シルクロード写真館 (天山山脈縦断の旅編)

宿泊用ユルタ(キルギス・ナリン)

 海抜2150メートルに位置する国境近くの町ナリンではユルタに宿泊しました。ユルタとはモンゴルではパオと呼ばれる居住用テントのことです。ここまで来ると、今までの草原から山岳の景観に変わります。静けさが周囲を包みこみ、赤茶けた山肌が夕日に照らされて幻想的世界にいるようです。夜は満天の星空、明日はいよいよ天山の主脈越えです。

遊牧生活のキルギス族一家
(キルギス・ナリン〜トゥルガルト峠)
      
 土ぼこりの舞うデコボコの山道を上っていくと、放牧された馬の群れが見えました。そのそばのユルタには夫婦、男の子、女の子の4人家族が生活していました。ここには5日前にやって来たそうです。ユルタのなかを見せてもらったお礼に、メンバーの一人がポラロイドカメラで撮影した写真を家族にプレゼントしました。女の子の表情がなんとも可愛かった。

キルギス・中国国境
(中国側・トゥルガルト峠付近)


 天山山脈越えのハイライトであるトゥルガルト峠は海抜3752メートル、富士山とほぼ同じ高さにあります。目に見える国境線は峠から200メートル先にあり、鉄条網が張られていました。私たちは中国側、キルギス人ガイドと運転手はキルギス側で一緒にお別れの写真撮影です。しかし、この反対側の国境石碑での撮影は中国の警備兵にダメだと言われました。

ラクダで移動中の遊牧民
(中国新疆・トゥルガルト峠〜カシュガル)


 天山山脈の南斜面、アトゥシュ渓谷の広い河床沿いを駈け下っていったとき、2頭のラクダに乗って移動中の遊牧民の姿が見えたので車を停めました。夫婦と男の赤ちゃんの一家で、ラクダの背には家財道具が積まれ、赤ちゃんも揺りかごのなかに寝せられていました。お別れして立ち去る姿が、周囲の景色のなかに溶け込んでいくようでした。

天山山脈
(中国新疆・カシュガル郊外)


 天山南路の西端の都市カシュガル側から見た天山山脈です。西からのパミール高原と南からのカラコルム山脈に接する東西約2000キロに連なる天山山脈の西端からは、白雪も峻険な高い峰も見られませんでしたが、その奥に展開する厳しい自然と、そこで暮らす人々の姿は今も脳裏に焼き付いています。ステップから山岳を経て沙漠に至る天山山脈縦断の旅でした。
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