までいったんだ?
「ハリー、話し掛けてるんだけど?聴こえてる?」
ジニー・ウィーズリーだった。彼女は母親から届いたというイースター・エッグを出した。その包みは一回開けられて「高級調査官による検閲済み」と書かれていた。ハリーの分も渡しながら、ハリーの顔色が悪いのを気にしていた。
「最近暗いわよ。チョウと話したいんだったら・・・」
「話したいのはチョウじゃないんだ」
「じゃ、誰よ?」
「僕は・・・シリウスと話がしたい。でも、できないことは分かってる」
それを聞いて、ジニーは何とかできる、と請け負った。いつかのフレッドとジョージの騒動だ。あれをまた起こせば・・・

掲示板に、「進路指導」の告知が出た。5年生は個人面談を寮長の先生と行うのだ。いろいろな職業とそれに必要な教科や成績が載っているリストをもらった。
ハリーは自分の番をうっかり忘れて少し遅刻してマクゴナガル先生の部屋に行った。そこには、マクゴナガル先生のほかに、アンブリッジもいて、いつものようにクリップボードを抱えていた。
ハリーは、「闇祓師」になるつもりだといった。マクゴナガル先生はもう少し変身術や、薬学の成績をあげないとだめだ、と忠告した。しかし、闇の魔術の防衛術の成績は抜群なのでよい、とほめたそのとき、アンブリッジはメモをマクゴナガル先生に渡した。それを発端に、ハリーの成績について2人は口論を始めた。
「魔法省大臣はポッターを決して雇わないでしょうよ!」
「ポッターが入る頃には新しい魔法省大臣がいるかもしれないでしょう?」
「ほらほら!もちろん、それがあなたの望んでいることですものね、ミネルバ・マクゴナガル?あなたはコーネリアス・ファッジの代わりにアルバス・ダンブルドアを置きたいんでしょう?」
ハリーが部屋を出ても二人の口論は続いていた。

その日、例の計画は実行されることになっていた。ハーマイオニーはやめるように懇願したが、フレッドとジョージの準備はできている。ハリーは透明マントとシリウスからもらったナイフを手に、談話室を出た。
アンブリッジの事務室の近くまで来た時、廊下の向こうで騒ぎが始まった音が聞こえてきた。アンブリッジは杖を抜いて急ぎ足で出て行った。
ハリーはアンブリッジの部屋に入って、そこの暖炉で「グリモールド・プレイス12番地!」と叫んだ。
ハリーがそこにつくと、ルーピンがいた。ルーピンはシリウスを呼んできてくれた。ハリーは自分の父親のことについて尋ねた。シリウスとルーピンは、あの頃の馬鹿騒ぎは若気の至り、というやつだ、君の父親はいいやつだ、と話した。それでも、スネイプとの確執があることは認めた。母親と父親の関係についても。
しかし、ハリーがスネイプの記憶を見たことによって閉心術の授業がなくなった、という話を聞いて2人の顔色が変わった。2人ともやめるべきではない、と忠告した。そのとき、何か物音がした。クリーチャーではないようだ。ハリーの方か?
急いで戻ると、ホールではフレッドとジョージがアンブリッジとフィルチに追い詰められていた。それをみんなが取り囲んでいた。
「そう・・・あなたたちは面白半分で学校の廊下を沼地に変えたというわけですね?」
「全く、面白いよなあ」
「あなた方2人は、私の学校でこんな犯罪をしたらどうなるか、ということを学んでいただきます」
「その必要はないよな」
「ジョージ、俺たちは十分な教育を受けたよな」
「自分達でやっていける気がするよ」
「現実世界で俺たちの才能を試す時だよな」
「全くその通り」
アンブリッジが何か言う前に二人は声をそろえていった。「アッシオ!箒!」
彼らの箒は、重たい鎖をつけたまま飛んできた。
「ダイアゴン横丁23番地、ウィーズリーの魔法のしかけ屋に来てくれよな」
「こいつをやっつけたやつには特別サービスするぜ!」
そして2人は箒にまたがり、ホグワーツを去った。

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第30章 Grawp

フレッドとジョージの劇的な旅立ちにより、トラブルメーカーの後を引き継ごうと、いろんないたずらがあちこちで仕掛けられ、フィルチはてんてこまいだった。2人が廊下に作った沼はマクゴナガル先生やフリットウィック先生なら消すことはできただろうが、彼らは放っておき、アンブリッジに任せておいた。ハリーの箒は地下室に移され、トロールが番をしている、という噂だった。
5月のある日の授業中、ロンとハーマイオニーは話をしていた。
「母さんがまたハウラーを送ってきても驚かないよ。フレッドとジョージが出て行ったのは僕のせいにされるんだ。きっと母さんは、2人を止めるべきだったって言うよ。箒の端っこでもつかむとかなにか・・・そうさ、全部ぼくのせいなんだ」
「そうはいっても、あなたには何もできなかったわよ。あの2人、ダイアゴン横丁に店を出したってことは、ずいぶん前から計画してたってことよね・・・?」
「そうさ、でも、どうやって・・?ダイアゴン横丁の場所を借りるのにはすっごいたくさんのガレオン金貨が必要じゃないか。母さんだって、きっとそのお金の出所を知りたがるよ」
「マンダンガスが盗んだ品物とかなんかおそろしい物を売るように説得してるんじゃないかなあ・・?」
「そんなことしてないよ」ハリーが言った。二人が変に疑われる前に、事実をはっきりさせる潮時だ。ハリーは2人に事実を話した。それを聞いて、ロンは「よかった!全部君のせいじゃないか!母さんは僕を非難できないよね」と安心した。
授業が済んでしばらく後、ハーマイオニーが口を開いた。
「実のところ、私がハリーに言いたいのは、いつスネイプのところに戻って、閉心術を再開するのかってことよ。まだあの変な夢を見るのがおさまってないでしょう?」
ハリーは嘘をついて、その場をしのいだ。そしてその夜、またミステリー局の夢を見た。丸い部屋に入り、次に気がついたときは、埃だらけのガラスの球が並ぶ棚のところにいた・・・
「心を閉じようと努力しているわけ?」ハーマイオニーが言った。
「もちろんさ」

クィディッチのシーズンの最終試合が、5月の終わりに組まれていた。ロンはここに来て楽観的になっていた。「これ以上悪くなんてなりようがないだろう?もう失うものなんてないのさ」
グリフィンドール対レイブンクローだった。チョウがプレイしている。観客席で、スリザリン生が「ウィーズリーは僕らの王様」と歌っている。
その途中で、誰かが小さな声でハリーとハーマイオニーを呼んだ。ハグリッドだった。みんなが試合に夢中になっている間に、来て欲しいところがあるという。2人は抜け出した。
3人は禁じられた森の奥深くへと入っていった。
そこで、二人が見たものは・・・

3人が戻ってきた時、観客が競技場から出てきているところだった。「ウィーズリーは僕らの王様」の歌はまだ聞こえてきていた。「あの馬鹿な歌をやめてくれないかしらね」
「ウィーズリーは何でも守った  彼は一つのリングだって離しゃしなかった  だからグリフィンドールが歌うのさ  ウィーズリーは僕らの王様」
その歌はスリザリンの歌ではなかった。ロンが銀のクィディッチカップを振っている。
「やったよ!勝ったんだ!」
「僕らのニュースは明日までおいとこうか」
「そうね、急ぐことじゃないもの」

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