シルクロード写真館 (黄河溯行・炳霊寺への船旅編)
 かつてシルクロードを旅する人々が黄河を渡った地点は、中国甘粛省の省都蘭州付近であったと言われています。仏教もここを通って中国国内に入ってきました。それを裏付けるのが炳霊寺石窟です。炳霊寺へ行くには、現在では船で黄河を溯らなければなりません。それも9月以降の増水期でなければ難しいとされています。私は、甘粛省臨夏回族自治州の州都臨夏から黄土高原を越え、劉家峡の河畔に出てから渇水期ながら幸運にも炳霊寺石窟を訪れることができました。
 奇峰・奇岩のそそり立つ幻想的世界に包まれた黄河溯行・炳霊寺への船旅を,1997年6月に撮影した写真で紹介します。

大黄土高原

 黄土高原は青海省から山西省にかけて、黄河の流れとともに広がっています。黄河の濁流はこの黄土によるものです。臨夏から黄河の河畔にかけての一帯にもこの大黄土高原のパノラマが展開しています。高原の斜面では主に小麦が栽培されています。この段々畑を中国では梯田と呼んでいます。天気は晴天ですが、黄土の砂塵で遠くは霞んでいます。この砂塵は日本では黄砂現象として有名です。

回族の農家

 黄河流域には回族、チベット族など5つの少数民族が生活しています。ここは海抜2000mに暮らす回族の農家です。土塀を入ると広い中庭と土でつくられた住まいがありました。私たちは女性のトイレを借りるために立ち寄ったのですが、親子3代が暮らす一家の人たちは、突然の訪問にもかかわらずとても親切でした。ちなみにトイレは穴があって、そばにシャベルと土が置かれ、終わったらそれで土を被せるのだそうです。

劉家峡ダム

 臨夏から北に90H,バスは時速30Hのスピードで、約3時間かけて土ぼこりの道を走ると、ようやく黄河につくられた劉家峡ダムの水面が見えてきました。1974年に完成した当時としては中国最大の水力発電用ダムです。ダムができたため、上流にある炳霊寺へ陸路で行くことはできなくなってしまいました。そのためこの一帯は、ダムの貯水により周囲の景観も一変し、黄河の名に似合わず、澄んだ青い水を湛えています。

黄河の渡し

 黄河の河畔から炳霊寺に行くにはフェリーで対岸に渡らなければなりません。対岸までの河幅は約100mで、そこを側面に車や物資、人や家畜を載せるための独特の甲板をもった発動船がピストン輸送をしています。特に船着場としての桟橋などはなく、船は河岸の砂場にそのまま突っ込んで止まります。なぜ船がこうした構造をしているのかの謎が解けました。

炳霊寺石窟行き観光船

 黄河を溯上し、炳霊寺石窟へ行くためには中型快速艇の観光船を利用することになります。近年黄河の水量が減少しているため大型の観光船の運行は中止されているそうです。ここから炳霊寺石窟までは約40Hの道のりです。デッキの上では太陽の光をいっぱいに浴び、足下に澄んだ青い水面を眺め、河の左右に黄肌色の雄大な大地を望む、まさに時空を忘れる贅沢な2時間半の船旅です。
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