シルクロード写真館 (天山山脈縦断の旅編)
 シルクロードには、天山山脈の北側を行く天山北路と南側を走る天山南路とがあります。前者はステップルート即ち草原の道、後者はオアシスルート即ち沙漠の道と一般的に呼ばれています。この2つの道のあいだを東西約2000キロにわたって横たわる天山山脈は、シルクロードのシンボル的存在です。海抜5000メートルを超える主峰は、北と南で中央アジアの自然風土や人々の生活形態を分けています。この遊牧生活圏とオアシス生活圏を結ぶ南北の道が2004年に開放されました。
 ここでは、2006年5月から6月にかけて撮影した写真から、カザフスタンのアルマティからキルギスを経て中国のカシュガルに至る天山山脈縦断の旅で遭遇した素晴らしい自然や人々の暮らしぶりなどを紹介します。

ゼンコフ大聖堂
(カザフスタン・アルマティ)


 緑豊かなパンフィロフ戦士公園のなかにロシア正教教会の屋根が見えます。1904年に建てられた釘を1本も使っていない木造建築です。遠くに天山山脈の支脈の一つクンゲイ・アラ・トー山脈の白雪を頂いた山並みが望まれます。山脈の尾根は国境をなし、山の向こう側はキルギスで、麓には湖のイシク・クルがあるはずです。

日本人墓地
(カザフスタン、アルマティ)


 市街地の西のはずれに、戦後中央アジアで強制労働に従事させられた日本人捕虜の眠る墓地があります。墓地の一帯はびっしりと雑草が生い茂り、その光景が一層胸を衝かれます。一つの墓石の下には6名ずつが眠っているとのことです。墓碑に線香と水を手向け、メンバーの一人は墓石に日本酒を注いで回っていました。

乗馬姿のカザフ族
(カザフスタン、アルマティの
      北西約150キロの草原)


 カザフスタンの草原で出会った馬の背に跨がったカザフ族です。さすが遊牧騎馬民族の血をひくだけあって乗馬姿は精悍そのものです。牛を放牧させているところで、お供に犬を一匹連れています。遠く点のように見える牛の群れの向こうは、果てしなく広がる大草原です。

コルダイ峠のケシ畑
(カザフスタン、キルギス国境近く)


 カザフスタンのアルマティからキルギスの首都ビシュケクに向かう途中にクンゲイ・アラ・トー山脈の峠越えがあります。緩やかな登り坂を上りきったコルダイ峠の南側には大平原が広がっていました。そして、その一角に赤いケシの花が咲き乱れていました。草原の緑は5月が一番美しい季節だそうです。

チュー川
(キルギス、バルイクチ近郊)


 天山山脈を源とするチュー川はキルギスとカザフスタンの国境を北西に向かって流れ、やがてベトバクダラ草原の砂の中に消えてゆきます。写真では川の正面にイシク・クルの湖があるはずです。ところが、このチュー川の本流は湖岸近くの丘陵に阻まれて湖に流れることができず、湖の直前で大きく急カーブを描いて湖から遠ざかっていきます。
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